E-4 (航空機)
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E-4B ナイトウォッチはボーイング747-200Bをもとに改造された、アメリカの国家空中作戦センター(NAOC National Airborne Operations Center)として運用される航空機である。
核戦争・大規模災害などに際し、地上での指揮が取れない場合に備えてアメリカ合衆国大統領・国防長官・指揮幕僚などを搭乗させ、アメリカ軍を空中から指揮する。 E-4には初期型のE-4Aと改修型のE-4Bがある。
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[編集] 概要
核戦争への対応を前提としているため、搭載する電子機器には核爆発による電磁パルス(EMP)に対するシールドが施されている。 搭載する通信機器を介したアメリカ軍ICBM部隊・SLBM部隊・戦略爆撃部隊の指揮能力を持つ。
この機はネブラスカ州オファット空軍基地の空軍第55航空団に所属し、4機が就役している。
E-4はE-135の後継機として発注された。
1974年、3機のE-4Aが就役開始。 その後、大幅な改修がなされたE-4Bが1980年に就役開始、85年までに全機をB型に改修。 なお、2009年退役開始、2012年までに全機退役させる予定。
アメリカ合衆国大統領の近くには必ず1機以上のE-4Bが待機し、大統領がいわゆるエアフォースワン(VC-25)にのって外遊する場合などでも必ず随行する。(近隣の空港・在外アメリカ軍基地にて待機する)
[編集] 改造した点
E-4Bのベース機であるボーイング747-200Bと基本的に飛行性能は同じであると思われる。 しかし、任務に応じた改造がなされている。
- 内装の変更
- キャビン内には国家指揮権限作業区画、会議室、ブリーフィングルーム、戦闘幕僚作業室、通信管制センター、休憩室などを設置している。
- 空中給油受油装置の付与
- 任務の性質上、長時間空中に留まる可能性があることから空中受油設備を備える。
しかし、エンジンオイルは空中給油によって補充することができないため、エンジンオイルがなくなる72時間までは飛行能力を維持できる。なお、無給油では12時間の航続能力を持つ。
- 各種電子機器の追加
- 搭載された電子機器は核爆発によるEMPに対抗するためのシールドを施してある。
EHF(ミリ波通信)による衛星通信能力、VLF(超長波通信)による対潜水艦通信能力などを備える。
機体上部の出っ張りはEHFアンテナ。LF/VLFアンテナは長さ6kmで、機体尾部から曳航する。
[編集] レイアウト
[編集] 上部デッキ
- フライトデッキ
- コクピットには機長・副操縦士・航空機関士・ナビゲーター(航空士あるいは航空通信士に相当するものと思われる)が乗務する。
フライトクルーのラウンジ・仮眠区画などはフライトデッキ後方に設置されている。
[編集] 中央デッキ
- 国家指揮権限作業区画(NCA-Area)
- 国家指揮権限作業区画はおそらく大統領用の区画で、執務室・仮眠ベッド・更衣室を備え付けている。
[編集] 下部デッキ
[編集] 呼称の変遷
E-135の後継機として発注された当初の呼称は発展型空中国家指揮所(AANCP・AABNCP Advanced Airborne National Command Post)。
その後、国家緊急空中指揮所(NEACP National Emergency Airborne Command Post)と呼称が変更される。
1994年以降、冷戦構造の崩壊によって核戦争の差し迫った危機もなくなり、大規模災害への対応のためにFEMA長官の要請で被災地域支援をするようにもなった。そのため、前述した現在の呼称に変更された。
また、E-4は全面核戦争の指揮を目的とした機体であったことから「地球最後の日の飛行機」(Doomsday Planes)ともよばれていた。
[編集] スペック
- 全幅:59.64m
- 全長:70.51m
- 全高:19.33m
- 翼面積:510.95m²
- 自重:180,000kg
- 全備重量:362,900kg
- 最高速度:Mach0.86
- エンジン:GE製 CF6-50E2×4
[編集] 関連項目
- 政府専用機
- VC-25-大統領専用機
- C-32A(ボーイング757)-副大統領、閣僚など要人の移送に使用
[編集] 外部リンク
- アメリカ空軍公式ウェブサイト(英語)
- No one Comes Close-米軍の特殊任務機として紹介