動力車操縦者
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動力車操縦者(どうりょくしゃそうじゅうしゃ)免許は鉄道・軌道運転士になるために必要な免許。国土交通省が実施する動力車操縦者試験に合格しなければならない。公安委員会の発給する第2種運転免許に相当するといえる。但し、自動車の場合は貨物輸送であれば2種免許は不要だが、鉄道の場合旅客・貨物の区別は無い。鉄道の公共性に鑑み、第1種(自家用車)免許は存在しないということになる。なお、公営の鉄道事業者(かつての国鉄を含む)の運転士にはこの免許は必要ない[要出典]。動力車操縦者の保有を証明して交付される公文書を動力車操縦者運転免許証という。
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[編集] 分類
- 甲種蒸気機関車運転免許
- 甲種電気車運転免許
- 甲種内燃車運転免許
- 乙種蒸気機関車運転免許
- 乙種電気車運転免許
- 乙種内燃車運転免許
- 新幹線電気車運転免許
- 第一種磁気誘導式電気車運転免許
- 第二種磁気誘導式電気車運転免許
- 第一種磁気誘導式内燃車運転免許
- 第二種磁気誘導式内燃車運転免許
- 無軌条電車運転免許
※「甲種」「第一種」とは、一般のJR・私鉄路線などの専用敷地を走行する鉄道、「乙種」「第二種」とは道路上に敷設された軌道を走る路面電車などのことを指す。「内燃車」はエンジンで動く車両の事で、嘗てはガソリンエンジン車(ガソリンカー)も存在したが、安全性の観点から現在はディーゼルエンジン車(ディーゼルカー、気動車)のみが存在する。「無軌条電車」はトロリーバスのことである。
[編集] 試験
国土交通省が認可した動力車操縦者養成所(施設)で専門の教育訓練を受けるか、国土交通省動力車操縦者試験に合格しなければならない。
視力、色覚、心電図等のチェックをクリアする必要がある。かつては裸眼視力0.2以上という条件があったが、現在裸眼視力の規定は廃止された。矯正視力は1.0以上。
[編集] 試験科目
- 身体検査
- 適性検査
- 筆記試験
- 甲種蒸気機関車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 蒸気機関車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 乙種蒸気機関車
- 軌道運転規則
- 運転の安全の確保に関する省令
- 道路交通法及び道路交通法施行令
- 蒸気機関車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 甲種電気車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 乙種電気車
- 軌道運転規則
- 運転の安全の確保に関する省令
- 道路交通法及び道路交通法施行令
- 電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 甲種内燃車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 内燃車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 乙種内燃車
- 軌道運転規則
- 運転の安全の確保に関する省令
- 道路交通法及び道路交通法施行令
- 内燃車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 新幹線電気車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 新幹線鉄道の電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 第一種磁気誘導式電気車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 磁気誘導式鉄道の電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 第二種磁気誘導式電気車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 磁気誘導式鉄道の電気車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 第一種磁気誘導式内燃車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 磁気誘導式鉄道の内燃車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 第二種磁気誘導式内燃車
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
- 運転の安全の確保に関する省令
- 磁気誘導式鉄道の内燃車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 無軌条電車
- 無軌条電車運転規則
- 運転の安全の確保に関する省令
- 道路交通法及び道路交通法施行令
- 無軌条電車の構造及び機能
- 運転理論
- 一般常識
- 実技試験
- 速度観測
- 距離目測
- 制動機の操作
- 制動機以外の機器の取扱
- 定時運転
- 非常の場合の措置
[編集] 受験資格
- 20歳以上(学歴、経験を問わず。ただし、無軌条電車は、大型自動車第二種運転免許を取得している事)
[編集] 訓練・教習
前述の通り国土交通省認可の養成施設で専門の教育訓練(学科講習及び技能講習を行う第一類と学科講習を行う第二類がある。無軌条電車は第一類のみ)を受け、試験に臨むのが通例である。JRや大手民鉄は自社の施設を持っているが、中小民鉄の場合養成施設がないことが多く、他社に有料で委託することになる。このため、養成施設を持たないモノレール(新交通システム)事業者の運転士が他社の鉄のレールを走る電車で試験のための訓練をうけるケースもある(免許の種類が同じであれば可である)。もちろんその後自社線で訓練を行っていることは言うまでもない。
- 養成費用
- 前述のとおり個人的に取得する免許ではないので、免許取得費用は全て鉄道事業者が負担している。(ただし、免許証申請の際の諸費用については社員に負担させている会社もある)事業者は教習費用を負担した上で、教習中の社員に対して給与等も支給する。なお、教習中はその運転士教習生は仕事から抜けるわけであるから、現場が欠員となり他の者が代務(時間外労働)をすることになる。したがって「養成施設に支払う経費+教習生に支払う給与+代務要員の費用」が必要である。
- バスの場合、かつては会社の負担で大型2種免許の取得が多く行われたが、最近は既に免許を持っている人しか採用しない会社も多くなってきた。鉄道の場合個人による免許取得は事実上不可能であるから、個人の費用で免許を取得することはない。
- 新規開業の鉄道会社の場合、他社OBの運転士を採用する場合がある。違う会社であっても免許の種類が同じであれば、その免許は有効であるが、自動車の運転免許証と違い、免許証には「所属事業者名」が記載されており、基本的には記載された事業者が管理している路線以外での乗務は出来ないので、運転法規などの違いなどの教習・試験を終えた後関係書類を添付して免許証を運輸局に提出し、記載事項の変更(この場合は「所属事業者名」)を行わなければならない。
- 前述のとおり個人的に取得する免許ではないので、免許取得費用は全て鉄道事業者が負担している。(ただし、免許証申請の際の諸費用については社員に負担させている会社もある)事業者は教習費用を負担した上で、教習中の社員に対して給与等も支給する。なお、教習中はその運転士教習生は仕事から抜けるわけであるから、現場が欠員となり他の者が代務(時間外労働)をすることになる。したがって「養成施設に支払う経費+教習生に支払う給与+代務要員の費用」が必要である。
[編集] 免許の更新
- この免許は終身免許である。鉄道事業者では運転士に対して定期的に健康診断を行っており、乗務に耐えられないと判断されれば運転業務からは外されるが、免許そのものは有効である。もっとも運転士でなくなれば事実上無用となってしまう。もちろん「身分証明書」として使うことはできると思われる。
[編集] その他
営業線以外で鉄道車両を操縦(運転)する場合はこの免許は不要である。一般人を対象に有料で運転体験イベントを行っている鉄道会社(中小民鉄に多い)もある。運転士が指導して車庫内などで行うことが多い。
無軌条電車/第2種磁気誘導式電気車/第2種磁気誘導式内燃車の区分は、自動車の大型2種運転免許を持っていれば書類だけで取得可能である。本来事業者に属していないと取得出来ないはずであるが、一部運輸局で発行した実績があり、それが前例となって個人で取得可能となっている。詳しくは各地区の運輸局に問い合わせて欲しい。