宇宙定数
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宇宙定数(うちゅうていすう、cosmological constant)は、アインシュタインの重力場方程式の中に現れる宇宙項(うちゅうこう)の係数。宇宙定数はスカラー量で、通常Λ(ラムダ)と書き表される。この定数が値をもつと、弱い重力場において、アインシュタインの重力場方程式とニュートンの万有引力の法則との間にずれが生じる。
1916年に発表された最初の重力場方程式には宇宙項・宇宙定数は入っていなかった。しかし、これでは宇宙は自らの重力(万有引力)で収縮していってしまうと気づいたアインシュタインは、万有引力に対抗する斥力である万有斥力を表す宇宙項・宇宙定数を導入し、宇宙の大きさは一定であるとした。しかしエドウィン・ハッブルらの観測によって、宇宙が膨張していることが明らかになり、アインシュタインはこの宇宙定数の導入を生涯で「最大の過ち」(biggest blunder)として後悔したというエピソードはあまりに有名である。
近年、遠方の超新星の観測結果から、我々の宇宙は現在、加速度的に膨張していることが明らかになってきており、宇宙定数は厳密には0ではなく微小ではあるがある値を持つのではないかと考えられている。宇宙定数の源の有力な候補としては真空のエネルギーなどが挙げられる。これを仮定すると宇宙定数の大きさは、自然単位系で評価してナイーブには1の程度になる。しかし、観測的には10 − 120以下であることが分かっており、このギャップを埋めるメカニズムは現代宇宙論の未解決問題のひとつになっている。