マグナム望遠鏡
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マグナム望遠鏡(マグナムぼうけんきょう)とは、東京大学COE初期宇宙研究センター(現:ビックバン国際研究センター)のチームが、アメリカ合衆国ハワイ州ハレアカラの山頂に建設した口径2メートルの望遠鏡のこと。マグナム (MAGNUM) とはMulticolor Active Galactic Nuclei Monitoringの略称であり、その名称の通り、活動銀河核(クェーサー)の多波長モニター観測のことである。
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[編集] 概要
具体的には、近赤外~遠赤外領域、さらには可視光線領域、近紫外線領域の波長帯を用いて、ダイナミックに活動する銀河の内コア部分に相当する領域を専門的に観測する装置である。例えば、2つの銀河が衝突することによって生じるコアの爆発や誕生まもない銀河の中心領域における超新星爆発、巨大ブラックホールによって生じていると思われるジェット流を観測することによって銀河の謎を解明することを目的に建設された。
現在までの観測状況によれば、遠方銀河における超新星爆発のドップラー効果の観測によって、宇宙は約60億年前に第2次インフレーション期に入っていると推定されている。
[編集] 本体性能
名称 | データ |
---|---|
主鏡口径 | 202cm |
主鏡 f比 | 1.75 |
合成 f比 | 9 |
光学系 | リッチークレチアン式 |
視野 | 33.3秒角 |
架台形式 | 経緯台 |
駆動方式 | フリクションドライブ |
絶対指向精度 | 2秒角 |
追尾精度 | 0.3秒角 5分角以内 |
結像性能 | 80% 0.6秒角 |
焦点 | ペントカセグレイン式 |
[編集] マグナム望遠鏡の特徴
モニター観測(※)を目的としているため、完全な自動化が行われている。望遠鏡ドームの近くに設置した観測室では、気象観測等を行うことで、望遠鏡の観測を行う判断を自動的におこなえる仕組みとなっている。また、異常な現象を捉えた時には、観測データをインターネットを活用してメール等で転送ができる仕組みになっているため、観測者はいつでもどこでも観測結果を知ることができる。
(※)モニター観測とは、ある定まった観測点を常に観測し続けることである。その目的は、突発天体現象を一刻も早く観測し、異常現象を捉えることである。具体的には、活動銀河核(クエーサー)等において生じる、超新星爆発や新星現象等を捉えることによって、その中心部にあると思われるブラックホールの活動等を捉えることにある。
(Note.)SDSS計画(Sloan Digital Sky Servey)で観測が行われている、望遠鏡群(アパッチポイント天文台等)は、全天走査を目的としているため、広視野かつ高分解能が求められている。近年の観測は、全天走査によって、より多くの天体現象を観測することが重要となってきており、様々な波長で多点観測装置の開発が行われ、その装置利用によって観測効率を上げるようになってきている。本マグナム望遠鏡でも、広視野観測を重視しており、一晩でこれまで報告されてきた、様々な活動銀河核(クエーサー)を一気に観測できるようにプログラムが組まれている。
[編集] 関連項目
- 東京大学 - 国立天文台
- 宇宙物理学 - 宇宙のインフレーション
- 天体望遠鏡