北陸鉄道6000系電車
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北陸鉄道6000系電車は、1962年に北陸鉄道加南線に導入された電車である。 北陸鉄道としては初のカルダン駆動車であり、また湯治客・観光客を対象として転換クロスシートを備え、地元名産の九谷焼にちなんで「くたに」という愛称と、磁器製の特注前面ネームプレートを与えられていた。
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[編集] 製造経緯
1960年代初頭には加南線沿線の温泉需要は世相の安定で急増しつつあった。中でも、大聖寺～山中を結ぶ山中線においては大阪方面からの湯治客の迎え入れを企図して、国鉄北陸本線との接続駅である大聖寺駅経由でキハ58系による急行列車の分割直通乗り入れ運転[1]が真剣に検討されるほどの活況を呈していた。
この需要増に応えるべく、山中温泉への行楽客を対象とする同線唯一のクロスシート車であったモハ5000形（→モハ3750形）の後継を目的として名古屋の日本車輌製造（日車）本店で製造されたのが本形式である。
車種構成はクモハ6001（制御電動車）+クハ6051（制御付随車）の2両1編成よりなり、電動車は電気的に1両で完結する構成で、単行運転も理論的には可能であったが、片運転台車の永久連結構成となっており、制御器やブレーキシステムの互換性、あるいは貫通路構造の特殊性といった問題もあったため、他系列との混用は行われず、常時2両1組で運行された。
[編集] 車体
車体の設計は1950年代後半に日本車両が名古屋鉄道や富山地方鉄道、それに長野電鉄といった中部地方の各私鉄に供給した18～20m級2扉クロスシート車のそれを基本としており、準張殻構造で窓配置はd2(1)D2x4D(1)12（d：乗務員扉、D：客用扉、(1)：戸袋窓）、扉間の座席は転換式クロスシート、車体長は18m級となっている。
但し、長野電鉄や富山地方鉄道向けの同クラス車は同じ日車でも東京支店が設計を担当したが、本形式と増備車である6010系に限っては名鉄向けと同様に本店工場が設計を担当しており、前面は1961年に本店が手がけた大作、名鉄7000系の意匠の影響を受けてか、大小各2枚の平面ガラスを組み合わせた他に例の無いシャープかつ清新な形状となった。
また、その直後の運転台仕切は展望性を重視して低く抑え、連結面も後の営団地下鉄6000・7000系に見られたような全周幌で側窓下に相当する部分だけ通常の貫通路幅に絞られた特徴的な構造を採用、更にはバスのように側面客用扉の腰板相当部分へ窓（上部の通常窓と異なり、強度保持のために左右に分割されていた）を設置するなど、観光電車として、あるいは北陸鉄道の看板電車として非常に意欲的な試みが盛り込まれていた。また、就役開始からしばらくは本形式と増備車6010系よりなる加南線ロマンスカーの車内において山中節のメロディーが流れており、観光客の人気を呼んでいた。
[編集] 主要機器
斬新な設計となった車体にふさわしく、東洋電機製造ES-571-C電動カム軸式多段自動加速制御器（富山地方鉄道モハ10020・14720のものと同系）とTDK-820-3-D（端子電圧600V時定格出力75kW）主電動機、それに中空軸平行カルダン駆動が採用され、台車も国鉄のDT21系台車を基本としつつも原設計には無かったボルスタアンカを備える、日本車両製造ND-109/-109Aが奢られるなど、こちらも意欲的な設計が目につく。
この新設計機器の採用は本形式に在来車とは一線を画する高性能をもたらしたが、これは低規格な馬車軌道に由来する山中線の線路条件では自重30tを超える大型車の導入が難しく[2]、車体の軽量化は当然としてそれ以上に機器の軽量化が求められたという事情も働いての採用であった。
事実、中部地方の各社が採用した同系の日本車輌製造製2扉クロスシート車の中にあって本形式、特にクモハ6001の自重は他社向け電動車と比べて3t以上軽くなっており、また主電動機出力も1M1T編成を前提とする形式としては低く抑えられていることから、自重軽減に特に留意して設計されていたことが伺える。
増備車である6010系では最新技術による軽量なアルミ合金製車体の採用でこの問題をクリアしたが、本形式の設計段階では鉄道車両に適した7000系アルミニウム合金[3]は未だ実用化されておらず、機器側の減量を徹底するより他無かったのである。
[編集] 譲渡から廃車まで
本形式は1962年7月の就役開始後、主に山中～大聖寺間で山中線の看板電車として運用された。1971年7月10日の加南線全線廃止後は、その豪華な設備ゆえにか北陸鉄道の他線には転用されず、同じく余剰となった6010系と共に、北陸鉄道と同じ名鉄の資本系列下にある大井川鉄道へ同年10月に譲渡された。
但し北陸鉄道加南線は600V、大井川鉄道は1500Vと架線電圧が異なっていたため、本形式は暫定的に電装解除されてトレーラーとされ、旧式のモハ305（旧富士身延鉄道モハ1200形）に牽引されて「あかいし」と愛称を改めた上で使用開始された。
しかし、本形式の電装品は600V専用設計で1500V昇圧を考慮しておらず、また台車構造の関係で釣り掛け式モーターの装架も困難であったことから昇圧工事は断念され、モハ6001（大井川入線時に形式から「ク」の字が取れた）は1978年に正式に制御車化され、クハ6052へ改番された。
また、それに先立つ1977年にはモハ305が老朽廃車されたのに伴い、コンビを組む電動車がモハ1906（元小田急電鉄デハ1900形1906）へ交代し、廃車までこの3連で運用された。
もっとも、車体の設備格差があまりにも大きいことから牽引役のモハが客扱いすることはほとんど無く（通常荷物車代用として使用された）、2連相当として運用されたが、この構成ではワンマン運転は事実上不可能であり、大井川鉄道本線のワンマン化実施後は予備車扱いとならざるを得なかった。
このため、1996年の南海電鉄21000系ズームカー（奇遇にも本形式と同系のTDK-820-B/Eを主電動機として装架している）の譲受時に除籍され、その後長期に渡って新金谷の側線に放置されたが、最終的に解体された。
