緊急列車防護装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
緊急列車防護装置(きんきゅうれっしゃぼうごそうち:One Touch Emergency Device)とは、列車に非常事態が発生またはその恐れがある場合に、運転士が行う必要がある一連の列車防護操作を、1つのボタンで迅速かつ自動的に行う装置である。「ワンタッチ」、「TE装置」とも呼ばれている。 新幹線では、保護接地スイッチ(EGS)といわれ、異常事態発生時には架線電源を強制的に停電させて列車を無加圧状態にさせて走行中の列車を停止させるシステムである。 主に機関車に装備されている装置だが、近年は電車や気動車にも装備されはじめている。
通常TE装置を動作させるボタンは赤い大きなボタンで、運転席の操作しやすい位置に配置されている。ただし誤作動を防止するため、クラッカープレートなどで覆いを被せている。
このボタンを操作すると、非常制動・主回路遮断(ディーゼル機関車の場合は機関停止)・パンタグラフ降下(電気機関車)・非常汽笛吹鳴・防護無線発報・信号炎管点火・スリップ防止の砂撒き・暖房のための蒸気発生装置(SG)の停止など、一連の列車防護操作が自動的に行われ、運転士は衝突などの最悪の事態が発生する前に運転室から避難する事ができる。
しかし、2005年4月25日にJR福知山線でおきた脱線事故の際にも車掌がこの装置を使用しようとしたが、停電のため作動しなかった(直後に接近してきた下り線の特急電車の運転士は、近隣住民が非常ボタンを押したことによる特殊信号発光機の点灯で異常を察知し、およそ100m手前で停車し二次災害を免れたと言われている)。このような事態が生じたことから、停電時でも本装置が動作できるように改良が進められている。