樟脳
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樟脳 | |
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![]() D体 |
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一般情報 | |
IUPAC名 | ボルナン-2-オン(慣用名に由来)、1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン(系統名) |
別名 | カンフル、カンファー |
分子式 | C10H16O |
分子量 | 152.23 g/mol |
組成式 | |
式量 | g/mol |
形状 | 無色固体 |
CAS登録番号 | [76-22-2] [464-49-3](D体) [464-48-2](L体) [21368-68-3](ラセミ体) |
SMILES | CC1(C)C2(C)C(CC1CC2)=O |
性質 | |
密度と相 | 0.990 g/cm3, 固体 |
相対蒸気密度 | (空気 = 1) |
水への溶解度 | 0.12 g/100 mL |
への溶解度 | |
への溶解度 | |
融点 | 180 ℃ |
沸点 | 208 ℃ |
昇華点 | ℃ |
pKa | |
pKb | |
旋光度 [α]D | +41 – +43 (D体、c = 10 in エタノール、25 ℃) |
粘度 | |
屈折率 | |
出典 |
樟脳(しょうのう)とは分子式 C10H16O で表される二環性モノテルペンケトンの一種。カンフルあるいはカンファー (camphor) と呼ばれることもある。IUPAC命名法による系統名は 1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、また、母骨格のボルナンが同命名法における許容慣用名であるため、そこからボルナン-2-オン (bornan-2-one)、2-ボルナノンなどの名称が誘導される。ほかの別名は、1,7,7-トリメチルノルカンファー、2-カンファノン、2-カンフォノン、またはカラドリル。
[編集] 性質と存在
樟脳は融点 180 ℃、沸点 208 ℃ の白色半透明のロウ状の昇華性結晶であり、強い刺すような香りを持つ。クスノキの精油の主成分であり、他にも各種の精油から見出されている。クスノキはアジア、特にボルネオに産することから、樟脳の別名の起源となっている。
[編集] 製造
クスノキの葉や枝などのチップを水蒸気蒸留すると結晶として得ることができる。化学合成品はマツの精油などから得られる α-ピネンより合成される。
クスノキの中に含まれている樟脳は D体だが、化学合成されたものはラセミ体である。
[編集] 用途
血行促進作用や鎮痛作用、消炎作用などがあるために主に外用医薬品の成分として使用されている。かつては強心剤としても使用されていたため、現在でも駄目になりかけた物事を復活させるために使用される手段を比喩的に「カンフル剤」と呼ぶことがある。その他にも香料の成分としても使用されている。 また人形や衣服の防虫剤、また防腐剤、花火の添加剤としても使用されている。樟脳は皮膚から容易に吸収され、そのときにメントールと同じようなスーッとする感じをもたらし、わずかに局部麻酔のような働きがある。しかし、飲み込んだ場合には有毒であり、発作、精神錯乱、炎症および神経と筋肉の障害の原因になりうる。
また、かつてはセルロイドの可塑剤として非常に大量に使用されていた。日本は台湾においてクスノキのプランテーションを経営していたため、20世紀はじめには世界最大の生産国であった。しかし1920年代に入ると化学合成品が開発されて押されるようになり、やがてセルロイドに代わるプラスチックが出現してこの用途はほとんど無くなった。
樹木由来ではあるが樟脳でない物質が、ときとして誤って樟脳として販売されていることがある。
日本ではかつて日本専売公社によって専売されていた。
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