神戸連続児童殺傷事件
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神戸連続児童殺傷事件（こうべれんぞくじどうさっしょうじけん）は1997年に兵庫県神戸市で発生した連続殺人事件。
小学生が殺害されて、遺体の一部が「声明文」とともに中学校の正門前に置かれたうえ、新聞社に「挑戦状」が郵送されるなどした事件である。事件の残虐性に加えて、容疑者として逮捕されたのが14才の少年（少年Aとする）であったことも、社会に強い衝撃を与えた。
逮捕された少年の自白によって、数ヶ月前から起こっていた通り魔殺人事件（いずれも児童が被害者）と関連付けられて、連続児童殺傷事件として扱われた。逮捕された少年が犯行を認めているものの、物的証拠には乏しい上に不自然な点が多く、複数の大人による犯行ではないか等、冤罪を指摘する声も上がっている。
また、この事件を境に、少年事件やそれに関連する法整備、少年事件における「マスコミの対応」などが大きく注目されるようになった。
また、犯行の声明文から容疑者の少年を「酒鬼薔薇聖斗」と称したり、俗に「酒鬼薔薇聖斗事件」とも言われる。
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[編集] 事件の経過
神戸連続児童殺傷事件は3つの事件から構成される。しかし、その中で最もこの事件を象徴しているのは、第三の事件である。劇場型殺人という特殊性から、マスコミがこぞって報道し、全国民の関心を引いたのも、この第三の事件の報道からである。
[編集] 第一の事件
- 1997年2月10日午後4時頃、神戸市の路上で小学生の女児二人が少年Aにハンマーで殴られ、一人は重傷を負った。
- 女児はその際、犯人がブレザーを着て学生用のかばんを持っていたのを目撃しており、この事を知った父親は、少年Aが当時通っていた中学校に対し、犯人がわかるかもしれないので生徒の写真を見せてほしいと連絡。しかし中学校側は警察を通して欲しいとして拒否したため、父親は警察に被害届を出して生徒写真の閲覧を再度要求したものの、結局見せてはもらえなかった。このことからAの逮捕後、「学校の対応が犯人を庇っていた」として学校に対する批判が起こった。
[編集] 第二の事件
- 3月16日午後0時25分、神戸市で少年Aは、小学生の女児に、手を洗える場所はないかと尋ね、学校に案内してもらったのち「お礼を言いたいのでこっちを向いて下さい」（少年Aの日記による）と言い、振り返った女児を八角げんのう（金槌の一種）で殴りつけて逃走した。女児は病院に運ばれたが、3月27日に脳挫傷で死亡した。
- 午後0時35分頃、逃走中の少年Aは別の小学生の女児を見つけ、小刀（刃渡り13センチ）で腹を刺して2週間の怪我を負わせた。
[編集] 第三の事件
- 5月24日午後、神戸市に住む少年Bが殺害される。少年Bは祖父の家に行くと言って昼過ぎに家を出た後、少年Aと偶然出会う。その際、少年Aは少年Bを「青い色の亀がいる」と近所の高台に誘い出し、その場で絞殺し遺体を隠した。
- 5月25日、少年Aは再び殺害現場を訪れ、遺体の首を切断し、頭部を家に持ち帰った。
- 5月26日、行方不明になった少年Bを警察が捜索するが発見できず。
- 5月27日早朝、少年Bの頭部が市内の中学校正門前で発見される。頭部には二枚の紙片が添えられており、内容は犯行についての声明文であった。この中で少年Aは自らを「酒鬼薔薇聖斗」（さかきばら・せいと）と呼び、非常に挑戦的な文言を綴っている。
- 6月4日、神戸新聞社宛てに「酒鬼薔薇聖斗」から、第二の文章が届く。
- 6月28日、少年A逮捕。彼の関与はかなり早くから取り沙汰されていたという。
[編集] その後の少年の処遇
- 1997年10月13日、神戸家庭裁判所は少年Aを医療少年院送致が相当と判断。少年Aは関東医療少年院に移される。
- 2001年11月27日、治療が順調であるとの判断から、少年は東北中等少年院に移る。
- 2002年7月、神戸家庭裁判所は、少年の治療は順調としながらも、なお綿密な教育が必要として、収容継続を決定。
- 2004年3月10日、成人した加害男性は少年院を退院し、社会復帰への道を踏み出した。この仮退院の情報は法務省を通じて、被害者の家族に連絡された。
[編集] マスコミ報道の様子
被害少年の首が学校の校門にさらされるという猟奇的な事件であったことから、マスコミは連日事件の報道を行った。映画「羊たちの沈黙」でアメリカで開発されたプロファイリング捜査法が一般の知るところとなったため、マスコミ各社は犯罪心理学者や作家にプロファイリングを行わせたが、いずれのプロファイリングで出された犯人像も東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人像（若年層成人男性、オタク、車を用いる）の域に限られており、予想外の少年の逮捕はマスコミの報道を加熱させるのみであった。
この後、新潮社の『FOCUS』などの複数の雑誌は少年法に反し、加害少年の顔写真や氏名を掲載したため、法務省が削除を要請するなど、少年の身元をめぐる攻防が新たな社会問題となった。しかし、一度情報が漏れてしまうと、それらはインターネットなどを通じて容易に拡散するため、これを収める事は非常に難しいということが明らかになった。
また新聞各社は加害少年の誕生日を特定されないよう、誕生日の前後は年齢の掲載をやめていたが、あるテレビのワイドショーが年齢を報道し続けたため、誕生日が判明してしまった。
[編集] 冤罪説
数多くの冤罪事件を手がけてきた後藤昌次郎弁護士や、『神戸事件を読む―酒鬼薔薇は本当に少年Aなのか?』（鹿砦社）の著者の熊谷英彦や、少年Aが在籍していた中学校の校長（当時）の岩田信義を始めとする人々は、少年Aは冤罪であると主張しており、捜査当局の発表や判決の矛盾を指摘している。特に熊谷の著作は冤罪主張派にとって重要視されている。冤罪説の指摘のうち主なものは以下である。
- 筆跡鑑定の結果は、声明文が少年Aによって書かれたものだと断定はできないというものであった。
- 取り調べにおいて警察官は、筆跡鑑定によって声明文は少年Aによって書かれたものだという結果が出たかのように説明し、それを受けて少年Aは犯行についての自白を始めた（違法な取り調べであり、家裁審判においてこの自白調書は証拠として採用されなかった）。
- 少年Aの素行についての証言が逮捕直後から多数報道されていたが、調査してみると証言の多くは伝聞情報ばかりで直接の目撃証言が確認できない。
だが、これらはあくまで警察の捜査の杜撰さを指摘するにとどまっており、逆に真犯人の存在や犯行不可能の立証などの冤罪を示す証拠は提示できていないため、未だに世間一般の支持を得られていない。
冤罪説への反論として、少年Aの母親が2002年5月に少年Aと面会した際、「冤罪ということはありえへんの?」と問いかけた際、それに対し少年は「ありえへん」と否定し、犯行を認めていることを挙げる人々も多い。
少年A本人が現在に至るまで自分の犯行であると認めていることについては、少年院の教育で犯人と思い込むようになったなど様々な仮説が冤罪主張派から提示されているが、いずれも憶測の域を出ていないのが実情である。
[編集] 関連書籍
- 朝日新聞社
- 『暗い森―神戸連続児童殺傷事件』
- 朝日新聞大阪社会部編 ISBN 4022572426(1998年4月5日出版)
- 元就出版社
- 『酒鬼薔薇聖斗の告白―悪魔に憑かれたとき』
- 河信基著 ISBN 4906631355(1998年5月28日出版)
- 早稲田出版
- 『真相―神戸市小学生惨殺遺棄事件』
- 小林紀興 (編集), 安倍治夫 著 ISBN 4898271944 (1998/10)
- 新潮社新潮文庫
- 『地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所』
- 高山文彦著 ISBN 4101304319(2001年5月1日出版)
- 鹿砦社
- 『神戸事件を読む―酒鬼薔薇は本当に少年Ａなのか？』
- 熊谷英彦著 ISBN 4846304140(2001年5月25日出版)
- 五月書房
- 『校長は見た！酒鬼薔薇事件の「深層」』
- 岩田信義著ISBN 4772703497(2001年5月28日出版)
- 文藝春秋文春文庫
- 『「少年Ａ」この子を生んで… 父と母悔恨の手記』
- 「少年A」の父母著 ISBN 4167656094(2001年7月出版)
- 宝島社
- 『「酒鬼薔薇聖斗」への手紙―生きていく人として』
- 今一生編 ISBN 4796635947(2003年10月15日出版)
- 現代人文社；大学図書〔発売〕
- 『神戸酒鬼薔薇事件にこだわる理由―「A少年」は犯人か』
- 後藤昌次郎著 ISBN 4877982396(2005年1月30日出版)
[編集] 関連項目
[編集] 事件そのものに対しての関連
[編集] その他
- 不謹慎ゲーム
- 加害者を登場させる作品が問題に。
- 『GANTZ』奥浩哉
- 『軍鶏 (漫画)』橋本以蔵原作・たなか亜希夫画
- 『ゴールドラッシュ』柳美里
- 『アイシテル～海容～』伊藤実
- この事件または少年Ａをモチーフとして登場させる文学及びマンガ作品も多い。
