御手洗潔
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御手洗潔(みたらい きよし、1948年11月27日-)は、島田荘司の小説に登場する架空の人物。当初は「探偵が趣味の占星術師」であったが、後に「星占いが趣味の私立探偵」となり、近年では「探偵が趣味の脳科学者」と言う設定になっている。因みに「御手洗潔」という名前の由来は作者である島田荘司の少年時代の仇名「便所そうじ」から来ている。
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[編集] 人物像
類型としては、明智小五郎・浅見光彦等の「紳士型」の名探偵ではなく、シャーロック・ホームズ、金田一耕助寄りの「奇人・変人型」の名探偵。考え事を始めると他のことが一切目に入らなくなる、何年かに一度抑鬱気味になり、その間は意味不明な言葉しか口にしない、興奮するとズールー族の踊りを始めるなど奇行が目立つが、いざ事件となると超人的な集中力と観察力を発揮して解決に導く。長身で、癖はあるが整った顔立ちと描写されており、常に女性から人気があるが、それを煙たがる極度の女嫌いという設定。シャーロック・ホームズや明智小五郎と異なり、特に「終生のライバル」は存在しない。
シリーズ第1作『占星術殺人事件』では「探偵が趣味の占星術師」であったが、後にこの「占星術師」という設定はフェイドアウトして行き、正式に横浜の馬車道に事務所を構え、「星占いが趣味の私立探偵」となる。
『異邦の騎士』事件をきっかけに知り合った友人であり、ワトソン役である石岡和己とともに数々の事件を解決に導いた。当初の人間嫌いで慇懃無礼な変わり者、という人物設定は明らかにシャーロック・ホームズを意識したものであったが、後に作者独特の日本人論を反映し、彼の提唱する「新しい日本人」を体現する人物像へと変化した。
シリーズが進むにつれてどんどん設定が増えてゆき、現在ではIQは300以上とされ、地球上の殆どの言語をネイティブなみに話し、専門は脳科学だが、その他にも心理学や遺伝子工学、気象学、天文学、歴史学に外科医学など経済学以外の学問殆ど全てに通じるという、些か大掛かりな人物像となっている。
同じく「変人型」の、博識で知られるホームズとの大きな違いは、ホームズは探偵業が基本であり、御手洗は学者としての顔が基本であるという点であろう。ホームズの博識さは犯罪研究の為であるが、御手洗はもともとの知識を探偵として応用しているに過ぎず、ホームズの犯罪研究に対する情熱は醒めることをしらないが、御手洗は『水晶のピラミッド』以降、事件を解決することそれ自体には余り興味を示さなくなる。特に『眩暈』や『ねじ式ザゼツキー』などでは事件解決よりも貴重な症例の研究として事件に関与していたふしがある。
[編集] 経歴
京都大学医学部を中退し、アメリカの某有名大学を卒業する。 その後、アメリカでジャズ・ミュージシャンとして活躍した後日本に帰国し、占星術師となる。 占星術師を廃業し、私立探偵として幾つかの事件を解決した後、北欧へ移住、大学で教鞭をとりつつ、脳科学の研究を行っている。
[編集] 特徴・特技
御手洗潔の設定はシリーズが進むにつれどんどん増えて行く。以下はその一例。
- IQは300以上
- 語学に堪能で、地球上の殆ど全ての言語に通じている。ラテン語系は一週間で一言語ずつ覚えたらしい。因みに流石にヒエログリフは読めないことが『水晶のピラミッド』の際に明らかにされている。
- クラシック、ジャズを愛好。
- ある理由からコーヒーは飲まず、紅茶派。
- ギター演奏を得意とし、腕前はプロ顔負け。マイルス・デイヴィスのバンドにいたことがあると言う裏設定すら存在する。
- もともと占星術を得意としたことから、人の誕生日を覚えるのが特技だが、人の名前を覚えることが苦手で、一度間違えて覚えるとなかなかそれを直そうとしない。ただ、この設定は「占星術師」と言う設定がフェイドアウトして以来忘れられたようで、中期以降は普通に人の名前を覚えている。
- 名前をおてあらい(お手洗い)・おたらい(あるいはおてあらいとおたらいの中間)と誤読されることを嫌い、また名前を書いたり、名乗ったりすることを極端に嫌がる。
[編集] 登場作品
[編集] 長編作品
- 占星術殺人事件 (1981年)
- 斜め屋敷の犯罪 (1982年)
- 異邦の騎士 (1988年)
- 暗闇坂の人喰いの木 (1990年)
- 水晶のピラミッド (1991年)
- 眩暈 (1992年)
- アトポス (1993年)
- 龍臥亭事件 (1996年)・・・但し、これは石岡主演の長編で御手洗潔本人は殆ど登場しない。
- ハリウッド・サーティフィケート (2001年)・・・これは『暗闇坂の人喰い木』からのサブ・キャラクター、松崎レオナ主演の外伝的作品。御手洗本人の登場はわずか。
- 魔神の遊戯 (2002年)
- ネジ式ザゼツキー (2003年)
- 龍臥亭幻想 (2004年)
- 摩天楼の怪人 (2005年)