対立遺伝子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
相同な遺伝子座を占める遺伝子の種類が複数ある場合、これらを対立遺伝子(たいりついでんし、allele)と呼ぶ。平易に言い換えると、対立遺伝子とはある遺伝子の種類のことである。
対立遺伝子の内、正常な機能をするものを野生型 (wild type) という。対立遺伝子は突然変異によって生じる。突然変異を二種類にわけると、機能欠失型変異型 (loss of function) と機能獲得型 (gain of function) がある。前者には完全に機能を失った amorph と、部分的に機能を失った hypomorph がある。後者には野生型の機能を妨げるように働く antimorph と、全く新たな機能を獲得した neomorph がある。
通常の生物は、父母由来の2つの対立遺伝子を持ち、両親から同じ遺伝子を引き継いでいる場合、ホモ接合とよばれ、異なる遺伝子を引き継いでいる場合、ヘテロ接合と呼ばれる。
[編集] 例
ヒトのアルコール代謝経路ではALDH2というアルデヒドデヒドロゲナーゼが重要な働きをしている。 ALDH2にはALDH2*1とALDH2*2が存在することが知られ、その違いは第12染色体にあるALDH2遺伝子のエクソン12の変異に由来している。487番目のアミノ酸コドンがGAA(グルタミン酸)ならALDH2*1ができ、AAA(リシン)ではALDH2*2が作られる。 このときALDH2遺伝子にはALDH2*1とALDH2*2の2つの対立遺伝子があるといえる。 ALDH2*1対立遺伝子から作られる酵素は活性が高く、俗に酒に強い遺伝子と呼ばれている。 ALDH2*2は活性が弱いため、この対立遺伝子を両親から受け継いだ人(ALDH2*2のホモ接合型)は非常にアルコールに弱くなる。
一方、ヒトのアルデヒド脱水素酵素はさらにALDH1が知られるが、これは異なった遺伝子座(第9染色体)にあり、ALDH2とALDH1は別の対立遺伝子とは呼ばれない。
カテゴリ: 自然科学関連のスタブ項目 | 遺伝学