シリコングラフィックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シリコングラフィックス(Silicon Graphics, Inc.、略称:SGI)は、コンピュータの製造販売を行うアメリカの企業である。社名にもあるとおりグラフィクス、特に3次元画像処理を行うシステムを得意とする。OpenGLも元はSGIの自社用グラフィクスライブラリであった。本拠地はカリフォルニア州マウンテンビュー。
目次 |
[編集] 歴史
- 1982年:グラフィックス端末製造企業としてジム・クラークらによって設立された。
- 1983年:最初の製品IRIS 1000シリーズは、ジム・クラーク自ら開発したジオメトリパイプラインを使った3次元コンピュータグラフィックスを高速描画できる端末であり、DECのVAXコンピュータに接続して使用することを念頭に設計されている。
- 1985年:最初のグラフィックスワークステーションIRIS 2000シリーズを発売。MC68010/MC68020をCPUとして搭載し、オペレーティングシステムとしてSystem V系のUNIXであるIRIXを使用。
- 1986年:IRIS 3000シリーズを発売。また、NASDAQに上場を果たす。
- 1987年:IRIS-4Dシリーズを発売。MIPSRISCマイクロプロセッサを使用したワークステーションであり、今後MIPSを使い続けることとなる。
- 1989年:業界初のマルチプロセッサワークステーションであるIRIS POWERシリーズを発売。
- 1990年:ニューヨーク証券取引所に上場。
- 1991年:Indigoシリーズを発売。また、独自のグラフィックスライブラリIRIS GLのライセンス販売を発表。後のOpenGLとなる。
- 1992年:初の64ビットワークステーションCrimsonを発売。R4000をいち早く使用したマシンである。また、資金難に陥ったMIPS社を子会社化し、ミップス・テクノロジーズ社を設立。
- 1993年:スーパーコンピュータ市場への足がかりとなる Onyxシリーズ、POWER CHALLENGEシリーズを発売。また、ワークステーション Indigo2やIndyも発売された。このころから高性能パーソナルコンピュータとワークステーションが価格的にも機能的にも競合するようになったが、SGIのマシンは3次元グラフィックスの高性能さで生き残っていく。また、技術者が退社してパソコン用3Dグラフィックス関連のベンチャーを開始するようになるのもこのころである。
- 1996年:クレイ・リサーチ社を合併。
- このころ、"sgi" と小文字のロゴを採用し、基本的に "sgi" と名乗るようになる。社名(Silicon Graphics, Inc.)は変わっていないが、グラフィックス専門企業というイメージを払拭するためのコーポレートアイデンティティ活動である。
- 2000年:クレイのベクトル計算機部門をテラ・コンピュータ社に売却。テラ・コンピュータ社はクレイ社に社名変更した。また、ミップス・テクノロジーズ社をスピンオフさせている。
- 2006年:5月8日、連邦倒産法第11章の適用を申請。実質的に経営破綻へ。
10月17日、同法に基づく保護下から脱する。事業計画面では、かつての主流であったMIPSプロセッサとUNIX系OSのIRIXの組み合わせで動作するワークステーションの製造を中止、代替としてインテルのXeonやItaniumといったプロセッサとLinuxの組み合わせで動作する機種の開発へとシフトする模様。
[編集] SGIの現状
SGIは、実績のある自社開発OSのIRIXを継続的に開発しながらも、Linuxの発展にも協力してきた。Sambaなどのプロジェクトを支援し、独自コード(XFSなど)をオープンソースとして提供している。
一時期、Microsoft Windowsを搭載したワークステーションを発売していたが、現在は従来からのIRIX/MIPSを搭載するマシンとLinux/インテル製プロセッサを搭載するマシンのふたつのラインを主に販売している。
SGIはクレイ社を買収した際に高速インターコネクト技術CrayLinkを獲得した。現在のSGIのサーバで使われているNUMAlinkはこれをベースにしている。これによって単なるコンピュータ・クラスターよりも高性能なNUMA型の超並列スーパーコンピュータを実現している。
2004年10月、SGIはNASAに納入したColumbiaシステムで世界最高性能を記録した。Altix 3000 をベースとして、10,240プロセッサで構成されており、42.7TFLOPSで地球シミュレータを抜いた。しかし、この記録は即座にIBMのBlue Geneに抜かれてしまった。
SGIには熱狂的な信者とも言うべきユーザーがいるものの、多くの顧客は次第にもっと低価格なシステムに流れて行きつつある。一時期 SGI が子会社化していたエイリアス・システムズの3DCGソフトMayaは、映画制作にも使われる高性能システムであるが、現在はWindowsでもMacでもLinuxでも動作する。
SGIの収入の多くは、ハリウッドの特殊効果スタジオからのものではなく、アメリカ政府、軍、エネルギー関連、科学技術計算分野などから得られている。
2006年5月Chapter 11を申請。再建の道を歩む事となる。なお製品の製造販売・サポートは継続する事を発表している。
[編集] 現在の製品
- IRIX/MIPSアーキテクチャベース製品
- Fuelシリーズ:R16000Aプロセッサ使用ワークステーション。
- Tezroシリーズ:R16000Aプロセッサ使用ワークステーション。デュアルプロセッサ構成まで。
- Origin 350 シリーズ:ミッドレンジサーバ。R16000×4プロセッサ。NUMA構成で32プロセッサまで。
- Origin 3000 シリーズ:ハイエンドサーバ。NUMA構成で最大512プロセッサまで。
- Onyx4 UltimateVision :スケーラブルビジュアライゼーションシステム。
- Linux/インテル製プロセッサベース製品