マナー
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マナー(manner)とは、(その)場で、あるいは社会全体で、居合わせた者あるいは構成員がそれに従って行動すれば、不必要な競争や、無駄な不快感を引き起こさない所作・振る舞い。その精神と形式。字義は行儀、作法、礼儀、態度、様子、仕方、やり方 、方法、態度、様子、挙動、風習、習慣、流儀、様式、作風、種類、手法、習癖。
国や民族、文化、時代のさまざまな習慣によって、マナーの形式は変化する。ある国では美徳とされている事が、他の国では不快に思われることもある。 (例えば、日本ではげっぷをすれば不快に思われるが、ある国では食後にげっぷをするのが礼儀とされている、など。)
「他者を気遣う」という精神を所作として形式化し、わかりやすくしたものが形式としてのマナーである。それらは一般常識として、あるいは特殊な知恵の体系として世の中に存在しているが、普通これらは、身に付けるまでは意義を自覚出来ず、苦痛な場合も多い。
日本においては20世紀末-21世紀初頭にかけて必要性が意識されはじめた。 現在多くのマナーに関する書籍が出版されている。また、各地でマナー教室も開かれている。
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[編集] 整った形式が存在しているマナー例
以下の例は、日本において整った形式が存在していると見られるマナー例である。日本以外の国においてはマナー違反になる場合、日本においても地域やコミュニティによってはマナー違反となる場合もあるので、注意されたし。
[編集] 食事のときのマナー
- 箸のマナー(やってはいけない行為)
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- 握り箸
- 手指を握り、拳でお箸を扱わない。
- 渡し箸
- お碗の淵にお箸を乗せない。
- 刺し箸
- 食べる物にお箸を突き刺さない。
- 迷い箸
- お箸を卓上で彷徨わせない。
- 違い箸
- 長さの違うお箸を使わない。
- その他は嫌い箸を参照のこと。
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- ナイフとフォークのマナー
- 通例、フランス料理店などで食事をするとナイフとフォークが出される。
- このとき右手にナイフを持ち、左手にフォークを持つ。フォークとナイフは外側に置かれている物から使う。
- 皿の上にナイフとフォークをクロスさせて(または「ハ」の字を描くように)置くとまだ下げてはいけないの印、並べて置くともう下げてよいの印。
- 他にも、スープを音を立てて吸わない、皿に口をつけない、物を噛む時に喋ってはいけない、など。
[編集] 茶菓の出し方
基本的には両手で出すが、以下の手順で出す。
[編集] 一般的なマナー
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- レディーファースト
- 欧米諸国、特にイギリスから伝わったマナー。女性をさまざまな場面で優先的に扱うこと。ただし、これは男性が自主的に気をつけるものであって、女性自身が大きな顔をしてよい、という意味ではない。
- 乗り物におけるマナー
- 一般歩道でのマナー
- 歩行者は右側通行。
- 自転車は原則左側通行で、交通が激しくない道では、原則歩道ではなく、車道を走行する。
- 歩き煙草をしない。(地域によっては法令/条例による取締りがある)
- ゴミのポイ捨てをしない。(地域によっては法令/条例による取締りがある)
- 人の多い歩道ではなるべく1列で歩く。
- 人の多い駅前などの道路では途中で立ち止まったりせず周りのペースに合わせる
- 歩きながら本を読んだり電子機器をいじったりしない。
- 道端に座り込まない。
[編集] マナーの問題点
マナーとはその集団の成員が快適に生活していくための一手段に過ぎない。しかし、時にマナーは絶対視され、その行為が好ましくないから不快に感じるのではなく、マナーを守らないからという理由でその行為が不快に感じられることがある。また時に、文化などによるマナーの違いを理解せず、自身のマナーを他者に押しつける行為や、マナーを守らないからといってその人間の全人格を否定するような言動が見られるが、これらは「他者を気遣う」というマナーの本質から外れた行為である。
例えば、よく誤解されがちなマナーは「エスカレーターは歩く人のために(中部地方以東では)右側をあける」「電車の中で物を食べてはいけない」「道端に座り込んではいけない」などである。
まず、エスカレーターはそもそも歩くものではない。エスカレーターを歩くというのは危険な行為であり、右側を空けるよう推奨するのは あまりよくない。
また「電車の中で物を食べてはいけない」であるが、新橋-横浜間に鉄道が開通されたのと同じような時期に、すでに弁当が売り出された。 (おにぎりとたくあん) もともと電車の中というのは食事をしていい場所であったが、近年の都市化により、「混雑した車内では食事は控える」というのが一般的なマナーとなっている。しかしこれは「電車内で食事をしてはいけない」ということではない。現に地方や田舎では、電車の中で物を食べるのは一般的に見られる光景である。
「道端に座り込んではいけない」というのも、欧米諸国や日本特有のマナーであるといえる。そもそも日本でも、戦前や戦後すぐ人々が道端に座り込むという光景が日常的に見られた。日本も都市化し生活が欧米化したため「道端に座り込むのは美しくない」というのが一般的な認識としてひろまったが、農村社会では道端に座り込むというのは日常的に見られた風景である。