甘寧

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甘寧（かんねい、Gan Ning 生没年不詳）は、中国の後漢末、三国時代の呉の武将。字は興覇（こうは）。益州の巴郡臨江県（現在の四川省忠県）出身。短気で粗暴なところもあったが、武芸に秀で仁義に厚い、呉で屈指の猛将。甘瓌・甘述の父。曾孫の甘卓は東晋に仕えた。

若いころは長江沿岸を荒らしまわる「錦帆賊」と呼ばれる水賊であった。水賊時代、いつも腰に鈴を付けていたことから”鈴の甘寧”といわれたという逸話も残っている。のち、前非を悔いて劉表・黄祖に仕え、黄祖のもとでは孫権軍の凌操を討ち取るなどの手柄を立てる。しかし黄祖は、出自にこだわって甘寧を重用せず、不満を募らせた甘寧は都督である蘇飛の助けで黄祖の下を出奔し、呂蒙を通じて孫権に仕えることとなった。この際甘寧は、まず荊州を押さえ、さらに益州をも攻め天下に覇を唱えるという「天下二分の計」ともいえる戦略を提言して孫権に気に入られ、黄祖攻めの副先鋒を命じられる。この戦いでは江夏で黄祖を討ち、さらに恩人である蘇飛が生け捕られると助命を嘆願し容れられている。しかし祝勝の酒宴の最中、甘寧を仇と狙う凌操の子・凌統に斬りつけられる。その場は事無きを得るものの凌統の恨みは深く、孫権は両者を引き離すため、甘寧に夏口の守備を命じた。

やがて曹操が荊州に進出すると、甘寧は対決を主張。赤壁の戦いでは偽って投降してきた蔡中を利用して敵陣深くに潜り込んで火を放ち、さらに逃げる曹操に追いすがり損害を与えた。さらにその後の荊州攻略でも彝稜（いりょう）の奪取などで功績を上げた。

のち曹操の漢中侵攻の隙を突いて魏領への侵攻が行われ、これに従軍。逍遥津の戦いでは先鋒を務めるものの敗北し、さらに魏軍に援軍が到着し味方が意気消沈するところ、甘寧は精兵100騎を率いて夜襲を敢行する。ガチョウの羽を友軍の目印として敵陣を縦横無尽に暴れまわり、魏軍を大混乱に陥れた。敵軍が同士討ちを始めるのを尻目に、一騎も損害を出すことなく悠々と帰陣した甘寧を、孫権は「魏に張遼あらば、呉には甘興覇あり」と、その武勇と胆力を絶賛した。

『三国志』（正史）では病没となっているが、『三国志演義』では、夷陵の戦いにおいて体調不良のためか、沙摩柯の矢を受けて戦死している。濡須口の戦いで自身を仇と狙う凌統の危機を救い、凌統はかつての恨みを水に流し二人は固い親交を結んだという話があるが、事実かどうかは不明である（正史では孫権は両者を決して同じ地に配置しなかったが、これはその機会が無かったとも推測されるため、真偽の程は定かでない）。子の甘瓌は罪を犯し、会稽に流罪とされたあとに病死した。

甘寧は若い頃から遊侠を好み、配下ともども豪奢な出で立ちで街を練り歩き、有力者に出会ってその人物が歓待すれば喜んだが、もてなさなければ邸を打ち壊したという、根っからの暴れ者だった。呉の武将となった後も、その荒々しい性格は収まらず、たびたび些細な事で人を斬り殺しては、上司である呂蒙に戒められていた。 あるとき、甘寧の料理人が小さな失敗をして、呂蒙のもとへ逃げ込んだ。呂蒙は甘寧の激しい性格を知っていたので、決して料理人を殺さない、と誓わせ、口添えした上で料理人を帰した。ところが、甘寧はこの料理人を樹に縛りつけた上で射殺してしまった。これには呂蒙も激怒し、甘寧を処罰しようとしたところ、呂蒙の母は「天下の大局は難しいところに来ています。内輪もめをしている場合ではありますまい」と諌め、事なきを得たという。

[編集] 関連項目

• 南京民俗博物館 - 別名「甘熙故居」。甘熙は甘寧の子孫だとされる。