終身刑
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終身刑(しゅうしんけい)とは、日本においては受刑者が死ぬまで懲役又は禁錮となる刑罰のことである。ただし欧米でのLife Sentenceとは無期懲役を指し、仮出獄の存在が前提となっている。実際の日本語でいう終身刑の場合はLife Sentence "without possibility of parole"(仮出獄の可能性なしの禁固刑)となる。これは近代法制度の禁固刑においては仮出獄の可能性が前提とされていることに一因がある。
実質上の無期刑であるLife Sentenceが終身刑と直訳されることが多いのでその内容に混乱が見られる。絶対的終身刑 (絶対的無期刑) と仮出獄が認められることがある相対的終身刑 (相対的無期刑)と区別するばあいもあるが欧米に"Abosolute Life Sentence"や"Relative Life Sentence"などの用語は存在しない。英国法において裁判官がLife Sentenceを宣告する場合は常に服役何年後に仮出獄の申請が可能になるかが同時に決められる。凶悪犯罪ほどこの年度が長くなり最も厳しい場合に仮出獄の可能性が否定される。また日本の無期懲役と同じで申請が可能になるだけで仮出獄が保障されているわけではない。仮出獄の審査においては受刑者の更正とが審議される。また欧米の一般市民の間でもLife Sentenceが終身刑にあたるとの誤認は存在する。
(日本の無期懲役に相当。)
[編集] 刑の内容
無期懲役との違いは、終身刑には仮出獄がなく、受刑者は死亡するまで監獄内に拘禁され、社会復帰させることがないという点である。死刑を廃止した国で死刑の代替刑として行われるが多い。日本と韓国の現行法では死刑があり、終身刑はない。社会復帰の可能性を完璧に絶ち、半永久に拘禁するので非人道的や死刑以上に非人道的との批判もある。国によっては、有期刑であっても、受刑者が犯したそれぞれの罪に対する受刑期間を足し合わせた結果、その受刑者が生存不可能なほどの極端に長い受刑期間となる(懲役数百年など)ことがあり、事実上の終身刑になっている。ただし例外として高齢や病気などを理由に釈放される場合や恩赦によって減刑される場合もある。
[編集] アメリカの場合
死刑の有無にかかわらず無期懲役および終身刑は存在する。ただし日本語のように違う用語が使われるのでなく"Life Sentence"と"Life Sentence without possibility of parole"で呼び分けられる。死刑制度を廃止した州は第一級殺人には終身刑 (仮出獄のない禁固刑)が言い渡される。死刑制度が続いている州と死刑廃止の州の両方で殺人などを犯し後者の州でつかまった場合でも前者の州での裁判および死刑を逃れることは連邦制度上できない。あくまでも死刑制度のない州で死刑を逃れることができるだけである。
また終身刑に服している囚人が刑務所内で殺人を犯すなどの事例があり死刑賛成派からは死刑の特別予防論の根拠とされる。さらにアメリカでは司法取引が合法で、検察側が死刑求刑を取り下げる代わりに被疑者が罪を全面的に認めて終身刑を受け入れることによって裁判による審議が回避されることがある。この場合は、潔白を完全に立証するような証拠が出現でもしない限り冤罪を主張することが法的に不可能になる。さらに共犯の場合は被疑者の一人が死刑の求刑を取り下げることを条件に他の被疑者で共犯者として証言台で告発することが行われる。検察側の目的は主犯とみなすものの有罪および死刑を確定するためである。もちろんこのような場合に死罪を求刑する場合は他の証拠が必要とされるが、冤罪の起こる可能性を著しく高めるという理由で他の先進国ではこのような司法取引は禁止されている。アメリカにおいては膨大な数の犯罪が起こる(その三分の一が麻薬関係)ためほとんどの刑事裁判が法廷における審議を踏まずに司法取引による減刑措置で解決される。また検察側も事件の処理に追われている面もあり司法取引を拒否し無罪を主張する被告にはできるだけ重い求刑を行う。これにより不確定要素の大きい陪審制で有罪、しいては死刑の可能性を避けるために終身刑を受け入れた服役者が膨大な数で存在し、相当数が冤罪の可能性が指摘されている。