朝米修好通商条約

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

朝米修好通商条約（ちょうべいしゅうこうつうしょうじょうやく, US-Korea Amity and Trade Treaty）は1882年、李氏朝鮮とアメリカ合衆国の間で締結された最初の条約。朝鮮が西欧諸国と締結した一連の条約の先駆となった。米国側から見れば米朝修好通商条約となる。

[編集] 初期の接触

アメリカ合衆国と朝鮮の関係は1866年のジェネラル・シャーマン号事件という不幸な出来事で始まり、1871年にも朝鮮の開国を求めてジョン・ロジャーズ提督率いる米軍が江華島に上陸する事件があった（辛未洋擾）。1876年日本が朝鮮を開国させたことを知った米国上院議員サージェントが1878年から朝鮮との条約締結を提唱し、ラザフォード・B・ヘイズ大統領（在任1877年~1881年）の米国政府は1880年にロバート・シューフェルト提督を日本に派遣して朝鮮当局との交渉の仲介を求めた。しかし、朝鮮側は日本の仲介を拒否し、日本側もあまり積極的ではなかった。この動きを察知した清国の李鴻章はシューフェルトに中国の仲介を提案した。そこでシューフェルトは天津に赴き仲介を依頼、李鴻章はこの交渉を外交秘書の馬建忠に委任した。

[編集] 条約の締結

この頃清国駐日公使館参事官・黄遵憲は「朝鮮の主敵はロシア帝国であるから朝鮮は清国、日本、米国と連合すべしと」する『朝鮮策略』を著しており、清国の仲介もあって高宗（在位1863年~1907年）の朝鮮政府は米国との交渉に乗り気だった。1882年 5月22日、馬建忠の仲介により済物浦（現仁川）沖の米軍艦上で朝鮮側正使申ヒョン、副使金弘集と米国提督シューフェルトの間で朝米修好条約が調印された（朝鮮の暦では4月6日）。李鴻章は仲介にあたり条約に清国の朝鮮に対する宗主権を明文化を提案したが、シューフェルトは事実にそぐわない提案であるとこれを拒否し、日朝の江華島条約同様、朝鮮を自主の国と定め、両国の一方が第三国の圧迫を受けた場合には相互に助け合うと規定した。しかしこの条約も、領事裁判権など治外法権と最恵国待遇を規定する不平等条約だった。この条約は1883年1月米国上院で批准され、最初の朝鮮駐在公使としてフートが任命された。朝鮮側も外交使節を米国に派遣している。

[編集] 条約の影響

この条約締結後まもなく、イギリス、ドイツ、イタリア、ロシア、フランスなどの西欧諸国とも続々と修好通商条約が締結された。また同年8月には日朝修好条規続約、9月には朝清商民水陸貿易章程が締結されている。1883年以降、西欧諸国の外交代表もソウルに駐在し、本格的な朝鮮の開国が始まる。米国人宣教師が朝鮮に上陸し、急速にキリスト教の影響を拡大した。また米国人企業家が朝鮮で鉱山開発などの事業などを行い、トーマス・エジソンの会社が1887年に朝鮮で電気事業を開始したことは特筆に値する。1903年には朝鮮人のハワイ移民も始まった。しかし、米国は1904年日本と桂・タフト協定を結び、日本の朝鮮支配を容認した。1905年日本が朝鮮の外交権を掌握すると、外国外交団はすべてソウルから引き揚げた。