分裂酵母
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分裂酵母 (ぶんれつこうぼ) は菌類子嚢菌の単細胞性の真核生物で、二分裂によって増殖する酵母の総称。出芽酵母とは3から4億年以上前に分化したと考えられ、これは分裂酵母と動物との違いに比べられるほど大きな差と言われる。 系統的には Schizosaccharomyces japonicus (Hasegawaea japonicus) と S. octosporus (Octosporomyces octosporus)、S. pombe の三つに大きく分かれる。
[編集] Schizosaccharomyces pombe
1893年に P. Lindner によって東アフリカの雑穀を原料としたビールから単離された最初の分裂酵母。pombe はスワヒリ語でシコクビエなどの雑穀を用いて作られた伝統的なビールの意。 通常一倍体で生活し環境条件等によって接合、減数分裂、胞子形成を行う。分裂の周期は約3時。 一倍体は長さ13 μm、直径3 μm程度、二倍体はそれぞれ22、4 μm程度の筒状の形をし、その中央に核を持つ。DNA染色を行った細胞では偏った核小体のため核が三日月型に観察できることがあり、これは間期を区別する特徴として使われる。三本の染色体を持ち、第一染色体は5.7 Mb、第二染色体は4.6 Mb、第三染色体は3.5 Mbで、全体で13.8 Mbのゲノムを持つ。 2002年真核生物としては6番目になるゲノム配列決定が行われた。4割の遺伝子がイントロンを持つことや、蛋白質のアミノ酸配列のヒトとの類似度も出芽酵母より高いことなどから、出芽酵母よりヒトに近いモデル生物とされることもある。また、この生物を材料として細胞周期の理解が大きく前進した。
Schizoが「分裂」を意味する。(cf.精神分裂病Schizophrenia)