加賀武見

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加賀武見（かがたけみ、1937年 9月8日 - ）は、日本中央競馬会の元騎手で、現在は美浦トレーニングセンターに所属する調教師である。青森県出身。増沢末夫とは同世代である。

[編集] 記録

騎手デビューは23歳（1960年）と遅かったが、デビュー1年目に58勝を挙げる。これは1987年に武豊に破られるまでの新人騎手最多勝記録であった。
八大競走初勝利は1961年（昭和36年）の第44回天皇賞(秋)に騎乗したタカマガハラ。クライムカイザーで第43回日本ダービー（1976年）を制した。
年間最多勝騎手に7回、関東年間最多勝騎手には8回輝くなど1960年～1970年代にかけて競馬界を代表する騎手であった。
1988年に調教師免許取得のため騎手引退。騎手生活の成績は8664戦1352勝（うち障害競走128戦45勝）。なお加賀は1987年度に新設された「1000勝以上の騎手は調教師免許試験1次試験を免除」の適用者第1号となった（現在はこの特例は廃止）。
翌1989年に厩舎開業。2005年終了時点の成績は2939戦158勝。重賞勝利はオンワードメテオによる東京ハイジャンプと新潟ジャンプステークスの2勝（2002年）。
その他珍記録として、皐月賞で「同一クラシック最多連続出場」を記録している。

[編集] 主な勝鞍

（旧八大競走に限る）

桜花賞（1965年ハツユキ）
優駿牝馬（1965年ベロナ）
日本ダービー（1976年クライムカイザー）
菊花賞（1968年アサカオー）
天皇賞・春（1965年アサホコ、1972年ベルワイド）
天皇賞・秋（1961年タカマガハラ、1974年カミノテシオ）
有馬記念　（1975年イシノアラシ、1978年カネミノブ）

[編集] 闘将加賀

当時の競馬会のポスターに「闘将」と書かれたように勝利に対する執念が強い騎手であった。クライムカイザーで勝った日本ダービーでは本命だったトウショウボーイを横切るかのように交わした。これには、事前のインタビューで当時のトウショウボーイの主戦ジョッキー、池上昌弘が漏らした「トウショウボーイは、寄られると怯む」という失言と、それを聞き漏らさなかった加賀のプレーがもたらした「名騎乗」である。又、第24回有馬記念（1979年）では騎乗していたカネミノブが最後の直線でメジロファントム（勝ったグリーングラスとはハナ差の2着）にカットされた事で怒り心頭、騎手仲間から金を借りてまで審議に訴えた事もある（結果は順位変わらず）。更に、第42回皐月賞（1982年）にはゲイルスポートに騎乗。断然人気のハギノカムイオーと激しい先行争いを敢行し共に大敗（カムイオー16着、ゲイル19着）。有力馬に楽な競馬をさせない騎手でもあった。

[編集] 弘法も筆の誤り

勝気の騎乗スタイルで幾つもの栄光を味わった加賀であるが、其れが仇となった年があった。1967年 6月25日、加賀はメジロカンゲツに騎乗し日本海ステークスに参戦した。この馬は脚部に致命的欠陥を抱え騎手のなり手に難渋していた。だが、当時全盛期を迎えていた加賀だけは『俺なら大丈夫』と思い自らすすんで騎乗。但し、流石に最悪の事態を危惧したのか、同レースに騎乗する先行馬に騎乗する騎手に、メジロカンゲツに近付かない様に注意を与えた上での出走となった。加賀の危惧は最悪の形で加賀自身に襲い掛かる。残り100メートルと言う勝負所でメジロカンゲツは前脚を骨折、落馬した加賀の真上に倒れ込んで来たのだ。幸運にも、メジロカンゲツが無事な脚で必死に踏ん張っている間に、夢中で現場に駆けつけた弟弟子・矢野照正に救出され、加賀は九死に一生を得た。後に、「（一本足で先輩を庇うメジロカンゲツを見て）涙が出た」と矢野に言わしめたエピソードであった。だが、このアクシデントによる戦線離脱が致命傷となり、全国リーディングジョッキーの座を関西所属・高橋成忠に奪われたのである。

[編集] 加賀武見とシンザン

シンザンが勝った第10回有馬記念（1965年 12月26日）は加賀の執念が詰まったレースであろう。この時加賀は3番人気のミハルカスに騎乗。逃げ馬だったミハルカスは最後の直線でシンザンを馬場の悪いインコースへ追いやるために外へ出した。しかしシンザンは内どころか外ラチ一杯から追い込みに入る。この時一瞬だがシンザンが視覚から消えたために実況も一瞬言葉を詰まらせる場面があった（見ていた人は「シンザンが埒に激突した？」と思ったらしい）。結局シンザンはミハルカスを１3/4馬身差をつけてゴール。以後、シンザンが通ったコースは「シンザンストレート」と呼ばれ、GIでこのコースを通って勝った馬はいなかった。

この有馬記念にシンザンは主戦騎手の栗田勝ではなく松本善登が騎乗した。直前のオープン競走（1965年12月18日中山競馬）の出走を巡って出走に消極的な栗田と武田文吾調教師が対立。結局武田が押し切る形で出走したが（2着）、納得いかない栗田は他場で騎乗予定があったにも関わらず、レース前日に小料理屋で泥酔し騎乗が不可能に。その後翌週に迫った有馬記念の騎手に加賀の騎乗を打診した。しかし加賀は既にミハルカスの騎乗が決まっており、結局武田の弟子だった松本が騎乗することとなった。