時間外労働
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時間外労働(じかんがいろうどう)とは、労働基準法上においては、法定労働時間外の労働のこと。通常は、就業規則などで労働時間が定められているため、それを超えて労働すること。同じ意味の言葉に、残業(ざんぎょう)がある。
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[編集] 時間外労働が許される場合
時間外労働が許されるのは、
- 災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合において、使用者が行政官庁の許可を受けた場合(事態急迫の場合は、事後に届け出る。)(労働基準法第33条第1項)。
- 官公署の事業(一部の事業を除く)に従事する国家公務員及び地方公務員が、公務のために臨時の必要がある場合(労働基準法第33条第3項)
- 労働基準法第36条に基づき、使用者と労働者の過半数で組織する労働組合又は事業場の労働者の過半数の代表者とが時間外労働、休日労働について協定を書面で締結し、これを行政官庁に届け出た場合(いわゆる三六(さぶろく)協定)(労働基準法第36条)
である。
[編集] 割増賃金
時間外労働を行った場合、通常の労働時間(休日勤務の場合は、労働日)の賃金の2割5分以上5割以下(休日労働は3割5分以上、時間外+休日では6割以上にもなる)の範囲内で政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない(労働基準法第37条第1項)。
また、使用者が午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域または期間については午後11時から午前6時まで)の間に労働させた場合においては、通常の労働時間における賃金の計算額の2割5分以上(時間外+深夜労働では5割以上)の率で計算した割増賃金を支払わなければならない(労働基準法第37条第3項)。
1年以内及び1週間非定型の変形労働時間制(フレックスタイム制)を採用する場合、三六協定は必要ないが、労使協定で割増賃金を支払うべきとされる時間が生じることがある(労働基準法附則第132条第1項、第2項)。
割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金(1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金)は算入しない(労働基準法第37条第4項)。
[編集] 時間外労働の制限
時間外労働は、無制限にできるものではなく、坑内労働等厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は1日において2時間以内とされている(労働基準法第36条第1項但し書)。また、満18歳未満の年少者には時間外労働は認められていない(労働基準法第60条)
[編集] 労働時間等に関する事項の適用除外
労働基準法第41条では、労働時間等に関する事項について適用除外とするものがある。
- 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
- 別表第1第6号 土地の耕作若しくは開墾又は植物の採植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
- 別表第1第7号 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
- 事業の種類のかかわらず監督若しくは管理の地位にあるもの又は機密の事務を取り扱う者
- 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
[編集] 所定労働時間の時間外労働
就業規則、労働協約で定められた各事業所の労働時間(法定労働時間ではなく、所定労働時間という)を超えて行われる時間外労働は、法定労働時間を超える時間外労働と一致しないことがあり、そのうち法定労働時間の枠内で行われる間外労働については、労働基準法上、三六協定を必要とせず、また、割増賃金の支払いも義務付けられていない。しかし、就業規則、労働協約によっては法定の割増賃金と同様の措置がとられることがある。