人身保護法 (日本)
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通称・略称 | なし |
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法令番号 | 昭和23年法律第199号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 公法 |
主な内容 | 不当に奪われた人身の自由の回復 |
関連法令 | 日本国憲法、刑事訴訟法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
人身保護法(じんしんほごほう)は、不当に奪われた人身の自由を回復することを目的に制定された日本の法律を言う。英米法のヘイビアス・コーパス(人身保護令状)に由来する。
目次 |
[編集] 目的
基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速、かつ、容易に回復せしめることが人身保護手続の目的である。
[編集] 内容
全26条。法文上、対象は人身の自由が奪われた場合(拘束)一般である。
[編集] 請求
法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者(被拘束者)が請求ができるほか、誰でも被拘束者のために人身保護の請求をすることができる(法2条)。請求は弁護士を代理人としてするのが原則であるが、特別の事情がある場合にはその事情を疎明した上で請求者がみずから行うこともできる(法3条、規則6条)。人身保護請求の管轄は、被拘束者、拘束者又は請求者の所在地を管轄する高等裁判所又は地方裁判所である。請求には、被拘束者の氏名、請願の趣旨、拘束の事実、知れている拘束者、知れている拘束の場所を明らかにした上で、疎明資料を提供しなければならない(法5条)。この要件を満たさない請求は却下される(法7条)。また、人身保護は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り請求することができる。さらに、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない(規則4条)。
[編集] 準備調査
裁判所は、審問期日における取調の準備のため、拘束者、被拘束者、請求者及びその代理人その他事件関係者のうち拘束の事由その他の事項の調査について必要であると認める者を審尋して、準備調査を行うことができる(法9条、規則17条)。準備調査の結果(準備調査を経るまでもない場合には準備調査を省略して)、請求の理由のないことが明白なときは、裁判所は審問手続を経ずに、決定をもって請求を棄却する(法11条)。
[編集] 人身保護命令
請求が却下又は棄却された場合を除いて、裁判所は、審問のために請求者又はその代理人、被拘束者及び拘束者を召喚する。拘束者に対しては、被拘束者を審問期日に出頭させることを命ずる(人身保護命令)とともに答弁書の提出を命ずる(法12条)。
[編集] 審問
審問期日では、被拘束者、拘束者、請求者及びその代理人の出席する公開の法廷において、請求者の陳述及び拘束者の答弁を聴いた上、疎明資料の取調を行う。また、拘束者は拘束の事由を疎明しなければならない(法14条、15条)。
[編集] 判決
審問の結果、人身保護請求に理由がないときには、請求棄却の判決が下され、被拘束者は拘束者に引き渡される。他方、人身保護請求に理由があるときには、被拘束者は判決をもって釈放される(法16条)。
[編集] 子の引渡しにおける人身保護請求
夫婦関係が破綻した後の子の親権や監護の争いを発端として、子を一方的に奪われたと主張する親が、子を被拘束者、現に子を手元に置いて監護している者を拘束者として、人身保護を請求する事例がある。判例は、両親ともに共同親権者である場合(離婚前)は、拘束者による幼児の監護・拘束が権限なしにされていることが顕著であるといえるためには、その監護が請求者の監護に比べて子の幸福に反することが明白であることを要する(最判平成5年10月19日民集47巻8号5099ページ)とする一方、子の監護権を有する者が監護権を有しない者に対し、人身保護法に基づき幼児の引渡しを請求する場合には、幼児を請求者の監護の下に置くことが拘束者の監護の下に置くことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものでない限り、拘束の違法性が顕著であるというべきである(最判平成6年11月8日民集48巻7号1337ページ)とする。