VLS

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発射機上面の垂直発射セルの蓋

タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦レイク・エリーから垂直発射されるスタンダードミサイル SM-3

VLS (Vertical Launching System) は、潜水艦を含む艦艇に使用されるミサイル発射システム。日本語では垂直発射システムなどと言われる。

[編集] 登場の経緯

VLSの基本的な考え方は、ミサイルをミサイル格納庫から直接飛ばしてしまおうというものである。VLSの登場以前においては、艦船からミサイルを発射する場合、ミサイル格納庫からミサイルを発射装置に装填し、敵の方向に発射装置の向きを変える必要がある。さらに、次のミサイルを発射しようとした場合、空になった発射装置にまたミサイルを装填するために、装填位置に発射装置を一度戻してから再装填を行わなければならないため、どうしてもミサイル発射に時間がかかってしまう。このタイムロスを解決するために開発されたのがVLSである。

[編集] 仕組み

水上艦用VLSの一般的な構造は以下の通り。

まず、ミサイルは細長い箱の中に格納した状態で、艦艇に埋め込まれた発射機のセルに、クレーンを使って垂直に装填される。
ミサイルを発射する際は、セルの上部の蓋が開き、そのままエンジンに点火して垂直に発射される。
発射されたミサイルは、自身や母艦の誘導に従い目標に向かって飛んでいく。

[編集] 利点・欠点

VLSの利点として、VLSは目標の方向に発射装置を向ける必要が無く、それぞれのセルの発射口が独立しているため、非常に短い間隔で発射が可能である。装填型の発射装置では、発射速度は最高でも4秒に1発程度であるが、VLSは1秒に1発程度の発射が可能である。ソビエトには船内のミサイルをドラムにセットしてドラムを回転して同じ発射口から発射する、いわばリボルバー式拳銃のようなタイプのVLSも存在する。

発射速度以外の利点としては、第一に重心の低下が挙げられよう。例えばアスロックの8連ランチャーはそれ自体重いものであったし、交換装填の予備弾は艦橋下層など上甲板の上に置かざるを得なかったので重心低下上不利であるばかりでなく、ARH 対艦ミサイルはRCSの大きい艦橋に当たる確率が高く、アスロックに誘爆して艦橋とCICに重大なダメージを与える心配があるなどの問題もあったのが、VLSで改善された。

また故障に強いことが挙げられる。装填型の発射装置の場合、装置の一部が故障してしまうとミサイルの発射が不可能となってしまうが、VLSはどれか一つのセルが故障したとしても、発射不可能となるミサイルはそのセルの物だけで、他のセルのミサイルは問題なく使用できる。

なお、本来の機能とは関係ないものの、副次的な利点としてVLSは通常の発射装置に比べ、ステルス性にも若干優れるとされる。

欠点としては垂直に発射した直後はミサイルの速度が低速なため、姿勢制御が難しいことが挙げられる。

またMk41VLSはセルよりも射撃管制装置が高価で、セルの数を減らしても余り値段が下がらず、小型艦にとってはコスト負担が大きいと言う問題がある。

しかし、若干の欠点はあるものの、スピードが重要視される現代戦においてはVLSの発射速度などは非常に魅力的であり、各国海軍が近年建造している水上戦闘艦では、至近距離に向けて発射する近接防御システムのミサイルを除いては、ミサイルの装填にVLSを採用するケースが多い。

[編集] さまざまなVLS

[編集] アメリカ

Mk41 VLS: スタンダードミサイル、VLAと呼ばれる垂直発射型アスロック、トマホーク、ESSM（発展型シースパローミサイル）など、様々な用途のミサイルを発射する事が可能な汎用性に優れたVLS。8セルで1セットを構成する。
Mk48 VLS: シースパロー専用。ESSMも搭載可能。
ロサンゼルス級原子力潜水艦のトマホーク用VLS: 後期型から搭載。
Mk57 PVLS(Peripheral Vertical Launch System): 現在開発中の新型VLS。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦に搭載予定。

[編集] ヨーロッパ

SYLVER: A-43、A-50、A-70の三種あり、数字が大きくなるほど搭載可能なミサイルは長くなる。A-43、A-50はアスターSAM用、A-70は対地巡航ミサイルSCALP EG用。
シーウルフ: 短射程艦載対空ミサイル、シーウルフは初期型はボックスランチャーで運用されたが、後期型は専用のVLSが開発された。イギリスが開発。

[編集] ソ連/ロシア

S-300F Fort (SA-N-6 Grumble): 艦隊防空ミサイルシステム。8発1セットでリボルバー状に装填されたVLSから、1発ずつガスでコールドローンチする。
3K95 Kinzhal (SA-N-9 Gauntlet): 個艦防空ミサイルシステム。発射方式はS-300Fと同様。
P-700 Granit (SA-N-19 Shipwreck): 重長距離対艦ミサイル。