混成軌道
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混成軌道(こんせいきどう、hybridized orbital)とは、原子価結合法で原子価状態の軌道関数を表わす方法であり、この概念により第2周期以降の原子の結合角が原子価状態の軌道関数と関連付けて説明することができるようになる。
言い換えると次のようになる、分子の構造は各原子と化学結合から成り立っているので、化学結合の構造が原子核と電子との量子力学でどのように解釈されるかは分子の挙動を理論的に解明してゆく上で基盤となるものである。化学結合を量子力学で扱う場合、分子軌道法による方法と原子価結合法による方法とがある。前者は分子の原子核と電子との全体を一括して取り扱う方法であるのに対して、原子価軌道法では分子を、まず化学結合のところで切り分けた原子価状態と呼ばれる個々の原子と価電子の状態を想定する。次の段階として、分子の全体像を原子価状態を組み立てることで明らかにしてゆく方法である。具体的には個々の原子の軌道や混成軌道をσ結合やπ結合の概念を使って組み上げることで、共有結合で構成された分子像を説明してゆくことになる。それ故、原子軌道から原子価状態を説明づける際に利用する混成軌道の概念は原子価軌道法の根本に位置すると考えられる。
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[編集] 混成軌道と原子価状態
次に炭素を例にとって、原子価状態の扱いかたを吟味してゆく。
基底状態の電子配置は[He] 2s22p2である。そうすると原子価状態の軌道関数の特性から炭素の結合には2s軌道に帰結するものと、2p軌道に帰結するもの二種類存在することが示唆される。しかし、実際にはダイヤモンドの結晶構造やメタンの構造からは1種類の結合しか存在しないと考えられる。
もともと、原子価結合法では水素分子の全電子の状態を表す際に、原子軌道の状態の重ね合わせを原子軌道の一次結合で定式化した。この場合も原子価状態の軌道関数も、2s軌道と2p軌道の重ね合せで生成する混成軌道関数で定式化することが可能である。そして実際には、混成軌道関数で表される原子価状態は共有結合の方向性とも矛盾しない。
混成軌道の定式化には色々な組み合わせが可能であり、生成した混成軌道は元となった原子軌道(s軌道、p軌道)の名称を使って、sp3軌道(関数)、sp2軌道(関数)、sp軌道(関数)、spd軌道(関数)と呼ばれる。
そして、重ね合わせが可能になるためには原子軌道のエネルギー準位が同程度であることが必要な為、もっぱら主量子数が同じ原子軌道間で混成軌道が生成する。そしてd軌道などについては同一主量子数の軌道よりも、1つ主量子数が大きい原子軌道の方がエネルギー準位差が小さいのでそちらの方の原子軌道と混成することもある。
このように第2周期以降の原子は複数の混成軌道を取ることができ、有機分子や金属錯体などの分子構造の多様性をもたらしている。しかし実際の分子では必ずしも理論的な混成軌道とは異なる結合角を取る場合も多く、非共有電子対が混成軌道に及ぼす立体的な影響は原子価殻電子対反発則として知られている。
[編集] sp3混成軌道関数
1つのs軌道と3つのp軌道の重ね合わせにより4つの混成軌道が定式化され、sp3混成軌道関数と呼ばれる。つぎに炭素の場合の例を示す。
これら4つの混成軌道が表す方向性は正四面体の頂点方向と一致し、メタンの結合角109度とも合致する。
[編集] sp2混成軌道関数
1つのs軌道と2つのp軌道の重ね合わせにより3つの混成軌道が定式化され、sp2混成軌道関数と呼ばれる。つぎに炭素の場合の例を示す。混成に加わらない軌道(2pz)をz軸に採ると、
これら3つの混成軌道が表す方向性はx-y平面上に対称軸120度を成して交差する軌道関数に相当し、エチレンの二重結合炭素の結合角とも合致する。
[編集] sp混成軌道
1つのs軌道と1つのp軌道の重ね合わせにより2つの混成軌道が定式化され、sp混成軌道関数と呼ばれる。つぎに炭素の場合の例を示す。混成に加わる軌道(2px)の対象軸をx軸に採ると、
となり、x軸上で直線的に対向する2つの軌道関数に相当し、アセチレンが直線状分子であることと合致する。
[編集] その他の混成軌道
s軌道、p軌道以外にもd軌道を含めた混成軌道が知られている。
[編集] 関連項目
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