地域おこし
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地域おこしとは、地方の市町村、あるいは中規模都市の一定の地区の経済や文化を活性化させること。
より一般的な言葉として地域振興があるが、地域おこしと表現することにより、地元市町村、住民、商工会、農協など地元の人々の主体性が強調される印象がある。村おこしから発展した言葉と思われる。
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[編集] 概要
日本では1960年代以降、大都市圏に産業も人口も集中し、地方都市やその周辺地域にある町村では、
という過疎化の悪循環が深刻な物になった。地方自治体は充分な税収も見込めず、公共事業は国からの補助金に依存という状況で、国としての負担も、無視しがたい程に膨れ上がっている。その一方で、都市部では過度の過密から、都市交通機能は慢性的な麻痺状態に陥っている。
また1980年代以降、大規模小売店やショッピングモールの郊外への進出で、周辺地域の小売店が経営の危機を迎えてしまい、寂れてしまった商店街が増えたりして、店仕舞いした店舗がかつての駅前商店街に軒を連ねて、余計に寂れた雰囲気が客足を遠ざける一因となっている。
更には地元に伝わる伝統工芸や祭やダンスといった伝統的な文化活動の後継者不足も頭の痛い問題で、中には後継者不足から、文献すら満足に残さず消えてしまう地方文化もある。
このような問題を解決するため、基幹産業の衰退や他地域との交通・雇用・利便性格差の拡大で、人口が流出して町が空洞化してしまった後の経済的な建て直しや住民人口回復などが必要となるが、そのための活動が地域おこしである。
[編集] 地域おこし活動
企業の誘致、スポーツ公園の整備・美術館や博物館など箱ものの建設、地場産品の発掘や開発・新しい祭の新設など、さまざまな試みが地方自治体で行われているが、どこにでも有効な決定的な策というものがあるわけではない。特に成功事例をそのまま真似ても地域色が出し切れ無い事もある。
成功しているところでは、釧路フィッシャーマンズワーフ、福岡のシーサイドももち、横浜のみなとみらい21、金沢の香林坊ハーバーなどが挙げられる。
2002年には行政改革により、従来の法規制の一部を緩和できる構造改革特別区域が制定できるようになった事から、全国各地で様々な特区が生まれつつあり、これらの特区内における様々な活動に、地域振興の期待が寄せられている。
[編集] 主な構造改革特別区域
- 教育特区
- 学校の設置や運営を学校法人に限定せず弾力的に運用したり、従来は区分けされていた保育園と幼稚園の仕切りを緩和するなど、育児に関係する多様性を提供する事で、子供を育てやすい環境を実現させる。
- 物流特区
- 従来は受け入れ時間の限られていた関税業務を24時間営業とする事で、国際的な物流をノンストップで受け入れられるようにする。また施設面での杓子定規な法規制を緩和し、効率良く経済活動が行えるように便宜を図って、企業や物流拠点としての地位を築く。
- 国際交流特区
- ビザの発給に便宜を図り、海外の研究者や留学生を広く受け入れ、国際文化交流の拠点として振興・発展させる。
- 農業特区
- 後継者の居ない農地や休耕田を有効活用し、農業経営企業の設立や運営面で便宜を図って、農業を活性化させ、農業人口拡大を図る。
- 街作り特区
- 建設許可の緩和や、逆に違法広告の取り締まり強化など、都市化における不快要素を減らしながら快適な街を作る。更には建設規制を独自に設け、調和した美しい町並みを作り出して、観光資源としても活用する。また都市部で従来は利用が禁止されていた河川流域の遊休地をイベント等で積極的に利用して、住みやすい・美しい街として、人口の拡大を目指す。
- エコロジー特区
- 風力発電や太陽光発電などの新エネルギー利用や、リサイクルの効率化を行い、快適な街作りとともにエコロジー生活を送りやすい地域性で、住人を集める。また原付バイクの二人乗り規制緩和による自家用車の利用削減や電動スクーター(電動スケーター)などの導入による排気ガス排出量削減(加えて渋滞の解消)を目論む地域も出ている。
- 行政サービス特区
- 官民の垣根を無くし、一般企業が利用できる公共サービスを提供する。地方公務員の運用を弾力化して、常務勤の公務員を流動的に運用して、企業誘致に有利な条件を目指す。
- 福祉特区
- 老人福祉等で公設の施設を民間企業が運営したり、社会福祉施設に民間からの人材派遣を受け入れ、現在の慢性的人手不足を解消し、更にはそれらの産業に関わる人や福祉を受ける側の人・その家族による人口の増加を期待する。
- 医療特区
- 従来の医療法人一辺倒から、株式会社等の一般企業への病院経営参加を認めるなどして、企業努力による医療向上を目指したり、外国人医師の受け入れを行って、医療技術の向上を目指し、医療先進地域としての地位を築く。
- ロケット特区・ロボット特区等の産学特区
- 本来なら公道を通行できないロボットを公道で運用したり、ロケット打ち上げに必要な無線などの設備設置に伴う手続き簡略化等、産業分野と大学等の研究者が合同で、実験を行いやすい環境を作る事で学校と企業の誘致を図る。
- どぶろく特区
- 従来は酒税法で厳格に規制されていたどぶろく等の酒作りと販売の規制を緩和し、観光事業の活性化と共に、地域産品の目玉とする事で、観光事業の活性化と同産業従事者の生活安定や後継者の呼び込みを目指す。