釧路湿原
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釧路湿原(くしろしつげん)は、北海道釧路平野に位置する日本最大の湿原。面積18,290ha。1980年にラムサール条約登録地に、1987年に湿原周辺を含む約26,861haが国立公園(釧路湿原国立公園)に指定された。
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[編集] 地理
湿原は釧路市の北側に広がる。湿原のかなりの部分が、北海道川上郡標茶町と北海道阿寒郡鶴居村に属する。湿原の中を釧路川が大きく蛇行しながら流れている。
[編集] 自然保護
釧路湿原の自然保護は1935年に「釧路丹頂鶴繁殖地」として2,700haが国の天然記念物に指定されたことに始まる。現在タンチョウの夏季繁殖地は釧路湿原を含む道東各地に広がっているが、冬には帰ってきて越冬する。サケ科に属する日本最大の淡水魚イトウなど希少な生物も多く、貴重な自然の残る領域である。一帯はほとんどが湿原であり、国立公園特別区域のため一般人は入れない。観光客は高台にある複数の展望台から風景を眺めるか、遊歩道を歩く、またはカヌー等により川下りによって観察を行う。釧網本線は一部湿原内を通るため、これで観察する方法もある。
かつては一部が干拓され、牧草地にする試みが行われたこともあったが、現在は環境省により「釧路湿原自然再生プロジェクト」が行われている。塘路湖などの湖もある。
[編集] 湿原の歴史
釧路湿原は約3000年前に現在の形になった。1万年前までの氷河期には、地球上の水が氷河として大量に地上に堆積したため海水量が減って海水面が低下し、釧路湿原一帯も完全に陸地化していた。その後気温が上昇して海水面が上昇したが、約6000年前には気候が現在より温暖化し海水面も今より2から3m高くなった。縄文海進参照。当時釧路湿原一帯は大きな浅い湾を形成し、気温も2から3℃高く現在の東北地方と似た気候であった。湿原周辺に存在する当時の貝塚からはハマグリやシオフキなどの貝殻が見つかっているが、これらは現在は仙台付近以南に生息している種である。その後気温は低下して海水面も低下し4000年前には現在の海岸線が形作られたが、釧路湿原では湾口部に砂洲が発達し内陸部が水はけの悪い沼沢地になった。沼沢地に生い茂ったヨシやスゲが冷涼多湿な気候のもとに泥炭化して湿原が形成され約3000年前に湿原ができた。北海道にあるサロベツ原野や霧多布湿原も同じ経緯で形成された。
[編集] 交通
東端には、釧網本線で行くことができる。最寄り駅は塘路駅、細岡駅、釧路湿原駅など。釧路湿原駅付近に細岡展望台などの施設がある。
西端には、釧路市湿原展望台があり、バスで行くことができる。またこの付近は鉄道の廃線跡を利用した遊歩道も整備されている。
[編集] その他
現在、釧路湿原を対象として自然再生推進法に基づく自然再生事業が数箇所で行われている。