ミヤベイワナ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミヤベイワナ | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | ||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||
Salvelinus malma miyabei | ||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||
ミヤベイワナ |
ミヤベイワナは、北海道の然別湖にのみ生息するサケ科イワナ属の淡水魚で、オショロコマの亜種。
約1万5千年前に大雪山系の火山噴火により現在の然別湖が生まれた時に、川と海を往復していたオショロコマが湖に陸封されて、湖沼内で独自の進化を遂げたもの。和名「ミヤベイワナ」は、この魚を最初に発見した、札幌農学校(現:北海道大学)の教授であった宮部金吾にちなんで、日本のサケ科魚類の研究の第一人者の一人である大島正満が1938年に命名したもの。大島は、ミヤベイワナの記載論文で、日本産イワナ類をオショロコマ、アメマス、ヤマトイワナ、ニッコウイワナ、ミヤベイワナの5種とした。つまり、ミヤベイワナはオショロコマとは別種として登録された。
オショロコマとの違いとしては、尾鰭(おびれ)・胸鰭(むなびれ)が大きいことと、鰓(えら)の中にある鰓把(さいは)の数が若干多いことなどが挙げられる。鰓把の数がオショロコマよりも若干多いのは、ミヤベイワナが然別湖に生息するプランクトン類や昆虫類を主食とするようになったことによるもの。繁殖期には、オスの体つきは、背中が盛り上がり、吻部は、いわゆる「鼻曲り」状になり、カラフトマスを思わせるようなものとなる。全長25~30cmほどのものが主流だが、湖に下って成長する湖沼型は、大きなものでは 50 ㎝ 以上に成長する例もある。
繁殖時期は秋で、然別湖の北岸に流入するヤンベツ川に大群で遡上して、川底の砂利で産卵・受精が行なわれる。孵化した稚魚は卵黄の栄養分を吸収した後に浮上生活に入り、ヤンベツ川でプランクトンや小型昆虫類を食べながら成長して、翌年春に一部の群以外の大部分が然別湖へ下り、湖沼内でプランクトンや昆虫類を主食としながら回遊生活を送るようになり、成長ののち、約4年で成熟する。オス、メスともに、成熟後は一生のうちに数年連続で繁殖行動を行なう。なお、ヤンベツ川にて成長する河川残留型には、オスが多い。
ミヤベイワナは、北海道の天然記念物に指定されて保護され、毎年のように鹿追町が運営する孵化場(ヤンベツ川上流の山田温泉の近くにある)で人工増殖事業が行なわれている。鹿追町内の民間養魚場で養殖されたものは食用にもされ、美味である。これは、然別湖畔温泉の2軒の温泉ホテルで夕食時の料理の一品として提供され、塩焼き、唐揚げなどとして供される。なお、然別湖とヤンベツ川は禁漁水域であるが、1年に1度、7月頃に、期間と人数を限定し、釣り上げる匹数を制限した上で、ミヤベイワナ釣りが解禁される。