Sガンダム
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Sガンダム(スペリオルガンダム、Superior GUNDAM)は、雑誌企画『ガンダム・センチネル』に登場する架空の兵器。地球連邦軍の試作型可変モビルスーツである。型式番号: MSA-0011。
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[編集] スペリオルガンダム
[編集] 機体解説
Sガンダム | |
型式番号 | MSA-0011 |
所属 | 地球連邦軍 |
建造 | アナハイム・エレクトロニクス社 |
生産形態 | 試作機 |
全高 | 25.18m |
頭頂高 | 21.73m |
本体重量 | 38.4t |
全備重量 | 73.0t |
ジェネレーター出力 | 7,180kW |
スラスター推力 | 24,700kg×4 11,200kg×4 |
センサー有効半径 | 18,800m |
装甲材質 | ガンダリウムγコンポジット |
主な搭乗者 | リョウ・ルーツ |
固定武装 | 60mmバルカン砲×4 インコム 背部ビームカノン×2 大腿部ビームカノン×2 ビームサーベル×2 |
オプション | ビームスマートガン |
Gアタッカー | |
全長 | 21.16m |
翼巾 | 21.16m |
全備重量 | 36.54t |
スラスター推力 | 11,200kg×4 |
推力重量比 | 1.23 |
固定武装 | ビームカノン×2 |
Gボマー | |
全長 | 25.49m(標準装備時) 32.98t(スマートガン装着時) |
翼巾 | 18.43m |
全備重量 | 24.36t |
スラスター推力 | 24,700kg×2 |
推力重量比 | 2.03 |
固定武装 | 大腿部ビームカノン×2 |
Gコア | |
全長 | 7.92m |
翼巾 | 7.63m |
全備重量 | 12.1t |
スラスター推力 | 4,128kg×4 |
推力重量比 | 1.36 |
固定武装 | ミサイル・ランチャー×4 |
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型式番号MSA-0011 Sガンダムはアナハイム・エレクトロニクス社内においてMSZ-010ΖΖガンダムと同時期に開発された、「Ζ計画」によるガンダム・タイプのモビルスーツの一機。コードネームは「ι(イオタ)ガンダム」。コア・ブロックの採用、及び機体を3分割しそれぞれの独立運用を可能とするシステムなど、ΖΖガンダムと機体構成の面で共通する点がある。しかし、ΖΖガンダムはあくまで一年戦争時のGアーマーに準じた構造を採用し、単機の戦闘システムとして完結していたが、本機はコア・ブロック(Gコア)及びMS本体を中核とした、更に拡張可能な兵器体系として設計されている。A、Bパーツにはそれぞれ専用のコクピットが設けられ、分離稼動時に制御ユニットとしてのコア・ブロックを必要としない。また、ΖΖガンダムで問題となっていた分離形態時における出力差も、A、Bパーツそれぞれにジェネレータを2基搭載するなどの措置により縮小されている。
ΖΖガンダムは、当初から一つの機体に全ての機能を盛り込む事で、あらゆる用途に対応しようとした汎用多目的MSであった。しかしそれとは対照的に、本機は追加パーツ方式を採用し、換装によって機能を特化させる汎用多用途MSとして設計されている。(これは、RX-78ガンダムに対するRX-78GP01ガンダム試作1号機の機体コンセプトとの相違に共通する。)設計段階より強化バックパックや増加ブースター、その他多様なオプションが用意されており、増加パーツとのマッチングも実にクリアーなものとなっている。ΖΖガンダムではその変形に際し、コア・ブロックに大きな負担が掛かる点と、コクピットが露出する点が問題となっていた。しかしSガンダムでは追加パーツを採用することで、これらの問題を全て解決した巡航形態Gクルーザー・モードを実現している。反面、本機は基本的に母艦内で換装を行わなければ巡航形態を得る事が出来ず、「同一機体で複数のミッションに迅速に対応する」という、可変MS最大のアドバンテージは幾分薄れている。
GコアのみならずA、B各パーツにコクピットを設けて独立運用させると共に、MSモード時は操縦・火器管制・索敵を各パイロットに分担させる事で複雑な機体システムの制御を可能としている(Gコアパイロットのみでの操縦も可能であるが、機体の性能を100%引き出すのは難しく、後述のALICEが搭載される事になった)。MSモード時は全コクピットがGコアに結合され、緊急時はそのまま離脱して飛行や大気圏再突入が可能となっており、パイロットの生存性を高めている。
アナハイムでは4機のSガンダムと一部計画を除いたオプションが数セット分製作され、100番台はノーマル・プラン、200番台はExs関連、300番台がBst、400番台は100~300番台のいずれにも属さない、その他の試験を中心に進められていた。また、1号機はトリコロール塗装が施されα任務部隊に、2号機は青いスプリッター迷彩が施され主に200番台計画の評価試験に、3号機の赤いスプリッター迷彩の機体は300番台の試験に、4号機については資料が乏しいが戦闘機によく見られる「制空迷彩」が施され、おそらく予備機として運用されていたと思われる。
機体のユニット化は芸術的なまでに進化したものの、複雑化する一方の機体システムは著しい運用性の低下を招いており、これに関してはΖΖガンダムの欠点をさらに悪化させているという側面もある。その為これ以後のアナハイム・ガンダムは、それまでの流れと逆行するシンプルで信頼性の高い機体コンセプトへとシフトしていく事になる。
なお現実の世界では、当初Sガンダムの変形キットの具現化は困難ないし不可能とされ、2002年発売のマスターグレード版をしてようやく完全変形を実現する事が出来た。Sガンダムは設定上、通常のMSの2倍以上のフレーム数を持つとされているが、キットにおいても、そのパーツ数は通常のマスターグレードの倍以上、パーフェクトグレードに近いものを持っている。Ex-Sガンダムのパッケージ自体も、パーフェクトグレードサイズである。Sガンダムの変形機構の複雑さが伺える一面である。
[編集] 武装
- 頭部インコム(出力3.8MW)
- 有線式の擬似サイコミュ兵器。パイロットの脳波サンプリングにより、特定コマンドのリアルタイム入力が可能である。これにより一般人(オールドタイプ)でもオールレンジ攻撃に近い戦法を実現した。反面、本物のサイコミュ兵器のような複雑な制御は出来ず、コンピュータによる補佐を受けても、2次元的な挙動が限界である。また搭載ビーム砲の出力も低く、敵機に致命的なダメージを与えるには至らない。しかし、敵の意表を突ける点で効果が高い。
- 背部ビームカノン(出力12MW)×2
- エネルギーCAP式の大口径ビーム砲。バックパックにムーバブル・フレームによって接続され、自由に操作が可能である。比較的コスト・パフォーマンスが高く、同武装がFAZZにも搭載されている。
- 大腿部ビームカノン(出力14MW)×2
- Ζプラスに装備されるものの改良型であり、通常のライフルに比べ有効射程・命中精度の点で向上している。
- ビームスマートガン(出力56MW)
- Sガンダムのオプション兵装。大腿部ビームカノンの代わりに右側にスマートガン本体、左側にエネルギー供給ユニットをマウントし、これらを機体の前方で結合し、射撃姿勢を取る。メガ・バズーカ・ランチャー程の威力は無いが、取り回しは容易となっている。
- リフレクターインコム
- Ex-S形態時のオプション兵装。膝部ニークラッシャーに内蔵されている。有線式のポッドでIフィールドを形成する機能を持つ。自機から射出されたビームをこのIフィールドに反射させてビームの方向を変える。火器管制装置によって操作され、ビーム偏向の瞬間のみIフィールドが形成される。直接の攻撃兵器ではないが、多彩なビーム攻撃が可能となるため非常に有用な兵器である。サイコガンダムMk-IIにも同様の兵器(リフレクター・ビット)が搭載されている。
- ALICE
- Sガンダムの機体管制システムに組み込まれた発展型論理・非論理認識装置。所謂AI。戦闘の状況を判断し、一定レベルの人格を備えていたとされる。MSの無人化のためのテストヘッドとして開発されたものの、軍人の職権保護を理由に様々な妨害工作を受け研究は凍結された。
[編集] 人工知能「ALICE」
本機に於いて特筆すべき点は、試験的に人工知能「ALICE(アリス)」が搭載されていることである。人間のどんな要求にも応えられる「女性」を目指して教育訓練中であった。そのため性格に問題のある不条理な男達が集められ、その一人がリョウであった。奇しくも「ALICE」の開発にはパイロットであるリョウの母親が関与していたが、妨害工作に遭い「ALICE」を庇って殉職している。このALICEと言う人工知能はアウターガンダムに登場するゼファーガンダムに搭載されたゼファーファントムシステムとの関連が主張されている。アナハイムが連邦軍から不正にデータを手に入れたとしてもおかしくない。
「ALICE」とは、「Advanced Logistic&In-consequence Cognizing Equipment」の頭文字をとって名づけられた。
[編集] 分離・合体
標準形態でコアファイター「Gコア」・上半身部(Aパーツ)「Gアタッカー」・下半身部(Bパーツ)&ビームスマートガン「Gボマー」に分離可能。各パーツに搭乗するパイロットを操縦手・砲撃手・索敵手に役割分担することも可能。
作中ではペズン攻略戦と大気圏際での最終決戦に際し登場。最終決戦の際には数合わせの為に分離した状態で出撃するも戦闘中に合体し、トッシュ・クレイとファスト・サイドが乗り込んだMAゾディ・アックとジョッシュ・オフショーが操縦するMSゼク・ツヴァイ(連載版ではクレイとオフショーの乗るゼク・ツヴァイ2機)と交戦する。
本来、戦闘中の合体は機体の運用上は想定外の行動であり(戦闘中の分離は戦闘域からの高速離脱の手段として有りえるが)、シーケンス実行中は全くの無防備となる。この合体も、友軍のΖプラスの犠牲の下に成功した物だった。
[編集] 劇中での活躍
パイロットは主人公リョウ・ルーツ。α任務部隊の主力として活躍した。封印したはずの「ALICE」が時折発動し、パイロットの操作を受け付けず勝手に敵を撃破することもあった。最終的に、大気圏内でピンチに陥ったリョウたちを救うべく「ALICE」が覚醒し、自分の意志で彼らを脱出させ、自身は機体ごと燃え尽きている。
[編集] バリエーション
[編集] Ex-S(イクスェス)ガンダム
形式番号MSA-0011[Ext] :強化装備形態。ただし他のMSに見られるフルアーマー形態とは一線を画し、強化装備は「Gクルーザー」と呼ばれる巡航形態での運用をするためのオプションとしての一面も持つ。
バックパックを大推力のブースターユニットに、ニークラッシャーもリフレクターインコムを内蔵したタイプに換装。Gクルーザー時に下部矢面に露出するコクピットブロックの保護およびGクルーザー時の強度確保のためフレームとしての一端を担うためのパーツ(コクピット周辺のみに展開するIフィールドジェネレーターを搭載)を胸部に装備し、推力増強のため脛部の追加スラスターと肩部のプロペラントタンクを装備する。これらの装備がないとGクルーザーには変形できない。極端に言えば、GクルーザーのMS形態が結果としてEx-Sとなる。
他に大型リアスカート(主翼に相当する部分を標準のものより大型化したもの)への換装オプションも存在するという文献もある。
作中ではエアーズ市攻略戦で登場。ニューディサイズ首領だったブレイブ・コッドの駆るMSガンダムMk-Vと交戦し、辛くもこれを撃破する。
地上主任務の際の軽量型バックパック装備型も存在する。
余談ではあるが、上記の通りExtパーツはGクルーザー形態での運用を前提としたオプションパーツであるという設定を生かす形で、カトキハジメ自身の手で「Gクルーザーありきのデザイン」として、モデルグラフィックスでセンチネル連載と連動して連載されていた「デザイナーズグラフィックス」で(正確にはモデルグラフィックス別冊「ガンダム・センチネル」でのデザイナーズグラフィックス新作として)『リファイン版Ex-Sガンダム』が発表されている。元デザインから大型化された肩や、本来はMS形態時は排除される肩部プロペラントタンクを装備したままにしてあると同時に、機体正面に平行に横たわらせたビームスマートガンに手を乗せているポーズなど(ファンの間ではEx-Sといえばこのポーズしか考えられないとまで認識されている)Ex-S本来の姿としてファンの間では元デザイン以上に人気が高いものとなっている。
[編集] Sガンダム(ブースターユニット装着型)
形式番号MSA-0011[Bst] :Sガンダムの下半身部(Bパーツ)の代わりに、Ex-Sのブースターユニットをアダプターを介して2基取り付け、バックパックもEx-S同様に2基取り付けた計4基のブースターユニットを装備する形態。モビルスーツとしては桁外れの推力・航続距離を有し、地球低軌道から月軌道まで無補給で到達可能であるが、搭乗するパイロットには相当のGがかかる。一撃離脱戦闘用。
作中ではペズンの防衛システムに電力供給する発電衛星SOLの撃破に出撃、その能力を余すところなく発揮して任務を達成した。連載版ではニューディサイズとの接触を目論むエイノー艦隊への強襲を行った。
[編集] Sガンダム ディープ・ストライカー
形式番号MSA-0011[Bst]PLAN 303E
- Sガンダムの強化プランの一つ。巡洋艦アーガマに搭載された主砲と同じ型の艦載ビームカノンを装備しているが、見た目は戦艦の主砲にMSとブースターユニット数機を無理やりくっつけたようなものであり、MSと言うよりは高機動砲台かモビルアーマーとでも言うべき様相である。その名の通り、莫大な加速力で敵陣深くに突入し、戦艦の主砲で一点突破(一撃離脱)を図るという強襲型のコンセプトだったが、実現には天文学的な予算が必要だった事や、Iフィールドジェネレーターをコクピット前面に配置して操縦士の生存性を高めているものの、旋回性能などMSとしての機動性についても(シミュレーション上)十分な性能が得られなかったことも災いし、結果としてMS部位の必要性が疑問視され、机上プランのみで終わっている。随伴機として、Ex-Sガンダムのバックパックを装備したΖプラスMSZ-006C1[Bst] ハミングバードも計画されたがこちらも計画のみでおわっている。
ディープ・ストライカーもハミングバード共にGUNDAM FIX FIGURATIONでモデル化されており、人気が高い。
カトキハジメ自身が後にデザインした機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYに登場するガンダムGP03デンドロビウムの元ネタの1つともいえる(もう1つの元ネタはガンダムMAモードである)。