マリアナ海溝
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マリアナ海溝(-かいこう、Mariana Trench)は世界でもっとも深い海溝である。場所は北西太平洋でマリアナ諸島の東、北緯11度21分、東経142度12分に位置する。太平洋プレートはこのマリアナ海溝においてフィリピン海プレートの下にもぐりこんでいる。かつてマリアナ海溝の最深部の深さはソビエト連邦の「ヴィチャージ号」が計測した11034mであるとされていたが、現在ではこの記録の正確性に疑いがもたれており、最新の計測では海溝の最深部は水面下10911mであるとされている。これは海面を基準にエベレストをひっくり返しても山頂が底につかないほどの深さである。マリアナ海溝の最深部は地球の中心からは6366.4kmにある。
[編集] 調査の歴史
マリアナ海溝の調査は20世紀に入ってはじめられた。1925年、日本の測量船「満州号」が重りのついたケーブルをおろして測定する方法(鋼索測深)によりマリアナ海溝の海域において9814mを測定、この海域が世界でもっとも深い部分であることを世界に知らしめた。その後、マリアナ海溝の本格的な深度調査を行ったのはイギリス海軍の測量船「チャレンジャー8世号」である。1951年にチャレンジャーが測定に成功した最深部分はその名にちなんで「チャレンジャー海淵」と呼ばれることになった。このとき、チャレンジャーは反響した音波を測定する方法(音響測深)で北緯11度19分、東経142度15分において10900mを計測した。しかし、この方法は手動計測であったため誤差があり、現在ではより厳密な10863mという値に修正されている。
1957年、ソ連海軍艦艇「ヴィチャージ」が深度11034mの計測に成功したと発表し、「ヴィチャージ(ビチアス)海淵」と名づけた。この記録は長らくマリアナ海溝の深度の公式記録とされていたが、その後何度調査を行ってもこれほどの深度は測定されなかったため、西側諸国によって「マリアナ海溝の神秘」と揶揄されることになった。現在ではこの記録の正確性に疑問が持たれており、公式記録としては認められていない。
1962年には調査船スペンサー・ベアード号が10915mの測定に成功している。しかしマリアナ海溝の最深部については米ソの測定値をめぐって議論が続いたため、1984年に日本の調査船「拓洋」が最新式のナローマルチビーム測深機を用いて測定を行い、10924m(厳密には10920m±10m)という値を得た。現在のところ、多くの深度測定値の中で確実に裏づけがとられたものは1995年5月に日本の無人探査機「かいこう」が記録した10911mが最高であり、それ以上の値はまだ絶対確実とは言いがたい。
1960年1月23日、アメリカ海軍の協力のもとにオーギュスト・ピカールが開発した潜水艇(バチスカーフ)「トリエステII号(IIはローマ数字の2)」にドン・ウォルシュ大尉とピカールの息子ジャック・ピカールが搭乗してマリアナ海溝内部を目指した。バチスカーフは鋼鉄の重りとガソリンの浮力装置を用いて深度を調整できるよう設計されていた。二人は人類の到達した最深記録の達成に成功した。二人が世界記録を達成したことは間違いないが、その正確な深度については諸説あり、確証が得られていない。二人は海溝の底に到達したといい、その時バチスカーフ内部の水深計が示していたのは11521m(後に10916mと修正)だったと主張している。さらに二人は海溝の底でヒラメやエビなどの生物が生息しているのを発見して驚いたという。マリアナ海溝の最深部分における水圧は実に1086バール(108.6メガパスカル、1c㎡に1086kgの重さがかかる)にのぼる。