市川弘美

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市川 弘美（いちかわ ひろとみ、文化13年（1816年） － 明治2年4月3日（1869年5月14日））は、幕末の水戸藩の家老。通称は三左衛門（さんざえもん）、善次郎、主計。一般には市川三左衛門の名で知られる。

水戸藩士・市川弘教の息子として生まれ、1843年に家督を継ぎ、小納戸頭・用人・大寄合等を歴任する。1860年、尊皇攘夷的な改革路線を推し進めていた藩主・徳川斉昭が死去すると、若年の新藩主徳川慶篤のもと藩論は幾つにも分断され、水戸藩は混乱状態に陥った。その中で市川ら保守派は諸生党（佐幕派の派閥）を組織し、尊攘派の武田耕雲斎らの率いる天狗党と鋭い対立を示した。

1864年に天狗党が筑波山に挙兵するや、執政を称する市川は幕府の援助のもと乱の鎮定に努め、さらに天狗党の敗走後はその家族や残党を徹底的に処罰し、藩内の要職を諸生派で固めた。しかし、1868年に最後の将軍・徳川慶喜が江戸城を明け渡し水戸に謹慎することが決すると、京都における慶喜の側近であった尊攘派の本圀寺勢が、水戸藩の実権を握ることが必至となった。本圀寺勢との対決を不利と見た市川は、諸生党士約500名を率いて4月に水戸を脱出し、奥羽・越後各地を転戦して薩長官軍と戦うが、9月に会津が落城すると水戸に帰り、藩校弘道館に拠って水戸城の本圀寺勢と決戦に及んだ。しかし、水戸城は落ちず、やむなく下総に敗走するが、八日市場の戦いで一隊は壊滅し、市川は江戸に逃れた。1869年2月、江戸（東京）潜伏中の市川は水戸の捕吏に捕縛され、4月水戸長岡原で逆磔の極刑に処された。法名は法源院宗弘道盛故居士。墓所は水戸市の祗園寺。なお同寺には諸生党士の慰霊碑がある。