線香
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線香(せんこう、インセンス、incense) は、火をつけることで芳香のある煙を出す細い棒状や渦巻き状のもの。香(こう)の一種。日本ではお墓や仏壇にお供えとして燻らせたりする用法が一般的である。また最近では花の香りや香水調などさまざまな香りをもつ新しい線香も増えており、部屋のにおい消しや芳香剤的な使用方法も増えている。
また、江戸時代では時計の代わりとしても使用され、禅寺では線香が1本燃え尽きるまでの時間(40分)を一炷(いっちゅう)と呼び、坐禅を行う時間の単位としたほか、遊郭では1回の遊びの時間をやはり線香の燃え尽きる時間を基準としたが、中には線香を途中で折って時間を短縮させる遊女もいた。
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[編集] 材料による種類
線香は材料から「匂い線香」と「杉線香」に大別される。
[編集] 匂い線香
匂い線香は、椨(タブ)の木の樹皮を粉末にしたものに、白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)といった香木の粉末や他の香料、炭の粉末、その他の材料を加えて練り、線状に成型・乾燥させたもの。
[編集] 杉線香
杉線香は、3ヶ月ほど乾燥させた杉の葉を粉砕機や水車を用いて粉末にしたものに湯とノリを加えて練り、線状に成型・乾燥させたもので、墓参りのときなどに特に用いられる。
[編集] 形状による種類
線香は形状から、一般的な棒状の線香(中国語 綫條香 xiàntiáoxiāng」の他に、渦巻き線香、竹ひご線香がある。また、線香とは呼ばないが、同じ原料で作る円錐形(コーン)型のインセンスがある。
[編集] 渦巻き線香
香港、台湾などでは、中国語で「盤状香 pánzhuàngxiāng」と呼ばれる渦巻き型の線香を寺院に吊して祈願することがよく行われており、大型のものでは、連続ひと月近くも燃え続ける例がある。太く長い棒状によったものを巻き付けて作り、渦巻き状に打ち抜く蚊取り線香とは成形方法が異なる。
日本では、葬儀後に香を絶やさぬ為に焚かれる。一巻が約12時間。
[編集] 竹ひご線香
インドや中国、台湾などでは、細い竹ひごに線香の生地を練りつけて固めた竹芯香、(竹ひご線香、中国語 竹枝香 zhúzhīxiāng)が古くから用いられている。日本でも輸入雑貨店などでよく販売されている。この竹芯香の製法が天正年間に日本に伝わり、現代の日本の線香の原型になったとされる。
[編集] 束線香
束にしてある線香で、多くは紙に巻かれる。墓参用の線香。
[編集] 衛生線香
中国では、トイレの芳香及び駆虫目的で、「衛生香 wèishēngxiāng」と呼ばれる、太い棒状の線香を焚く例が少なくない。殺虫目的の蚊取り線香とは異なる。
[編集] 一般的な製法
以下、棒状の「匂い線香」を例にとって製法を解説する。
- 椨(タブ)などの木を粉末にしたものに、香木の粉末や香料を加えて均一になるまで撹拌し、更に湯を加えて練る。
- 出来上がった粘土状のもの(練り玉)を専用の押し出し器で押し出し、一定の太さの棒状に成型する。
- 木の板(盆板)にとり、乾燥用の板(干し板)に移し変える。
- 干し板上にきっちり並べた線香を、規定の長さに切りそろえる。
- 一週間から10日間乾燥させた後、箱詰め包装される。
[編集] 材料
線香によく使われる材料には下記がある。