交響曲第1番 (チャイコフスキー)
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交響曲第1番ト短調『冬の日の幻想』は、チャイコフスキーが発表した最初の交響曲で、1866年3月から6月にかけて作曲された。作品番号13。
チャイコフスキーの交響曲は、番号付きのものが6曲、交響曲『マンフレッド』を含めると7曲あるが、演奏機会が多いのは第4番以降のものである。第1番は、初期の3曲のなかでは、親しみやすい曲想と魅力的な旋律で比較的よく知られる。標題の「冬の日の幻想」は、『マンフレッド』を除いて、作曲者自身が交響曲に標題を付けた唯一の例である。このほか、第1楽章と第2楽章にもそれぞれ標題が付されている。演奏時間約43分。
目次 |
[編集] 作曲の経緯
1866年1月にチャイコフスキーはサンクトペテルブルグからモスクワに出る。恩師アントン・ルービンシュタインの弟ニコライ・ルービンシュタインが設立したモスクワ音楽院の講師として招かれたのである。音楽院では和声と楽器法を教えることになっていたが、9月の開校までの間、貧しかったチャイコフスキーはニコライ邸の食客として過ごし、ニコライに勧められて交響曲を作曲した。執筆は3月から6月ごろである(第1稿)。
交響曲が仕上がると、チャイコフスキーはサンクトペテルブルグのアントン・ルービンシュタインやニコライ・ザレンパに楽譜を見せて意見を乞うた。二人はこれを酷評し、チャイコフスキーは彼らの意見を取り入れて楽譜に手を加えて再び見せたが、二人の反応は依然として厳しいものだった(第2稿)。チャイコフスキー26歳のときである。
チャイコフスキーは1874年にこの曲を改訂しており(第3稿)、今日ではこの稿が演奏される。
[編集] 初演
1866年12月モスクワで第2楽章、1867年2月にサンクトペテルブルグで第3楽章が、それぞれ演奏会で取り上げられたが、アントン・ルービンシュタインに認められなかったことが影響していずれも部分的なものであった。全曲の初演は作曲から2年後の1868年2月15日、ニコライ・ルービンシュタインの指揮による。初演は大成功し、チャイコフスキーは弟のアナトーリに「私の交響曲はすごい評判だった。とくにアダージョが喜ばれた。」と書き送っている。曲はニコライ・ルービンシュタインに献呈された。
改訂された第3稿による初演は1883年12月1日、モスクワにおいて行われている。
[編集] 楽器編成
ピッコロ 1、フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ、シンバル、弦五部。
[編集] 楽曲構成
[編集] 第1楽章
アレグロ・トランクィロ ト短調 2/4拍子 ソナタ形式。「冬の旅の幻想」と標題が付けられている。
ヴァイオリンの弱いトレモロに乗ってフルートとファゴットが民謡風な第1主題を出す。木管に律動的な動機が現れ、これが低弦に移って進んでいく。第2主題はクラリネットで明るく出るが、やはり民謡風である。展開部では主として第1主題を扱う。再現部では、第1主題はヴァイオリンとヴィオラ、第2主題はフルートで奏される。
[編集] 第2楽章
アダージョ・カンタービレ・マ・ノン・トロッポ 変ホ長調 4/4拍子 序奏-A-B-A-B-A-コーダというロンド形式。「陰気な土地、霧の土地」と標題が付けられている。1866年にチャイコフスキーが訪れたラドカ湖の印象ともいわれる。
序奏は弱音器を付けたヴァイオリンの柔らかく物語るような旋律。主要主題Aは、旋律の後半はハ短調に傾き、哀調を帯びたもの。はじめにオーボエ、二回目にチェロ、三回目はホルンでそれぞれ歌われる。BはAの素材を用いた軽いエピソード的なもの。最後にヴァイオリンの序奏の旋律が還ってきて締めくくる。
[編集] 第3楽章
スケルツォ アレグロ・スケルツァンド・ジョコーソ ハ短調 3/8拍子。三部形式。
木管の短い前奏につづいて、4部に分割されたヴァイオリンが軽快な主要主題を出す。この主題は1865年にチャイコフスキーが作曲したピアノソナタ(作品80)の素材を用いている。主部は弱音主体で夢幻的な雰囲気をもつ。中間部では、ヴァイオリンとチェロがワルツ風に歌い、木管とホルンがこれに絡む。主部が再現すると、主題は今度は木管で奏される。コーダでは、中間部のワルツがハ短調で現れ、チェロとヴィオラが独奏でカデンツァ風に奏して歯切れよく終わる。
[編集] 第4楽章
アンダンテ・ルグーブレ ト短調 4/4拍子 - アレグロ・マエストーソ ト長調 2/2拍子。序奏付きのソナタ形式。
序奏では、ファゴットが暗い動機を断片的に出し、これをヴァイオリンが受け取って、哀愁を湛えた旋律を歌う。これは、南ロシア・カザン地方の民謡「咲け、小さな花」に基づいており、この楽章で大きな役割を果たす。この動機を繰り返しながらト長調に転じて速度を上げていく。主部にはいると、第1主題が金管を伴って快活で華やかに出される。第2主題は序奏主題を行進曲調にしたもので、ヴィオラとファゴットによる。展開部ではまず序奏主題が現れ、次に第1主題の動機を対位法的に扱う。再現部では、第2主題のときに速度が落ち、序奏の再現となる。ここから次第に高揚していき、序奏主題が全管弦楽で高らかに奏される。コーダでは長大で、圧倒的な頂点を形作る。
カテゴリ: 交響曲 | チャイコフスキーの楽曲