潮汐
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潮汐(ちょうせき)とは、海水面の高さが周期的に昇降する現象のことである。単に潮(しお)とも言い、「潮」は朝のしお、「汐」は夕方のしおを指す。意外に知られていないが、日本では琵琶湖、霞ヶ浦ほどのおおきさの湖沼でもおこる。
海水面が最も低くなる時を引き潮(ひきしお)・干潮(かんちょう)、最も高くなる時を満ち潮(みちしお)・満潮(まんちょう)という。干潮と満潮とを合わせて干満(かんまん)という。
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[編集] 原因
まず、月が地球に及ぼす潮汐について説明する(以下の説明は、英語版の Alternative explanation にあたる)。
月と地球とは、両者の重心を結ぶ直線上の一点 O(共通重心)を中心として互いに回転運動(公転)をしている。この共通重心は、地球の重心(ほぼ中心)から約4,600kmの位置、すなわち地球の内部にある(地球の半径は約6,400km)。
自転を考えず、共通重心まわりの運動のみを、地球の極の方から見ると右図のようになっており、この運動による回転速度は地球上のどの点でも等しくなっている。よって、この運動によって生じる遠心力も、地球上のどこでも同じ大きさとなっている(向きは、そのときに月がある方向と反対の向き)。
一方、月が地球に及ぼす引力は、月からの距離によってその大きさが異なる。地球上では、月に近い場所では大きく、月から遠い場所では小さい(向きは、月のある方向の向き)。
こうして、地球上のどこでも一定な「共通重心まわりの運動による遠心力」と、場所によって異なる「月が地球に及ぼす引力」との合力は、当然、場所によって異なることとなり、この合力を潮汐力または起潮力という。この潮汐力により、月に面した地表とその反対側の地表の水面が上昇する。
太陽の場合にも、同じ論理による。ただし地球と太陽の共通重心は、ほぼ太陽の重心と同じ位置にある。
引力は天体からの距離の2乗に反比例するが、潮汐力は3乗に反比例する。また、これらの力は天体の質量に比例する。地球から太陽までの距離は月までの距離の約390倍あり、太陽の質量は月の質量の約2700万倍ある。これから計算すると、太陽の引力は月の引力の約180倍であるが、太陽の潮汐力は月の潮汐力の約0.45倍にしかならず、月の潮汐力の影響が大きい。月の潮汐力を太陰潮、太陽の潮汐力を太陽潮という。
[編集] 実際の潮汐
上記のように潮汐の原因は天体運動によるものであるが、実際の満潮・干潮は、海水の慣性や、海流、湾岸の形状など種々の要因によって、天文学的に導かれる時刻とずれが生じる。
垂直・水平それぞれの方向に、干満の差が大きい海岸、小さい海岸がある。砂地のような傾斜のなだらかな場所では、水平方向にして数百~数千メートルにも及び海岸線が変化することがあり、干潟として豊かな生態系がはぐくまれている。
[編集] 月の周期
朔(旧暦1日)や満月(15日)の頃には、月・太陽・地球が一直線に並び、太陰潮と太陽潮とが重り合うため、高低差が大きい大潮(おおしお)となる。
上弦(8日)や下弦(23日)の頃には、月・地球・太陽が直角に並び、太陰潮と太陽潮とが打ち消し合うため小潮(こしお)となる。
小潮の末期の、上弦・下弦を1~2日過ぎた頃(10日・25日頃)には、干満の差が小潮よりもさらに小さくなり、干満の変化がゆるやかに長く続くように見える。これを長潮(ながしお)という。
長潮を過ぎると、次第に干満の差が大きくなってゆく。この状態を「潮が返る」と言い、長潮の翌日のことを若潮(わかしお)という。
大潮と小潮の間の期間を中潮(なかしお)という。
現在では、月と太陽の位相(黄経の差)によって、以下のように定義されている。
- 348~36度:大潮
- 36~72度:中潮
- 72~108度:小潮
- 108~120度:長潮
- 120~132度:若潮
- 132~168度:中潮
- 168~216度:大潮
- 216~252度:中潮
- 252~288度:小潮
- 288~300度:長潮
- 300~312度:若潮
- 312~348度:中潮
[編集] 日の周期
ある地点での干満は通常1日2回ずつあり、干潮から次の干潮まで(あるいは満潮から次の満潮まで)の周期は平均約12時間25分ある。よって、干満の時刻は毎日約50分ずつ遅れてゆくことになる。
なお、干潮、満潮の時刻は、海洋や港湾の海水の液体の固有振動のため、月や太陽が最大高度になって潮汐力が極大になる時刻とは一致しない。
[編集] 生物との関係
潮の満ち引きは、海などにかかわる事であるため、当然海に住む生き物達にも大きな影響を与える。総じて彼らは大潮(特に満月)の時に産卵することが知られている。また、大潮になると魚類の活性が上がるとも言われており、アメリカで釣り大会を行う場合は大潮の週末と決まっている。なお釣具店にはほぼ必ず潮見表が置いてある。