海綿
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海綿動物門 Porifera |
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海綿(かいめん)とは海綿動物門 (Porifera) に属する動物の総称である。熱帯の海を中心に世界中のあらゆる海に生息する。淡水に生息する種も存在する。壺状、扇状、杯状など様々な形態をもつ種が存在し、同種であっても生息環境によって形状が異なる場合もある。大きさは数mmから1mを越すもの(南極海に生息する樽状の海綿Scolymastra joubini)まで多様である。多細胞生物であるが、細胞間の結合はゆるく、はっきりとした器官等の分化は見られない。細かい網目状の海綿質繊維からなる骨格は、スポンジとして化粧用や沐浴用に用いられる。
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[編集] 生物学的特徴
海綿は表面に小孔と呼ばれる数多くの孔をもち、ここから水と食物をとりこんでいる。また、大孔とよばれる開口部が上部にあり、ここから水を吐き出している。胃腔と呼ばれる内側の空洞部には鞭毛をそなえた襟細胞が多数あり、この鞭毛によって小孔から大孔への水の循環を引き起こしている。
生殖は無性生殖と有性生殖の双方を行う。無性生殖として体表から芽が成長して繁殖するほか、芽球と呼ばれる芽を体外に放出して繁殖する種もある。有性生殖も多様であり、雌雄同体と雌雄異体の双方の種がある。多くの種では受精後、幼生になるまでは親の体内で育つ胎生であるが、卵生の種も存在する。
発生の過程において、外胚葉や内胚葉といった胚葉の形成は起こらない。また、多細胞でありながら明瞭な器官の分化が見られない。このため、海綿動物門および平板動物門(同様に組織の分化が見られない)は側生動物(Prazoa)として、器官系が分化したその他の動物である真正後生動物(Eumetazoa)とは 区別されている。襟細胞が襟に囲まれた鞭毛をもつことから、単細胞生物の襟鞭毛虫(えりべんもうちゅう)と海綿動物との類似性が指摘されている。このことから、以前は海綿動物は襟鞭毛虫の群体から派生したもので、多細胞動物とは系統が異なるものではないかとも言われた。しかしながら、海綿動物にはホメオボックス遺伝子、TGB-β遺伝子など、多細胞生物としての分化、発生に関わる遺伝子群をすでに有していることが明らかになってきている。
[編集] 後生動物との系統関係
先述のように、この群が他の後生動物とは別の系統に属するとの説があったが、分子遺伝学等の情報から、多細胞動物は襟鞭毛虫の群体が起源であると考えられるようになり、海綿動物は最も原始的な多細胞動物であるという説があらためて提示されている。そうであれば、動物は総て祖先を共有する単系統群であると考えられている。
しかしながら、最古の多細胞動物の化石であるエディアカラ動物群からは刺胞動物によく似た生物が見つかっていることから、 刺胞動物の幼生に類似した単細胞生物の繊毛虫のようなものが多細胞動物の起源であるという考えも残っている。この場合、多細胞動物は異なる2系統の祖先を持つことになる。
[編集] 分類
- 石灰海綿綱 Calcarea
- 骨格の主成分は炭酸カルシウムで、総て海産の海綿動物である。
- 普通海綿綱 Demospongiae
- 現生する海綿の95%この綱に属している。骨格はかなり柔軟性のある海綿質繊維の「スポンジン」で構成されている。スポンジンの主成分は、他の総ての動物がもつ細胞外マトリックスであるコラーゲンの祖先物質である。
- 六放海綿綱 Hexactinellida
- ガラス海綿ともよばれ、六放射星状のケイ酸質の骨片を主とする骨格を持つ。深海の砂地などに生息している。
- 硬骨海綿綱 Sclerospongiae
- 炭酸カルシウムの骨格の周囲をケイ酸質の骨片と海綿組織が取巻いている。多くが化石種である。
[編集] 人間との関わり
普通海綿綱に属する6種の海綿は海綿質繊維だけからなり、かたい骨片をもたないため、スポンジとして化粧用や沐浴用に用いられる。地中海産、紅海産の海綿が柔らかく、品質が高いとされる。海底で捕獲した海綿の組織を腐敗させ、のこった骨格を洗い流したものが、スポンジとして店頭でみられる海綿となる。日本では、ガラス海綿の1種であるカイロウドウケツなどが、その姿のおもしろさなどから飾りなどに使われた。
海綿は水中に浮遊する食物を濾過することで捕食するため、水質汚濁の原因となる水中の微生物や有機物を除去する役割を果たしている。カスピ海では海綿を水質浄化に用いている。
[編集] 参考文献
- 『無脊椎動物の多様性と系統』 裳華房
- 『シリーズ進化学4 発生と進化』 岩波書店
- 『図説・生物界ガイド 五つの王国』 L.マルグリス,KV.シュヴァルツ 著 日経サイエンス社