連珠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
連珠(れんじゅ)は、アブストラクトゲーム、ボードゲームの一種で、連珠盤の上に白黒の碁石を置いて、先に石を5つ並べた者が勝ちである。五目並べのルールに制限を付けて先手・後手の均衡をとったもの。五目並べと同じく、二人零和有限確定完全情報ゲームとなる。
目次 |
[編集] 用具
- 碁笥(ごけ): 珠を入れる器。
- 連珠盤: 板の上に、直行する縦横それぞれ同じ本数の直線を引いたもの。珠を置くのは囲碁と同様に縦線と横線の交点である。正式には、囲碁の19道盤より各辺2路ずつ狭い、縦横15路ずつの15道盤が使われる。
- 対局時計: 公式戦では制限時間を定め、時間切れによる勝敗を厳正に定めるために対局時計を用いる。
練習対局では、連珠盤と碁石の代わりに碁盤や縦横15本ずつ線を引いた紙と筆記具を用いることもある。
[編集] 歴史
五目並べのような石を連続して並べることを競うゲームについては、日本のほか、囲碁の発祥であった中国、その他の国についても類似のルールがあるとされる。とはいえ、原型であると主張されたものが後に全く別のゲームであることがわかるなど、それらの説はそれほど定かではない。
連珠そのものは日本が発祥であることはあきらかなため、この原型となった五目並べについて歴史をさかのぼると、平安時代には存在していることははっきりしている。この時期のものは碁盤を使い、特に禁じ手もないものであったようだ。しかし、明治に入ると、禁じ手のない五目並べが完全に先手必勝であることがわかるようになる。
黒岩涙香は五目並べに興味を持ち、1899年、自身が主幹であった萬朝報に五目並べの必勝法を掲載する。これが反響を呼び、彼は同年12月6日、このゲームを「連珠」と呼ぶことを同紙上で提案した。この日が連珠の発祥した日となる。このころ既に三三は黒白とも禁じ手、長連は無効な手とされていたが、1903年には三三は黒のみの禁じ手とされることになった。
なお、連珠の初代永世名人である高山互楽とは、黒岩涙香その人であり、高山互楽とは黒岩の号である。
1912年にはたとえ守りのためであっても黒が三三を打った際には負けとなる一方、白が長連を打っても勝ちとなるようルール改正が行われた。1918年までに黒の長連ははっきり負けとなり、また同年に黒の四三三は負けとなった。
1931年、第三代の名人であり囲碁も強かった高木楽山は15道盤の採用や黒の四四を禁じ手とするなどのルール改正を提唱した。しかしこれは論争を引き起こし、連珠関連団体の分裂の遠因となった。
1966年、分裂していた連盟が「社団法人日本連珠社」として一つになる。そして、1988年、連珠国際連盟が発足した。連珠国際連盟は日本連珠社のルールに準拠したルールを採用している。
[編集] 現行のルール
2人の対局者がそれぞれ黒、白の珠を持ち、交互に一つずつ珠を置いていく。珠を置く場所は線の交点上である。 黒が先手で1手目は天元(中央の星)に打つ。また、白の2手目は天元から1目離れた場所に、黒の3手目は天元から2目以内の場所に置かなければならない。このため、3手目までの形が(対称形を除き)26通りあり、これらを珠型と呼ぶ。26ある珠型にはそれぞれ名称がついている。
黒が有利とならないよう、黒に限って三三、四四、長連は禁手(禁じ手)となる。黒が禁手を打った場合はその時点で負けとなる。白に禁手はなく、長連は五連とみなして勝ちとなる。ただし長連を除いては、黒が禁手を打ち白が黒の禁手に気づかずに次の手を着手した場合は、禁手が解除され対局を続行させることができる。
公式ルールでは珠型交替・五珠二ヶ所打ちが用いられる。これは以下の通りの手順で行う。
- まず、何らかの方法で仮先(仮の先手)・仮後(仮の後手)を決定する。(通常は握りによって決める事が多い。)
- 仮先は、26珠型の中から一つを提示する。
- 仮後は、提示された珠型を見て、黒番白番のうち自分の持ちたい側を選ぶ。これにより、正式な黒白が決まる。
- 選んだ後に正式に白番となった側が白の4手目を打つ。
- 次の黒番が黒5手目の着手箇所を2箇所指定する。この2箇所は互いに対称形とならないようにする。
- 白番は、この2箇所を比較し、打たせたい珠を残し、もう1箇所を取り除いてから次の白6手目を打つ。
- これ以降は黒白交互に打つ。
[編集] 珠型
白の2手目は、黒の1手目(天元)の一つ上に並べて置くか、斜め隣りに置くかしかない(他は対称形になる)。 これにより、直接打ち,間接打ちの区別をする。
3手目までの珠型には、星または月の字をつけた呼び名が決まっている。
[編集] 直接打ち
直接1号「寒星」 - 直接2号「渓月」 - 直接3号「疎星」 - 直接4号「花月」 - 直接5号「残月」 - 直接6号「雨月」 - 直接7号「金星」 - 直接8号「松月」 - 直接9号「丘月」 - 直接10号「新月」 - 直接11号「瑞星」 - 直接12号「山月」 - 直接13号「遊星」
[編集] 間接打ち
間接1号「長星」 - 間接2号「峡月」 - 間接3号「恒星」 - 間接4号「水月」 - 間接5号「流星」 - 間接6号「雲月」 - 間接7号「浦月」 - 間接8号「嵐月」 - 間接9号「銀月」 - 間接10号「明星」 - 間接11号「斜月」 - 間接12号「名月」 - 間接13号「彗星」
[編集] 必勝定石
連珠は先手番による必勝定石が存在することが知られている数少ないゲームである。禁手を設けても、単純に黒白が交互に打っていくならば、先手側に様々な必勝手順があることが確立されている。そこで、現行では珠型交替・五珠二ヶ所打ちなどの開局規定により、両対局者間の均衡をとっている。
ただし、必勝といわれている定石でも非常に変化に富んだものが多く、実際に対局で打ちこなすには相当の知識と技量が必要である。 そのため、逆にあえて必勝といわれる形を打たせて、間違いを誘うことで勝ち得ようとする後手策も数多く存在する。
[編集] 関連事項
連珠には類似のゲームがいくつか存在する。
- 囲連星: 連珠と囲碁がミックスされたゲーム。
- 二抜き連珠(朝鮮五目)
- ペンテ: 二抜き連珠のバリエーション。
- 梅花碁: 十字の形に石を並べれば勝ちとなる。大きさは問わない。
- 五目並べ: 連珠の発祥の元。