MH2000 (航空機)
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概要 | |
分類 | 多用途ヘリコプター |
定員 | 乗員2、乗客8(変更可能) |
製造者 | 三菱重工業 |
寸法 | |
全長 | 14.0m(45.9ft) |
全幅 | 12.2m(40ft) |
全高 | 3.8m(12.5ft) |
翼面積 | --- |
重量 | |
自重 | 2,500kg |
有効搭載量 | 2,000kg |
最大離陸重量 | 4,500kg |
機関 | |
燃料搭載量(標準タンク) | 1,140L |
エンジン | 三菱 MG5-110 ×2 |
出力 | 876SHP ×2 |
性能 | |
最大速度 | 280km/h |
経済的巡航速度 | 250km/h |
航続距離 | 780km(残燃料なし) |
連続航続時間 | 4時間(残燃料なし) |
ホバリング上昇限度 | 2,700m(最大離陸重量時) |
初飛行 | 1996年7月29日 |
MH2000は三菱重工業が製造したヘリコプター。日本で初めて国産技術のみで製作された民間用双発ヘリコプターである。機体・エンジン共に自社で製造することは世界的にも珍しい。
目次 |
[編集] 純国産ヘリコプター開発
[編集] RP1での技術習得
三菱重工業では民間用ヘリコプター販売への技術習得を目指して、関わりの深いシコルスキー製のS-76A(JA9598)を購入し、1992年(平成4)7月から実験機RP1を開発した。開発の意図としては、ダイナミック・コンポーネント(ローター、エンジン、トランスミッション)技術、要素技術をインテグレートして機体を取りまとめる技術、低騒音・低振動・安全性に関わる技術、短期間・低コストで開発する技術を習得するとともに、ローター回転数可変化による低騒音の実現、自動操縦装置の技術、GPSとマップ表示機能等による衝突回避装置、低周波のローター音を逆位相の音で消すアクティブ・ノイズ・コントロール技術の確認であった。RP1は1994年(平成6)5月9日に初浮揚、同年9月14日に初飛行した。
[編集] 開発
RP1によって技術確認を終え、民間機実現の目処が立ったことから、1995年(平成7)4月18日に型式証明を申請、地上実験用の2機と飛行試験用の2機(JQ6003、JQ6004)を製作し、飛行試験用の試作1号機が1996年(平成8)7月29日に初飛行(数日後に川崎の純国産ヘリOH-1が初飛行)、1997年に型式証明(輸送TB級)を取得した。
[編集] 販売
量産1号機(MH2000A)は1999年(平成11)10月1日にエクセル航空に納入され、同年11月から都内の夜間遊覧飛行などに使用された。また宇宙航空研究開発機構(JAXA)へも納入している。量産機の価格は1機約4億円で、警察、自治体、自衛隊関連へ参入の意思も表したが、実現には至っていない。また、試作1号機は事故で失われ(下記参照)、2号機は宇宙航空研究開発機構へ引き渡されて、自由落下の衝撃試験に使用された。このため、試作機は残っていない(販売の不振によって、試作機を売り払わなければ膨大な負債を抱えることになるためだと考えられる。)。
[編集] 試作機の事故
2000年(平成12)11月27日、試作初号機は三菱職員による試験中、空中で故障を起こして水田に不時着し、乗組員1名が死亡し5名が負傷、機体は大破したため廃棄となった。飛行試験中の事故死は日本では戦後初めてで、複合材製テールローターの耐久性の予測条件設定が適切でなかったことと、同機が試験専用機であって量産機よりも過酷な使用条件であったため、予想以上に疲労の進展が早かったことが原因とされた。テールローターの改良を加え、2002年(平成14)10月に型式設計変更の承認を得た。
[編集] 機体
形状は卵形で内部容量は大きく、床は平面、キャビンも広めに確保されている。乗員を含め、最大で10名が収容できるが、乗客5名のVIP仕様、担架を載せられる救急仕様など、注文に合わせて柔軟に対応できる。また、駆動装置をキャビン上部に配置しないことにより、低騒音・低振動を実現した。貨物室も大きく確保している。コックピットの視野はサイドウィンドウも設けて広く取ってあり、自動操縦装置やGPSマップ表示装置もオプションで装備することができる。
搭載エンジンは三菱自社製のMG5-110で、高圧縮比の単段遠心圧縮機を採用し、最小限のローター構成により小型軽量化を実現した。先進圧縮機はエロージョン耐性の高い超ワイドコード翼を採用し、制御系を2重にしたことで高い信頼性を確保した。また、MG5-110は電子制御式可変回転数エンジンであり、メインローター回転数100パーセントによる飛行と、90パーセントに抑えての低騒音飛行がワンタッチで切り替え可能で、低騒音の場合は5デシベルほど下がる。
メインローターは複合素材で作られた4枚羽、テールローターは10枚羽で、機体に埋め込まれたダクッテッドファン方式である。機器配置は点検・整備の効率を考慮した。信頼性の高い部品を採用することにより、直接運航費も削減できる。着地はスキッド式で、地上での自力移動はできないが、車輪への転換も検討していると言う。