首なしライダー
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首なしライダー(くび- )は都市伝説の一種。日本各地に見られる。
大筋は
- ある道路のある地点にピアノ線が張ってあり、そこにあるライダーが猛スピードのバイクで突っ込んでしまい、彼は首をはねられてしまったが、首のないライダーを乗せたままバイクはしばらく走り続けた。彼は亡霊となって夜な夜な(または死亡時刻、命日などに)その道路を猛スピードでさまよい続けている。
という一種の怪談であるが、道路標識やガードレール(欧米ではトラックなどからはみ出したり落下した積荷により死亡するケースもある。ただし欧米では亡霊ではなく惰性で走り続けたバイクの話になるらしい)などの鋭利なもので首をはねられた、などのバリエーションがある。 ピアノ線を張った者の正体も、変質者であったり暴走族であったり近隣住民であったり、また被害者も暴走族や不幸にして通勤帰りなどで偶然通り掛かっただけの人など様々である。刎ねられた首が飛んで来るというバリエーションもある。これはほとんどがバイクが登場するのとは別の場所に断末魔の叫びとともに飛んでくるというが、ヘルメットつきかどうかは定かではない。走り回る理由は自分を殺害した犯人か刎ね飛ばされた自分の首を捜している、などが多い。
この都市伝説は暴走族に悩まされた近隣住民が妨害を目的に道路に渡したロープでバイクが転倒するという実際の事故が発端であるという。原型となった事故については上記の通り様々な説があるが実はただ偶然そこで発生したバイク死亡事故がおもしろおかしく伝えられただけという説もある。
首なしライダーの噂が本格的に広まったのは1979年にオーストラリアで映画『マッドストーン』が公開(日本では1981年公開)されてからだという。この映画には道路に仕掛けたピアノ線でライダーの首を刎ね飛ばすシーンがある(1963年制作の映画『大脱走』にもヒルツ(役スティーブ・マックイーン)が敵のナチス兵からバイクを奪う場面にも同様のシーンあり)といいこれが各地のバイク事故にまつわる噂と結びついて広まったとも言われる。
誤認例としては真っ暗な道で黒いフルフェイスヘルメットをかぶったライダーの乗るバイクを首なしライダーと間違えたケースが多いという。実際黒いフルフェイスヘルメットをかぶって運転するライダーには誤認された体験談を話す人がいる。またこれを狙いわざと夜間に黒い(それも光の反射を抑えるように加工した)フルフェイスヘルメットをかぶって運転する悪質なライダーもいるという。
ゲリラ戦では、走行する車両の上部から首を出した兵士の首を切断する目的でワイヤーを張ることがある。これに対抗するために陸上自衛隊の軽装甲機動車イラク派遣仕様などには、ワイヤーカッターが取り付けられている。
漫画『ブラッディエンジェルズ』(作者みず谷なおき)でこの噂で交通事故が減ったため、署長命令で偽装首なしライダーをする警官が登場する回がある。
テレビドラマ『銀狼怪奇ファイル』で扱われた。 『学校の怪談』では特番「首なしライダー!! 死の呪い」で登場。声優は高木渉。
なお、2002年5月23日に秋田県秋田市でバイクで走行中にロープに引っかかり、ロープがバイクの風防ガラスではね上げられ、首を直撃し、首の切断により死亡する事故が起こったため、一時的にこの噂が大きくなったことがある。
これとよく似た噂、怪談(もしくは原型の一つ)として戦国時代から広く存在する「首なし騎馬武者」(首無し武者)がある。これには馬まで首なしになったものもあるという。アイルランドにはデュラハンと呼ばれる首なし妖精が存在し、南米には首なし女というお化けの言い伝えもある。