ロブサン・ランパ

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ロブサン・ランパ（Tuesday Lobsang Rampa）は、『第三の眼』(だいさんのめ、The Third Eye)の著者として知られる人物である。

「チベットのラマ僧が生い立ちを語る」の副題を持つ同書は、1956年ロンドンのセッカー＆ワーバーク社から出版され、世界中でベストセラーになったが、実は偽書であった。

著者はチベットの高位ラマ僧だとされていたが、著者の本名は生粋のイギリス人シリル・ヘンリー・ホプキンズ（もうひとつの別名はクアン・スオ博士(自称)）であった。

自分をラマ僧であると思い込んだホプキンスは、クアン・スオ博士の筆名で神秘主義的小説を書き、出版社に持ち込んだ。しかしあえなく没にされ、その際に編集者から言われた「あなたが本当にラマ僧なら、なぜ自分の半生記を書かないのですか？」とのコメントに忠実に、こんどはロブソン・ランパの筆名で「自分の生い立ち」を執筆した。

ロブソン・ランパとしての彼は、日本軍と中国共産党軍に迫害されて英国に脱出してきたとのふれこみで、当時秘密のベールに包まれていたチベットの異国的な様々な習俗を紹介した。例えば「大きな凧に乗って空を飛ぶ」、あるいは「額に開孔手術をうけ、銀色の木片を挿入された。それにより神秘的な第三の眼が開いた」などである。

英国にいたるまでの動きを彼は以下のように著述している。

1938年、中国空軍の軍医として日中戦争に従軍中、撃墜されて捕虜となるが脱走。
1944年、ビルマで日本軍の捕虜となり、広島の収容所で拷問を受けるが、原爆投下のどさくさにまぎれて脱走。
漁船を盗んで朝鮮半島に渡り、シベリア鉄道で大陸横断を企てるもモスクワでソ連兵に逮捕される。
監禁、投獄、国外追放された後、ポーランド、ドイツ、フランス、アメリカを放浪。
1951年にイギリスに亡命する。

この本は大ベストセラーになったため、謎の執筆者であるロブソン・ランパについても様々な調査・追跡が行われた。私立探偵まで動員されたその調査の結果判明した事実、それはロブソン・ランパの正体がイギリス人ホプキンスであること。また彼はチベット旅行はおろか英国本土を離れたことすらない市井の職人であったことなどが暴露された。

ある意味追い込まれた彼は、あごひげを生やし、剃髪したラマ僧姿の写真を公開するが、専門の研究者から「ラマ僧がひげを生やすことはありえない」などの厳しい指摘を受け、薮蛇となった。

しかし、正体が明らかになった後も彼は、数十冊の著作を発表している。一連の著作は「ラマ僧が自分に乗り移って書いたものなのだ」と主張して……。