先付け
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先付け(さきづけ)とは、麻雀用語のひとつ。「先に役が確定すること」をいう。
「役を先に付ける」という意味だが、もともとは全く逆の「先に副露して、後から役を確定させる」ことを指していた。これは金融用語の「先の日付けが記された小切手」を「先付け」と呼んでいたのが転用されたもので、「先に小切手を振り出し、後から現金になる」ことを指していた。いつの間にか原義が忘れられ、「先付け」は原義とは逆の意味で使われるようになり、原義のほうは「後から役を付ける」ので「後付け」(あとづけ)と呼ばれるようになった。
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[編集] 役の確定
先付けでいう「先」には2つの意味があり、ひとつは「最初の副露で役が確定すること」を指し、もうひとつは「和了する前に役が確定すること」を指す。後者の「役が確定する」にも2通りの解釈があり、人によって(あるいは面子や雀荘によって)「どの待ち牌でも同じ役がつくこと」または「どの待ち牌でも役が1つ以上つくこと」と異なっている。これが完全先付け(後述)のルールに混乱をきたしている原因のひとつともなっている。
[編集] 最初の副露で役が確定する
「最初の副露で役が確定すること」例を以下に示す。
この手牌の場合、先に役牌のをポンし、後からをチーしているので「最初の副露で役が確定している」から先付けである。
逆に、この手牌の場合は先にをチーし、後からをポンしているので「最初の副露で役が確定していない」ことになり、先付けではなく後付けとなる。
この手牌の場合、最初に副露したが678の三色同順に絡んでいるので、「最初の副露で役が確定している」と考え、先付けとする。残りの、役に絡んでいるが副露していない手牌(この場合はと)は、待ち形になっていない限り、最初の副露を行ったときに既に揃っていたと考える。
逆に、この手牌の場合、最初に副露したがどの役にも絡んでいないので、「最初の副露で役が確定していない」ことになり、後付けとなる。
[編集] 和了する前に役が確定する
「和了する前に役が確定する」例を以下に示す。
この手牌ではの多面張ではあるが、で一気通貫となるものの、 では、何も役がつかない。このような場合、「和了する前に役が確定していない」ので、先付けではなく後付けとなる。
逆に、この手牌では待ちがの1つしかなく、「和了する前に役が確定している」ので先付けである。
この手牌の待ちはであるが、で平和のみ、で断ヤオ九のみ、で平和・断ヤオ九となる。「どの待ち牌でも役が1つ以上つくこと」と考える場合は、平和か断ヤオ九の少なくとも一方の役が必ずつくので「和了する前に役が確定している」と考え、先付けとなるが、「どの待ち牌でも同じ役がつくこと」と考える場合は、すべての待ち牌に共通する役がないため、「和了する前に役が確定していない」と考え、後付けとなる。人によって解釈が異なる例である。この形を王手飛車(おうてびしゃ)と呼ぶことがある(将棋用語からの転用)。
[編集] 完全先付け
完全先付け(かんぜんさきづけ)とは、和了を先付けに限り、後付けの和了を認めない(チョンボとする)ルールである。別の解釈として、「和了資格(縛りを満たす役)の確定しない鳴き・和了を否定するルール」が完全先付けである。完先(かんさき)と略され、下記の食い断なしのルールと併用する場合には、一般にナシナシと呼ばれることもある(ナシナシと完全先付けを区別しない人もいる)。対義語はアリアリ(食い断アリ、後付けアリ)。
完全先付けでは、後付けの和了を認めないほかにも以下の制約があるのが一般的である。
- 食い断なし(断ヤオ九を門前限定役とする)
- 和了資格役があれば、一翻を認めるルールが主流。大阪の雀荘では、食い断を認める店も多い。
- ほかに役がない偶然役(嶺上開花・海底摸月・河底撈魚・槍槓)のみの和了禁止
- ナシナシではこれを認めるルールも多いが、完全先付けでは「和了資格が確定しない」ので認められない。
- 門前清自摸和のみも認めないルールが本来の完全先付けであるが、特例で許容するルールも普及している。
- 振聴立直・立直後の見逃し禁止(流局時にチョンボ)
- リーチ以外でも、振聴を認めないルールもある。
- 同順内振聴直後の自摸和了禁止
- 完全先付け以外でも、ブー麻雀などでは認めない雀荘も多い。
完全先付けは昭和30年代後半から昭和40年代前半あたりに誕生したといわれているが、詳細は不明である。現在、完全先付けについては統一されたルールは存在せず、完全先付けのプロ麻雀団体や競技麻雀団体もないため、ローカルルールやハウスルールのバリエーションが非常に多い(ナシナシと完全先付けの意味が同じか違うかさえ統一されていない)。そのため、プレイヤーにより見解の相違が起こることが多く、トラブルの原因になる。
現在、フリー雀荘のルールは関東ではアリアリにほぼ統一されている。一方関西やその他の地方では4人打ちについては関東流のルールが進出していることからアリアリが多く(アリアリを「東京麻雀」と呼んでいる雀荘もわずかながら存在する)、一方で西日本が本場とされている3人打ちでは(4人打ちに比べて非常に和了しやすいため)完全先付けが多い傾向にある。
仲間内の麻雀ルールは千差万別であり、特に「○○地方に完全先付けが多い」というような地域ごとの傾向はないと思われる。完全先付けは「門前での役作りをじっくりと楽しみたい」という人には好まれている一方で、スピードや駆け引きの技術を重視する人にはあまり好まれていない。最近は後者が重視される傾向にあり、またテレビゲームやゲームセンターの麻雀でもアリアリが主流であるため、仲間内の麻雀でも完全先付けは減少傾向にある。