競売
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競売(きょうばい、けいばい、せりうり)あるいはオークション(auction)は、販売目的で何らかの場に出された物品を、最も良い購入条件を提示した買い手(入札希望者)に売却するために、各々の買い手が提示できる購入条件を競わせる事である。
- インターネット上のウェブサイトで行われる競売行為全般に関しては、インターネットオークションの項も参照のこと。
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[編集] 概要
一般的には物品に支払われる対価を購入希望者間でという競う形で行われるが、それ以外にも様々な条件が売り手側から提示される場合もあり、条件競売という形態では、提示された条件を満たす事で売り買いが成立する。対価を競う場合では、入札する買い手側が価格を釣り上げながら、最終的に最も高い価格を提示した買い手に販売される(落札)販売方式である。この場合、買い手が満足さえすれば実質的に商品価格は青天井(上限が無い)ので、ややマナー違反では在るがいきなり最初から非常識な買値を提示して落札する事も可能である。
これは極めて古くからある商取引方法(売値が明確に決まっていない物を、購入者がその価値を決めていく)であるため、特に売り手と買い手の都合で価格が変動する物や、貴重な物品の販売形態として広く普及しており、また各々の関連業界の歴史も古い。
従来から、次のようなものが競売(競り)方式で取引が行われている。
- 生鮮食品の卸売市場での仕入業者による仲立ち
- 家畜(馬、牛など)の競り(セール)市場→セリ市 (競馬)など
- 花の苗など「花き」の競り(セール)市場
- クリスティーズやサザビーズなど、外国(ほとんどが欧米)の美術作品競売専門業者による美術品や骨董品などの競売
- 裁判所などが執行する差押さえの土地・建物の売却(不動産競売・公売)
これらでは通信技術の発達に伴い、実際のオークションへの入札に際しては、郵便・電子メールによる参加や代理人を立てて電話・FAX等によって指示するような場合も見られる。
[編集] オークションの種類
[編集] シングルオークション
シングルオークションとは売り手または買い手の一方のみが価格を提示するオークションであり、美術品や生鮮食品の市場取引などに用いられる。
[編集] 公開入札方式
公開の場所で行われる競り売りであり、入札者(買い手)は相互に提示価格を知ることができる。
- イングリッシュ・オークション(English auction)
- 通常のオークションである。入札する買い手側が価格を釣り上げながら、最終的に最も高い価格を提示した買い手に販売(落札)される方式である(厳密には以下に述べるファーストプライスとセカンドプライスに分かれる)。
- ダッチ・オークション(Dutch auction)
- 通常のオークションとは逆に、価格が順番に下がっていく。売り手が設定する最高価格から順番に価格を下げていき、買い手は適当なところで入札し、その時点の価格で落札が行われる。取引のスピードが高速化できるので、様々な市場で採用されている。また、バナナの叩き売りもこの一種である。
[編集] 封印入札方式
入札者(買い手)が相互に提示価格を知ることができないオークションである。裁判所の不動産競売は通常この方式で行われる。封印入札方式にも第一価格オークション(Sealed-bid first-price auction)と第二価格オークション(Sealed-bid second-price auction)がある。後者はen:Vickrey auction:Vickreyオークションとも呼ばれる。
[編集] 逆オークション
リバースオークション(逆オークション)(reverse auction)とは、売り手と買い手の立場が逆になっているオークションであり、政府や地方公共団体の調達や工事などで採用される競争入札が代表例である。
[編集] ダブルオークション
ダブルオークションとは売り手と買い手の双方が価格を提示するオークションであり、同種同質の物を多数取引する場合に適するため、証券市場などで用いられる。
- 連続ダブルオークション(Continuous double auction)
- 売り手と買い手の提示価格が合致すると、当該価格で直ちに取引が成立する方式である。東証などの証券取引所では取引時間中に用いられ、ザラバ方式と呼ばれる。
- クリアリングハウス(Clearing house)
- 売り手と買い手から注文を集めておき、(多くの場合所定の時刻に)需給が一致する価格を求め、当該価格以上の買い注文と当該価格以下の売り注文の間での取引を一斉に成立させる方式である。東証などの証券取引所では取引開始時・取引終了時に用いられ、板寄せ方式と呼ばれる。
[編集] オークションの明暗
1980年代末のバブル期においては、豊富な資金を元手に日本人資産家や日本企業が海外の有名オークションで、バブルマネーを駆使しアート市場で巨額美術品を買い漁った。世界の美術市場から逸脱する高額な買値を提示、他国のバイヤーから「(日本人は)美術品の値段を極端に釣り上げ過ぎる」と批判されることも多かった。この時期に買われた名画や美術品はバブル経済崩壊後も売却できず、事実上の不良資産として企業などに死蔵される結果となり、最悪の場合は銀行の担保となっている作品もある。この場合、銀行資産であり非公開の為、名画を目にすることは事実上不可能で、世界的にみて貴重な文化遺産の死蔵であるともいえる。後の平成不況では様々なルートでこれらの絵画が散逸、名画の海外流出をさせる結果となった(→塩漬け)。
バブル期に日本人資産家が購入した巨額美術品の代表といえる絵画作品は、ゴッホの『医師ガシェの肖像』である。1990年、オークション至上最高価格の約125億円で購入したが、絵画は非公開のままで購入者の死後は、銀行の担保になった。2002年の秋に、購入者の遺族が負債処分目的でアメリカのオークション会社を通じて数年前に売却していたことがわかったが、現在では絵画の所有者も場所も特定できていない。ピカソの名画で大作、『ピエレットの婚礼』など多くの数十億円単位の価格で購入した作品もよく似た境遇にある。
[編集] 日本での認知
日本では「ハンマープライス(1990年代中後半)」というテレビ番組で、タレントや著名人に縁の商品(中古品など)を購入または譲り受け一般の参加者を募り競売、そこでの売上金を全てチャリティーとして寄付するという内容を放送した。同番組により、今まで一般には馴染みが薄かったオークションという名前が一般に知られたとされる。
ただ一般的日本人の多くは、このような販売形態に慣れず、同番組に参加した熱心なマニア(またはアイドルオタク)の中には勝者の呪い(後述)により予想外の負債を抱える、問題のある参加者も見られた。これはネットオークションの普及した2000年代より、度々の落札取り消しをする出品者と落札者とのトラブル(その多くは「落札者のマイナス評価」という形であらわれる)を招く事態となっている。
[編集] 関連項目
- オークションに関する理論分析が行われており、その成果は産業組織論や競争政策に応用されている。
- 勝者の呪い(Winner's curse)
- 通常のオークション方式では、一般に入札者は自己の評価額以上の入札を行ってしまうために、落札した者(勝者)が必ずしも満足のいく形にならないということ。
- 競売では熱狂して、商品の価値に見合った落札という行為よりも、他の落札希望者との競り合いの方に没頭してしまう人もいるが、これを(悪い意味で)応用したのが同商法である。先着順という競売の形態を取る事で消費者の購買意欲を必要以上に煽り、そこに一種の錯覚を起こさせ高価な商品を売り付ける悪徳商法である。
- 世界の2大オークションハウス。
- 世界の2大オークションハウス。
[編集] 参考文献
- D. Friedman and J. Rust, ed. "The Double Auction Market: Institutions, Theories, and Evidence". Addison-Wesley, 1991, ISBN 0-201-62459-1.