金髪
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金髪(きんぱつ、ブロンド、英: 男性形Blond/女性形Blonde)とは、赤毛と同様に、少量のユーメラニン色素の存在と、比較的多量のフェオメラニン色素の存在により特徴付けられる、各種の哺乳類に見られる金色を帯びた体毛である。金髪の色は明るい茶色から薄い金色までの範囲に及び、これらの様々な金髪に属する髪の色を持つ人間は、地球上の全人口の1.8%未満である。
実際に表面に現れる金髪の色は様々な要因に依存するが、色素の不均衡と不足によりもたらされるペール・ブロンドから、珍しい金髪である赤色を帯びたストロベリー・ブロンド(ジンジャーとしても知られる)や、多くのユーメラニン色素を持つ茶色を帯びたゴールデン・ブラウニッシュ・ブロンドまで、常にある種の黄色に近い色を帯びている。赤毛の髪が最も太い毛髪を持つのに対し、本物の金髪は最も細い毛髪を持っている。金髪は、人間と、犬や猫、その他の哺乳類の間で見られる。
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[編集] 起源
明るい髪の色はあらゆる人種に対し、希少な突然変異として自然に発生するが[1]、ほとんどの人種に対しては、ほぼ無視できる低確率であるか、子供の間にしか見られない。しかしながら、ヨーロッパ圏の人種の間では金髪は他の人種より頻繁に発生し、しばしば成人期まで残存するため、これがヨーロッパ人固有のものであるとの誤解を与えている。最近の遺伝情報学に基づけば、ヨーロッパにおいて金髪の人口がはっきりと増加しだしたのは、最後の氷河期である約1万1000年前から約1万年前のことである可能性が高い。これ以前のヨーロッパ人は、他の人種の支配的な特徴である焦茶色の髪と暗い色の瞳を持っていた[1]。
なぜヨーロッパの各人種が、人類の進化の速度としては、かくも最近かつ急速にこのような高確率で金髪(と多様な瞳の色)を持つようになったのかは、長年の疑問であった。このような変化が通常の進化の過程(自然淘汰)で起こったのであれば、約85万年の歳月が必要となった筈である[1]。しかし現代の人類は、アフリカからヨーロッパまでの移住を成し遂げるまでに、僅か3万5000年から4万年の期間しか費やしていない[1]。セントアンドリューズ大学の後援を受けたカナダの人類学者ピーター・フロストは、最後の氷河期の終わりにおいて金髪の人種が急速な発生を見たのは、性淘汰の結果であるとの説を、2006年3月に Evolution and Human Behavior において発表した[2]。この研究によれば、多くのヨーロッパの地域において金髪と青い瞳を持つ女性は、乏しい数の男性を相手にした過酷な配偶者獲得競争において、彼女らの競争相手より優位に立てたのである。ヨーロッパ圏において食糧不足の為にクロマニヨン人の人口が低下していた1万1千年前から1万年前の時期において、金髪は増加を見たのであると、研究は主張する。ヨーロッパ北部におけるほとんど唯一の食料源は放浪するマンモスやトナカイ、野牛、野馬の群れのみであり、それらの獲物を発見するためには長く困難な狩りのための遠出が必要であり、狩りの間に多くの男性が命を落としたために、生き残った男性と女性の比率の不均衡が生じた。この仮説では、金髪の女性はその際立った特徴が男性を獲得する際に役立ったために、その結果として金髪の人口の増加につながったのであると主張されている。
『The History and Geography of Human Genes』(1994年)によれば、金髪は紀元前3000年頃に現在リトアニアとして知られる地域において、インド・ヨーロッパ祖語族の間でヨーロッパの支配的な頭髪の色となった(現在においても、リトアニアは金髪人口の比率が最も高い国として知られている)。男性が金髪の女性を魅力的であると見なすようになったために、この特徴はスカンジナビアへの移住が行われた際にも、性淘汰によって急速に広まったのであると考えられる[3]。
[編集] 年齢との関係と体毛
金髪は幼児と子供の間でよく見られるため、しばしば英語「ベビー・ブロンド」は非常に明るい色の頭髪を指すのに使われる。成人の間で金髪が稀にしか現れない集団においてすら、金髪の乳児が生まれることもあるが、このような出生時の金髪は通常は急速に失われてしまう。金髪は年を取るにつれてより濃い色に変化していく傾向があり、金髪を持って生まれた子供の多くは、十代に達する頃には淡い茶色の髪か場合によっては黒髪を持つようになる。
また、金髪の持ち主は体毛も金色であるが、体の末端に生える他の毛は頭髪よりも濃い色を帯びる傾向があり、場合によっては茶色になることもある。その一方で産毛は非常に明るい色であり、透き通っていることもある。ほくろやあざから生える毛は、暗い色を帯びることがある。
[編集] 各人種における発現
金髪は北ヨーロッパ、特にオランダ、北欧諸国、ロシアの人々の典型的な特徴であり、このため非常に明るい金髪は、しばしば「ノルディック・ブロンド(北欧のブロンド)」と呼ばれる。これより暗い色合いの金髪は、ヨーロッパ圏以外では、現在のシリア人やレバノン人、ペルシャ人、クルド人や、イラン、アフガン、パキスタンのイラン人などの、中東の様々な地域で見られる(ただし、これは一般的なものではない)。一般に、ヨーロッパ人の金髪は淡い瞳の色(青、緑、明るい茶色)や、(しばしばそばかすを伴う)色白の肌と関連している。強い太陽光線はあらゆる色の髪を徐々に退色させるばかりでなく、多くの金髪を持つ人々の、特に少年期の肌にそばかすを生じさせる。また、オーストラリアのアボリジニ、特に大陸西中央の地域の先住民も、かなりの確率で黄色がかった茶色の頭髪を持っている[4][5]。オーストラリア先住民の金髪は主に女性と子供に見られ、通常は年を取るにつれて濃い茶色に変化していく[6]。
[編集] 文化的影響
現代の西洋では、髪の脱色の習慣が(特に女性の間で)広く行われている。脱色による金髪は紫外線の照射によって天然の金髪と見分けることができる。強く脱色された髪は紫外線により発光するが、天然の金髪は光らない。
20世紀のアメリカ合衆国で金髪のイメージを普及させるのに貢献した有名な二人のセックスシンボルとして、マリリン・モンローとジーン・ハーロウがいる。モンローは(少女時代は淡い琥珀色の髪を持っていたが)濃いダークブロンドの持ち主であり、ハーロウは天然のアッシュブロンドの持ち主であった。この二人は主演映画の中で、頻繁に典型的な「頭の悪いブロンド女」の役を演じた。ジーン・ハーロウは西洋において売春婦以外の一般の女性に髪の脱色の習慣を広めた人物としてしばしば引用される。
20世紀初頭、しばしば金髪はマディソン・グラントやアルフレート・ローゼンベルクなどの北欧主義者によってアーリア人と関連付けて宣伝されたが、実際にはアーリア人至上主義者が「アーリア人」であると考えた人種の基本的な頭髪の色は、茶色かより濃い色であった。第二次世界大戦中のナチスの同化政策では、金髪はポーランドの児童を選別する基準として使用された。
英語では金髪の色をより詳述するための、多数のブロンドの種類がある。以下にその例を挙げる。プラチナブロンドおよびトゥーヘッド(ほとんど白に近い金髪であり、天然のものは子供にしか見られないが、稀にフィンランド人やスウェーデン人の成人にも現れる)、サンディブロンド(砂のような色の金髪)、アッシュブロンド(通常は非常に明るい、灰色の金髪)、ダーティーブロンドおよびディッシュウォーターブロンド(アッシュブロンドとこれら二つはほとんど同じ色であり、濃い陰影を持つ金髪を指す。ただし、最後の二つは不快な色であると考えられている)、ゴールデンブロンド(金の鋳物のような光沢のあるブロンド)、ボトルドブロンド(脱色によるブロンド)、ストロベリーブロンド(赤味がかったブロンド)、プールブロンド(塩素の使用されたプールの常用による、緑がかったブロンド)、ヘイジーブロンドおよびゼブラブロンド(天然の褐色あるいは茶色の髪に金髪が混じったブロンド。長時間太陽の下で、ある髪が他の髪を隠すような髪形をしていた時に、しばしば引き起こされる)。
2002年には、科学者達が金髪は最終的に遺伝子の海に埋もれて消滅するだろうと予測したと主張する、全世界的なジョークが広まった。このジョークは科学的根拠として世界保健機関の調査を引用していた。このジョークの主張は誤りである(詳細は英語版の記事en:Disappearing blonde geneを参照せよ)。
[編集] 脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 "Cavegirls were first blondes to have fun"、『タイムズ』より。注:タイムズ紙の記事の末尾はen:Disappearing blonde geneに触れていたが、オンライン版の記事ではそれに対する反論に差し替えられている
- ↑ Abstract: "European hair and eye color: A case of frequency-dependent sexual selection?" Evolution and Human Behavior, Volume 27, Issue 2, Pages 85-103 (March 2006)より
- ↑ Cavalli-Sforza, L. Luca; Menozzi, Paolo; and Piazza Alberto The History and Geography of Human Genes Princeton, New Jersey: 1994 Princeton University Press Page 266 -- ヨーロッパにおけるブロンド遺伝子の発生地図
- ↑ [1]
- ↑ [2]
- ↑ [3]