水中翼船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
水中翼船(すいちゅうよくせん)または、ハイドロフォイル(Hydrofoil) は、船腹より下に「水中翼」(すいちゅうよく)と呼ばれる構造物を持った船。
目次 |
[編集] 概要
低速で水上を航行する際には船体を水面下に浸けて航行するが、高速航行をする際には、抵抗の軽減のために水中翼から得られる揚力で海面上に船体を持ち上げ、水中翼のみが水中に浸っている形になる。
水中翼船には構造や推進方式が様々あり、スクリュー駆動による半没型水中翼船、アメリカ・ボーイング社(日本では川崎重工業の子会社・川重ジェイ・ピイ・エスがライセンスを取得)の「ジェットフォイル」等に見られるウォータージェット推進式の全没型水中翼船、日立造船の「スーパージェット」等に見られるジェット推進式の全没双胴型水中翼船(ハイブリッド式)などがある。
[編集] 日本国内の水中翼船
日本では1960年代に商業用半没型水中翼船が相次いで登場している。新明和産業の小型船(約15人乗)、三菱造船下関の小型・中型船(80人乗)、日立造船神奈川の小型~大型船(130人乗)がそれである。
とりわけ、シュプラマル社のライセンス契約により水中翼船を建造していた日立造船神奈川は、型式PT20(70人乗)やPT50(130人乗)を中心に50隻ほどの水中翼船を生産し、これらは瀬戸内海を中心に運航された。代表的な運航会社として、瀬戸内海汽船、石崎汽船、阪急汽船、名鉄海上観光船等がある。また東海汽船による東京湾横断航路でも使われていたため首都圏でも見ることができた。
しかし、低燃費で高速航行が可能な反面、乗り心地が悪い上に維持コストが高く、特殊な接岸施設のない港に入港することができない等の欠点があり、次第に他の高速船やジェットフォイルにシェアを奪われていった。
1999年5月9日、石崎汽船の松山~尾道航路の最終運航を以って、半没型水中翼船は国内定期航路から姿を消した。この航路で1997年12月まで活躍した「金星」(1966年日立神奈川製、PT20)が、広島県呉市で2005年(平成17年)に開館した海事博物館(大和ミュージアム)に屋外展示保存されている。
その後日本国内ではジェットフォイルが多く利用されている。これは、高速軍用艇向けに開発された技術を民間移転したもので、折りたたみ式の水中翼を持つ水中翼船の一種であり、コンピュータによる姿勢制御装置を持ち、耐荒天性能や乗り心地を改善している。
海上自衛隊は1993年から95年にかけて、全没型水中翼式の1号型ミサイル艇(PG)3隻を建造した。これもジェットフォイルをベースとしたイタリア海軍のスパルヴィエロ級ミサイル艇をタイプシップとしたものである。
[編集] 主なメーカー
[編集] 航行航路・保有会社
- 佐渡汽船
- 「ぎんが」(BJ15)・「つばさ」(KJ01)・「すいせい」(KJ10)(川崎)
- 東海汽船
- 「セブンアイランド愛」(BJ17)・「セブンアイランド虹」(BJ19)・「セブンアイランド夢」(BJ20)(川崎)
- 隠岐汽船
- 「レインボー」(三菱)・「レインボー2」(三菱)
- JR九州高速船
- 「ビートル」(KJ05)・「ビートル2」(KJ08)・「ビートル3」(KJ03)・「ジェビ2」(KJ14)(川崎)
- 九州郵船
- 「ヴィーナス」(KJ09)・「ヴィーナス2」(BJ26)(川崎)
- 九州商船
- 「ぺがさす」(KJ04)・「ぺがさす2」(KJ07)(川崎)
- 鹿児島商船(いわさきコーポレーション)
- 「トッピー1」(KJ02)・「トッピー2」(KJ12)・「トッピー3」(KJ13)・「トッピー7」(BJ11)(川崎)
- コスモライン(市丸グループ)
- 「ロケット」(KJ15)・「ロケット2」(BJ23)・「ロケット3」(KJ06)(川崎)