松阪牛
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松阪牛(まつさかうし)は三重県松阪市及びその近郊で肥育される黒毛和牛。霜降りに代表される高級牛肉として知られる。「まつさかうし、まつざかうし、まつさかぎゅう、まつざかぎゅう」と様々に呼ばれるが、「まつさかうし」が公式の呼び名。
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[編集] 歴史
江戸時代には、農耕用の役牛として但馬国(兵庫県但馬地方)の雌牛を飼育していた。明治になり、西洋文化の影響で牛肉食が始まると、遅くとも1905年頃までには、農耕用を退役した牛が肉牛として売られるようになった。その後役牛から肉牛へのシフトが進み、1935年に東京で行なわれた『全国肉用牛畜産博覧会』で名誉賞を受賞したことから全国的に知られるようになった。戦後は1949年に松阪肉牛共進会が開始され、優秀な肉牛が出品されて松阪牛の名声を高めている。2002年には、BSEや産地偽装事件への対応のため「松阪牛個体識別管理システム」が発足し、これに加入した肉牛を松阪牛としている。
[編集] 松阪牛の定義
松阪牛とは「黒毛和種」の「未経産(子を産んでいない)雌牛」で2004年11月1日時点での松阪市を中心とした旧22市町村(平成の大合併で市町村の数は変わっているが、肥育エリアであった市町村と肥育エリアではなかった市町村が合併したりしたためこのような定義の仕方をしている)及び旧松阪肉牛生産者の会会員の元で肥育され、松阪牛個体識別管理システムに登録している牛をいう。現在では素牛(もとうし)の産地や枝肉の格付に関係なくシステムに登録した牛は松阪牛となる。
[編集] 生産
但馬牛の他、全国各地から優れた子牛を買い入れ、肥育農家にて3年程度肥育する。肥育は牛舎で主に穀物類を与え、放牧を行なうことはない。
また、一部には食欲増進により肉付きを良くするためビールを飲ませることもあるが、全てではない。
松阪牛生産農家を中心に、生産地域の地方自治体も含めた約130会員を擁する松阪牛協議会が2004年11月1日に発足し、松阪牛の生産振興、BSEや産地偽装の無い安全・安心な松阪肉の提供、ブランド維持と発展に向けて活動している。
[編集] 産地偽装
特に有名な牛であるため、産地偽装が起きやすく、松阪市及びその近郊の肥育農家にて組織を作り松阪牛の定義付けを行い、松阪牛個体識別管理システムを運用して、出荷した牛肉に専用のシール及び証明書を付け、個体識別番号により産地・肥育農家・移動履歴その他の情報が検索できる等、様々な対策を行なっている。販売店には鈴の形をした看板が会員証として配布され、各々に会員番号が付加されている。販売時には、生産地を示す認証表示が販売店に於いて行なわれている。
三重県は、生産者からの申請を受けて三重ブランドのひとつに認定している。
[編集] よくある間違い
百貨店の松坂屋同様、この牛も阪と坂を間違われる。また、松阪肉と表記されることもあるが、豚などとの混同を避けるため牛であることを強調する意味で、牛に統一されている。ちなみによく「まつざかぎゅう」などとテレビでは呼ばれたりするが、正しい読み方は「まつさかうし」が正解。