巌窟王 (アニメ版)
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『巌窟王』(がんくつおう)は、三銃士などで有名なアレクサンドル・デュマ・ペールの小説「モンテ・クリスト伯」を原作とするアニメ作品。テレビ朝日で、2004年10月5日より2005年3月29日まで放送された。全24話。
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[編集] 作品概要
この作品を企画した前田真宏監督によれば、当初はアルフレッド・ベスターのSF小説「虎よ、虎よ!」をアニメ化しようとしたが、著作権の関係で果たせず、「虎よ、虎よ!」の原作である「モンテ・クリスト伯」をアニメ化することにしたという。
「モンテ・クリスト伯」をただ忠実にアニメ化するのではなく、舞台を19世紀のヨーロッパから幻想世界の未来のパリに移したり、原作ではローマでの謝肉祭がルナとなっていたり、脇役の一人に過ぎなかったアルベールを主人公として、またアルベールの友人として原作では途中で物語から消えたフランツやユージェニーなどを中心に、復讐する側の視点ではなく、復讐される側の子どもたちの視点から話を構成するなどストーリーや人物設定に大きな改変が加えられており、原作既読の視聴者にも楽しめる内容になっている。また、服の柄や煌びやかな都市などをテクスチャを使って表現するなど、映像的にも斬新な試みがおこなわれている。最終話衣装デザインにアナスイが参加。
この作品は、2005年の東京国際アニメフェアでテレビ部門の優秀作品賞を受賞した。
監督である前田真宏によって漫画化され月刊アフタヌーンにて連載されている(2006年5月現在連載中)。この漫画はアニメとは違う展開になっている。
本作品『巌窟王』のDVDには隠しメニューが存在し、背景やBGMが変わるだけでなくそこからチャプターをすると、冒頭の語りが巌窟王のフランス語からモンテ・クリスト伯(声:中田譲治)の日本語になる。また次回予告ナレーションも伯爵になりアルベールとは対照的な事、伯爵の心情を述べているので伯爵のファンでなくても興味深いものとなっている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
パリの青年貴族・アルベールは退屈な日常に飽き、刺激を求めて、親友のフランツとともに、月面都市・ルナのカーニバルに参加する。そのころ、ルナの社交界では東方宇宙からやって来た謎の紳士、モンテ・クリスト伯爵の話題でもちきりだった。オペラ座でモンテ・クリスト伯爵の姿を見たアルベールはその存在感に圧倒される。やがて、モンテ・クリスト伯爵との交流を深めていったアルベールは、伯爵の妖しい魅力の虜となっていく。
カーニバル最終日、ルナで知り合った美少女・ペッポとの逢瀬を楽しんでいたアルベールであったが、ペッポの正体はルナの山賊ルイジ・ヴァンパの手下であった。アルベールはルイジ・ヴァンパ一味に誘拐され、フランツのもとに莫大な額の身代金を要求する手紙が届けられる。身代金の調達に窮したフランツはモンテ・クリスト伯爵に助けを求め、モンテ・クリスト伯爵の尽力でアルベールは解放される。感激したアルベールはモンテ・クリスト伯爵をパリの社交界に紹介する。
パリに移り住んだモンテ・クリスト伯爵は、己の莫大な富を誇示して、パリの人々の度肝を抜く。さらに、モンテ・クリスト伯爵は息子の友人として、アルベールの父・フェルナンに接近し、さらにダングラール銀行の口座に莫大な額の金を振り込んで、金融界の大物・ダングラールをも懐柔する。
フェルナン、ダングラールに加え、法曹界に力を持つヴィルフォールをモンテ・クリスト伯爵は自分の別荘に招待するが、その別荘はヴィルフォールがかつてダングラール夫人との間にもうけた不義の子を始末した場所であった。ヴィルフォールの秘密を知っているかのごとく振舞うモンテ・クリスト伯爵に不審を抱いたヴィルフォールは、密偵にモンテ・クリスト伯爵の身辺を調査させる。
やがて、フェルナン、ダングラール、ヴィルフォールのもとにエドモン・ダンテスと名乗る人物から葬儀の案内状が届く。指定された教会で3人が見たものは、ヴィルフォールが放った密偵の死体だった。その日から3人の運命は、その家族も巻き込んで次第に狂いだしていく。
[編集] 登場人物
- モンテ・クリスト伯爵 Le Comte de Monte-Cristo(声優:中田譲治)
- 自称、東方宇宙の田舎貴族。莫大な富と途方もない権力の持ち主。かつて無実の罪で投獄されたことがあり、その復讐のためにアルベールに接近した。「巌窟王」(Gankutsuou)の異名を持つ。最後にはアルベールとエデに看取られ、エドモン・ダンテスとして死ぬ。
- アルベール・ド・モルセール子爵 Le Vicomte Albert de Morcerf(声優:福山潤)
- パリの青年貴族。15歳。フェルナンとメルセデスの子。ルナで知り合ったモンテ・クリスト伯爵に傾倒し、伯爵に対して敬愛の念以上の感情を抱いている。素直な性格だが、周囲の空気を読めないところがある。最終話では外交官になり、ユージェニーと再会を果たそうとするところで物語が終わる。
- フランツ・デピネー男爵 Le Baron Franz d'Epinay(声優:平川大輔)
- アルベールの親友で幼なじみ。アルベールに友情以上の感情を抱いており、なにかとアルベールの心配をする。幼少時に父親を何者かに殺害された過去を持つ。アルベールの代わりに伯爵と決闘し、命を落とす。
- ペッポ Beppo(声優:中原麻衣)
- アルベールがルナで知り合った美少女。ルイジ・ヴァンパの一味だったが、アルベールがパリに戻るとアルベールの後を追ってパリに現われ、モルセール伯爵家のメイドとなる。思わせぶりな言動でアルベールを翻弄する。正体は男。最終話にて女性モデルとしてデビューしていることがわかる。
- ユージェニー Eugénie de Danglars(声優:中村千絵)
- ダングラールの娘。アルベールの幼なじみで婚約者。ピアニスト志望の少女。アルベールとは相思相愛だったが、父親によって婚約を破談にされ、カヴァルカンティ侯爵との結婚を強要される。実はカヴァルカンティとは異父兄妹。
- ヴァランティーヌ Valentine de Villefort(声優:三浦純子)
- ヴィルフォールの娘。フランツと婚約しているが、肝心のフランツからは見向きもされていない。物静かで心優しい少女で、マクシミリアンの求愛を受けて心を動かし始めた矢先に、エロイーズが盛った毒薬で意識不明となる。
- マクシミリアン・モレル Maximilien Morrel(声優:稲田徹)
- 宇宙騎兵大尉。ヴァランティーヌに一目ぼれし、ヴァランティーヌに愛情を示さない婚約者フランツに怒りを向ける。ヴァランティーヌが意識を失った後は、フランツの協力も得て、ヴァランティーヌとともに実家に避難する。貿易商の息子。
- ボーシャン Beauchamp(声優:白鳥哲)
- ゴシップ専門の新聞記者。反権力志向が強い。モンテ・クリスト伯爵に興味を持ち、伯爵の現われるところに度々出没する。
- リュシアン・ドプレー Lucien Debray(声優:土門仁)
- 内務省一等書記官。アルベールやフランツの友人。一見、軽薄に見えるが、根は友達思いの優しい男。
- ラウル・ド・シャトー=ルノー(ルノー) Raoul de Château-Renaud(声優:MIKI)
- 名門貴族の御曹司。アルベールらの友人。クラシック・カーに目がない。アルベールらにマクシミリアンを紹介する。
- モルセール将軍/フェルナン・モンデゴ Le Général Fernand de Morcerf/Fernand Mondego(声優:小杉十郎太)
- アルベールの父。宇宙軍の将軍。現在はモルセール伯爵と名乗っている。大統領選への出馬をもくろむが、上流社会の中で彼に関するスキャンダルが流れ、苦境に立たされる。
- メルセデス Mercédès de Morcerf(声優:井上喜久子)
- アルベールの母。かつてエドモン・ダンテスの婚約者だったが、ダンテスが死んだと聞かされ、フェルナンと結婚した。
- ダングラール男爵 Le Baron Danglars(声優:辻親八)
- パリでも有数の金持ちであるダングラール銀行の頭取。ユージェニーの父親。金の亡者で、「金のためなら家族をも売る」と言われている。カヴァルカンティ侯爵の財産に目がくらみ、フェルナンのスキャンダルを耳にしたのを期に、娘とアルベールの婚約を破談にし、娘を侯爵と結婚させようと画策する。
- ビクトリア Victoria de Danglars(声優:松井菜桜子)
- ダングラールの妻でユージェニーの母。ドプレーと不倫関係にある。モンテ・クリスト伯爵にも秋波を送っていたが、伯爵の別荘で過去の過ちを思い出し、その後はふさぎこんで酒浸りになる。実はカヴァルカンティ侯爵の母。
- ヴィルフォール首席判事 Gerard de Villefort Procureur-général(声優:秋元羊介)
- パリ高等法院首席判事。ヴァランティーヌの父親。モンテ・クリスト伯爵に不審を抱き、伯爵を罠にはめようと画策するが、保安総局の知るところとなり、職権濫用により職務停止を命じられる。精神的に追い詰められ、自らモンテ・クリスト伯爵の殺害を企てるが失敗する。実はカヴァルカンティ侯爵の父。
- ノワルティエ老 Noirtier de Villefort
- ヴィルフォール首席判事の父親。かつては内務省のトップだったが、現在は全身不随で車椅子に乗っており、話すことも出来ない。問いかけに目線で答え、それを理解できるヴァランティーヌ以外の者と意思の疎通が出来ないでいる。しかし家中で孤独なヴァランティーヌの献身的な愛情に報いようとしている。
- エロイーズ Héloïse de Villefort(声優:渡辺久美子)
- ヴィルフォールの後妻。前妻の子で莫大な財産の相続者のヴァランティーヌを疎ましく思っている。モンテ・クリスト伯爵にそそのかされて、ヴァランティーヌを毒殺しようとするが失敗し、ヴィルフォールによって精神病院に送られるも、即座にエドワールともどもモンテ・クリスト伯爵の屋敷に引き取られる。
- エドワール Edouard de Villefort(声優:鬼頭典子)
- エロイーズの息子。ヴァランティーヌの異母弟。前妻やノワルティエの財産を相続できないことから、母親が甘やかして育てている。わがままで自己中心的な子供。
- アンドレア・カヴァルカンティ(侯爵) Andrea Cavalcanti(声優:関智一)
- 名門貴族・カヴァルカンティ家の当主を名乗る青年。正体は元囚人のべネデット。ダングラールに接近し、アルベールに代わってユージェニーの婚約者となるが、実は彼女とは異父兄妹だった。本性はかなり粗暴で、エデに対して怒鳴ったりする。ダングラールの破産に追い討ちをかけ、自らの出生の秘密を暴露して実の父に復讐を果たした後、再び刑務所へ戻っていく。
- エデ Haydée(声優:矢島晶子)
- モンテ・クリスト伯爵に仕える美少女。ジャニナ星の王女だったが、フェルナンの謀略によって祖国を滅ぼされ、自らも奴隷身分に落とされる。モンテ・クリスト伯爵に救出された後、復讐の念に燃える伯爵から憎しみの心を取り除こうとするが、自分自身もまたフェルナンに対する憎しみを取り除くことが出来ず、苦悩する。最終話で国を取り戻し、女王となる。
- ベルッチオ Giovanni Bertuccio(声優:石井康嗣)
- モンテ・クリスト伯爵家の家令。褐色の肌とサングラスが特徴的。伯爵の復讐計画を着々とこなしていく。時折、伯爵を「巌窟王」と呼ぶ。
- バティスタン Baptistin(声優:飛田展男)
- モンテ・クリスト伯爵家の家令。リーゼントの頭が特徴的。アルベールの存在に伯爵を精神的に救う鍵を見出す。
- アリ Ali
- 伯爵の奴隷、緑色の顔の異星人である。聾唖者であるが不思議な能力を持っている。
- G侯爵夫人 Le Marquise G(声優:夏樹リオ)
- フランツの社交界での知り合い。ルナでフランツやアルベールを案内する。
- カドルッス Caderousse(声優:飛田展男)
- かつてエドモン・ダンテスをイフ城の牢獄(シャトー・ド・イフ)に送り込む陰謀に加担した酔っ払い。弱気な男だが栄達した昔の同僚達(フェルナン、ダングラール)をうらやんでいる。
[編集] 各話タイトル
- 旅の終わりに僕らは出会う
- 月に朝日が昇るまで
- 5/22、嵐
- 母の秘密
- あなたは婚約者を愛していますか
- 僕の憂鬱、彼女の憂鬱
- 秘蜜の花園
- ブローニュの夜
- 闇色の夢を見た
- エドモンからの手紙
- 婚約、破談
- アンコール
- エデ
- さまよう心
- 幸せの終わり、真実の始まり
- スキャンダル
- 告白
- 決闘
- たとえ、僕が僕でなくなったとしても
- さよなら、ユージェニー
- 貴公子の正体
- 逆襲
- エドモン・ダンテス
- 渚にて
[編集] スタッフ
- 製作:稲田浩之、石川真一郎
- 企画:永田勝治、村濱章司
- 企画原案・キャラクター原案・監督:前田真宏
- シリーズ構成:神山修一
- 脚本:神山修一、有原由良、高橋ナツコ、山下友弘
- キャラクターデザイン:松原秀典
- デジタルディレクター:ソエジマヤスフミ
- 友情デザイン:小林誠
- 美術監督:佐々木洋、竹田悠介
- 色彩設計:村田恵里子
- スペシャル3DCGIアニメーター:鈴木朗
- ロケーションモデリング:七水剛多
- 3DCGIディレクター:塩野秀光、下山博嗣
- 撮影監督:荻原猛夫
- 編集:重村建吾 (スタジオごんぐ)
- 音響監督:鶴岡陽太
- 音響制作:楽音舎
- サウンドデザイン:笠松広司
- 音楽:ジャン・ジャック・バーネル
- 音楽制作:フューチャービジョン・ミュージック
- 音楽制作協力:ビクターエンターテインメント
- 音楽プロデューサー:藤田純二
- エグゼクティブプロデューサー:内田康史
- プロデューサー:安藤摂、土井美奈子、橋本太知、西口なおみ(tv asahi)
- ラインプロデューサー:若松剛
- アニメーション制作:GONZO
- 製作:MEDIA FACTORY、GDH
- 制作:tv asahi
[編集] 主題歌
- OP 「We Were Lovers」作詞・作曲:Jean-Jacques Burnel 編曲:Jean-Jacques Burnel & Loule Nicastro 演奏:Jean-Jacques Burnel
- ED 「You Won’t see me coming」作詞・作曲:Jean-Jacques Burnel 編曲:Jean-Jacques Burnel & Loule Nicastro 演奏:Jean-Jacques Burnel