市場介入
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市場介入(しじょうかいにゅう、market intervention)とは、外国為替市場において中央銀行などが特定の政策目的をもって取引を行うことである。この場合、特定の政策目的とは自国通貨の為替レートを維持、切り下げ、切り上げることにより起きる経済上の効果を指す。
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[編集] 概要
固定相場制の下では資本移動を規制しない限り、常に介入が必要となる。通常、自国通貨売りには制約が少ないが、自国通貨買いには基軸通貨(現在はドル)が必要なため無制限には行なえない。
変動相場制の下でも、急速な為替レートの変動による国民経済の混乱を避ける目的で介入が行なわれる。
自国通貨売り介入をした場合、裏返しで外貨買い介入になるため、外貨が蓄積される。これを外貨準備と呼ぶ。外貨準備は自国通貨買い介入の際の原資となる。
日本の場合、外国為替平衡操作と呼ばれ円を引き下げる場合は円売り介入、引き上げる場合は円買い介入と呼ぶ。基本的にドルに対する取引で行われるが、ユーロに対して行われる場合もある。
1980年代より投資ファンドの発達によりホットマネーが増大、為替市場において中央銀行が行う介入は相対的に影響力が下がっており、一部の国では介入を行っても目的が達成できずに終わるケースもある(ポンド危機、アジア通貨危機など)。失敗ケースはほとんどの場合自国通貨防衛(自国通貨の買い支え)である。これは、上記の自国通貨買いの制約による。
[編集] 日銀砲
日本銀行による市場介入の俗称。貿易が経済において重要なウェイトを占める日本は、通貨高を阻止するための円売り介入を比較的頻繁に行っている。一方で、投資ファンドによる投機的な動きを阻止するための介入もしばしば行う。後者のケースは、投機筋の排除という攻撃的な性格であることから、主にこのケースの介入を指して日銀砲と呼ぶ。
有名なケースでは、2004年はじめ行われた大規模な市場介入がある。前年の8月頃から、イラク情勢などの影響により投機筋は大幅な円高になると見込んでいた。このため投資ファンドは世界中から巨額の資金を集めて円買いを進め、1ドル117円前後で安定していた円相場は105円台に迫るまで跳ね上がっていた。
これに対抗するため、日銀は1日1兆円規模の円売り介入を継続的に実施し、結果投資ファンドは利益を上げることができず、一部は壊滅的な損害を出して撤退に追い込まれた。
なお、この時の介入においては、通常行なわれる不胎化政策が行なわれず円貨が市中に放置され、デフレ対策としての量的緩和も目的としていたといわれている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 円売り・ドル買い大規模介入 脱デフレへ“大勝負”(上記日銀砲の経緯を詳しく解説している)