ファルコン1
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ファルコン1 (Falcon 1) はアメリカ合衆国の企業Space Xにより設計、製造される商業用打ち上げロケット。二段階からなる機体の一部は再利用可能なシステムで構成されている。一段目と二段目は共に液体酸素およびロケット用ケロシンRP-1を推進剤として使用する。一段目はマーリン・ロケットエンジン、二段目はケストレル・ロケットエンジンを使用する。
世界初の民間出資・開発による液体ロケットであるファルコン1の打ち上げ費用は670万ドルと低コストであり、専門家からは商用ロケット市場に革命を起こすものと指摘されている。
目次 |
[編集] 設計
ファルコン1は低軌道への重量あたり打ち上げ比を最小とするよう設計された。ファルコン1の大型化版計画であるファルコン5部品を共通化させることで設計コストを抑制している。第一弾ロケットはパラシュートの展開により海上に着水させ回収、再利用する。
[編集] 第一段
第一段ロケットエンジンにはアルミニウム合金の摩擦攪拌接合により製造した部品が用いられている。液体酸素とRP-1のタンク間の隔壁などに利用される。アーヴィン・パラシュート社により設計されたパラシュートは高速落下用と主パラシュートの二段階からなる。
当初の打ち上げではロケットの再利用は行われない予定である。上に示した打ち上げ価格はロケットの再利用を考慮に入れておらず、将来は価格が下がるものと見られる。
[編集] 第二段
第二弾ロケットエンジンは低温耐性を有するアルミニウム・リチウム合金を材料とする。
[編集] 射場予定地
ファルコン1の打ち上げは人工衛星の搭載の便を考慮して5つの打ち上げ予定地が用意されている。
- バンデンバーグ空軍基地
- ケープ・カナベラル空軍基地
- クェゼリン マーシャル諸島
- コディアック諸島
- ワロップス飛行施設 バージニア州
[編集] 第一回打ち上げの失敗
第一回目の打ち上げはエンジンに不備が見つかるなどの原因により数度にわたって延期された。それに加えバンデンバーグ空軍からはタイタン4ロケットの打ち上げ延期の為打ち上げ基地を他に変更するように要請され、結局は2005年11月26日にクェゼリン環礁より打ち上げられることが決定した。ペイロードには国防総省国防高等研究事業局との連携により、米空軍士官学校が設計・製造したプラズマ観測衛星であるFalconSAT-2が搭載された。
打ち上げ予定日は再延期され12月末に決行するとされていたが、12月19日に第一段エンジンのバルブに不具合が発見され、ロケットエンジン全体が新規のものと交換された。その後現地時間2006年3月25日09:30 (2006年3月24日22:30 UTC) に打ち上げられた。ロケットは打ち上げの26秒後に制御不能となり、41秒後海面に衝突した。
機体は射場から250フィートはなれた珊瑚礁に衝突し、FalconSATは落下中にロケットから分離され、島の機械設備の建物屋上に落下した。衛星の損傷は明らかになっていない。同日中にSpace X社のウェブサイトで失敗の原因が燃料漏れであると発表された。その後の調査の結果、燃料漏れの原因は燃料パイプのアルミ製のナットが打ち上げ時に何らかの要因で破損したことが原因であったと発表された[1]。
[編集] 今後の予定
第二回目の打ち上げはバンデンバーグ空軍基地より行われる予定である。海軍研究所のTacsatおよびスペース・サービシス社の宇宙葬ペイロードが搭載される。宇宙葬ユニットにはジェームズ・ドゥーアン、ゴードン・クーパーなどの遺骨が含まれている。
[編集] 打ち上げ記録
日時 | 回数 | 搭載衛星 | 結果 |
---|---|---|---|
2006年3月24日 22:30 UTC (現地時間3月25日 09:30) |
1 | Falconsat | 打ち上げ25秒後に失敗 ロケット本体損失 ; 搭載衛星は回収された |
[編集] 参考
- Someone's looking out for that satellite... Blog Kwajalein Atoll and Rockets
- SpaceX rocket fails first flight BBC NEWS 24 March, 2006
- Damage puts first SpaceX rocket launch on hold Spaceflight Now, 19 December, 2005