関西電力黒部専用鉄道
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関西電力黒部専用鉄道は、富山県黒部川水系にある関西電力の水力発電施設を管理するため、黒部峡谷鉄道本線から分岐する専用鉄道。特に、黒部峡谷鉄道欅平駅から黒部川第四発電所前まで伸びる路線が、いわゆる「上部軌道」と呼ばれるものである。
他には、黒部峡谷鉄道黒薙駅で分岐する「黒薙支線」がある。
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[編集] 上部軌道
上部軌道は、黒部峡谷鉄道欅平駅から黒部川第四発電所前駅(黒四発電所前駅)まで8.2kmを結ぶ専用鉄道である。いわゆる「黒部ルート」の一部となっている。
上部軌道に対し、黒部峡谷鉄道本線を「下部軌道」と呼ぶことがある。
仙人谷までの開通過程では、途中の阿曽原付近の超高温区間で難航した。当時の岩盤温度は160℃にもなり現在では導水管などの敷設により温度は下がったがそれでも40℃と相当の高熱であり、「高熱隧道」と呼ばれる。この近辺の隧道には硫黄が付着し明らかに雰囲気が違う。この過酷な工事を紹介したものとして、吉村昭の小説『高熱隧道』が有名である。
[編集] 沿革
[編集] 運行
蓄電池による小型のバッテリートロッコを運行する。 冬季運休となる下部軌道とは異なり、ほぼ全線トンネルのため通年運行が可能である。唯一、仙人谷で地上に出て黒部川を渡るが、鉄橋は冬季は完全に密閉できる構造である。
なお、運転管理者は、子会社の黒部峡谷鉄道である。下部軌道とは欅平でつながっているが、高低差が大きいため欅平駅構内にトロッコの車両ごと乗せることができる高低差約200メートルの竪坑エレベーターがある。このエレベーターは1937年に設置されたもので、アメリカオーチス社製であったが、巻き上げ機は1985年に新型に交換されるまで現役だった。
正確には上部軌道とは竪坑エレベーターの上の通称「欅平上部駅(竪坑上部駅)」と「黒部川第四発電所前駅」の間のみを指す。竪坑エレベーター下の通称「欅平下部駅(竪坑下部駅・欅平駅の構内扱い)」と黒部峡谷鉄道欅平駅の間は下部軌道の車両がそのまま乗り入れている。「欅平下部駅」は欅平を出てすぐにトンネルに入った車両が500メートルほど進んでスイッチバックしたすぐの位置にある。
原則として関西電力関係者以外は乗車できないが、上部軌道は関西電力が主催し富山県が協賛する「黒部ルート見学会」に応募し、当選すれば乗車することが可能である。
[編集] その他
2002年12月31日に放送された第53回NHK紅白歌合戦では、黒部川第四発電所前駅構内のトンネル内からの中継で中島みゆきが「地上の星」を歌った。