ポケットモンスタークリスタル ライコウ雷の伝説
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『ポケットモンスタークリスタル ライコウ雷の伝説』（ポケットモンスタークリスタル ライコウいかずちのでんせつ）とは、テレビアニメ『ポケットモンスター』の番外編作品である。略称としては「ライコウ伝説」、または「ライ伝」が一般的。初放映日は2001年12月30日。
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注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 概要
2000年12月30日に放映された『ポケットモンスター ミュウツー! 我ハココニ在リ』に続く、ポケットモンスター年末特番作品の2作目。放映時間は70分。メインストーリーの主人公であるサトシたちは一切登場せず、物語はケンタという少年を中心に展開されている。
[編集] あらすじ
“かざんポケモン”バクフーンたちと旅を続けている少年・ケンタは、道中たどり着いたポケモンセンターで幼馴染のマリナと再会を果たす。“よなきポケモン”ムウマを連れたマリナは、アイドルトレーナーを目指し修行を続けているという。
久しぶりの再会に、お互いのレベルアップを確かめ合おうとポケモンバトルを始める2人。だが白熱のさなか、突如として凄まじい雷鳴が轟き、雷雲が立ち込め稲妻が走る。ただならぬ雰囲気に何かを感じたのか、雷鳴のほうへと飛び出すムウマたち。慌てた2人はそれを追う。
時同じくしてロケット団員・バショウとブソンは、ポケモンセンターからほど近い荒野にて“クリスタルシステム”を起動する。稲妻を呼び寄せ、そこから放射されるエネルギーに惹かれ、クリスタルシステムの下に集まる電気ポケモンたち。そんなポケモンたちを捕獲しようと、巨大な秘密メカ・チキンウォーカーを操り襲いかかるブソン。ケンタとマリナはそれを目撃してしまう。
「何やってんだ、あいつら!」
飛び出そうとするケンタ。だがそれよりも少し早く、何者かの咆哮が大地を揺るがした。
「来ましたか……」
待ち望んでいたかのようにつぶやくバショウ。小高い丘に浮かび上る、電気を纏ったシルエット。
空を突き破る雷とともに、“いかずちポケモン”ライコウが現れた。
[編集] 登場人物
（ポケットモンスター (アニメ)の登場人物も参照）
[編集] 主人公サイド
- ケンタ（声優:野島健児）
- ポケモンを育てポケモンとともに強くなっていく、この世界ではごく普通の少年。マリナのことが気になる様子。ウツギ博士からもらったポケモンはヒノアラシ（バクフーンに進化）。本人も公言するとおり性格は直球一本槍で、テレビアニメに見られる典型的な熱血キャラといえる。手持ちポケモンはバクフーン、スピアー、その他合計６匹。
決め台詞は「オッケー、カンペキッ!」
- マリナ（声優:村井かずさ）
- アイドルトレーナーを目指して修行している少女。四天王のチャンピオンであるワタル（本編では登場せず）を様付けするなどかなり彼を好いているが、ケンタのことが好きと匂わせるような言動も多々見受けられる。ケンタに「見てるこっちが恥ずかしい」と評されるほど天真爛漫で、ポケモンを繰り出すときには基本的に振り付けを欠かさない。ウツギ博士からもらったポケモンはワニノコ（アリゲイツに進化）だが、出番はムウマよりも少ない。ダイヤモンド・パールにてトップコーディネイターになったことが明らかになった。（雑誌広告にてポケッチを宣伝。）手持ちポケモンはムウマ、アリゲイツ、プリン。
- ジュンイチ（声優:阪口大助）
- 登場の仕方からセリフのひとつひとつに至るまで生粋の三枚目キャラ。「マリナちゃんはオレが彼女にするんだからな」と、ケンタに一方的な宣戦布告をするほどマリナのことが好き。ウツギ博士からもらったポケモンはチコリータ（メガニウムに進化）。後に本編のシロガネリーグにて再登場しサトシとバトル、激戦の末引き分けるに至った。手持ちポケモンはメガニウム（マリルリとレアコイル、ニョロゾはこの時点では未登場）
- ウツギ博士（声優:井上和彦）
- ジョウト地方のワカバタウンに研究所を構える研究者。本編でも何度か登場している。研究熱心さゆえか周りの状況が見えなくなる場面も。友人のクドウをケンタたちの下に派遣した。
- ミナキ（声優:川田紳司）
- ポケモンにまつわる伝説を研究している青年。紫のタキシードと白マントを着用している。スイクンハンターの自称のとおり、特に伝説のポケモンであるスイクンに入れ込んでいる。エンジュジムのリーダー・マツバの友人で、アニメ本編でも登場した。激昂するケンタを落ち着かせるなど、ピンチでもわりと冷静な態度を保つ。手持ちポケモンはフーディン。
- クドウ（声優:布川敏和）
- ウツギ博士やミナキの友人。浅黒い肌と服装が登山家を彷彿させる。ウツギ博士の要請でケンタたちの下に駆けつけた。
[編集] 登場人物（ロケット団）
- バショウ（声優:森川智之）
- ロケット団特務工作部に所属する工作員で、ライコウ捕獲作戦の実行犯。敬語口調がかえって冷徹さを醸し出す。ロケット団員にしては華奢な体つきだが、トレーナーとしての腕は確か。ブソンとは対照的に冷静沈着・論理的で情報処理に長ける。モチーフはキツネ。名前の由来は松尾芭蕉から。手持ちポケモンはハガネール。
- ブソン（声優:檜山修之）
- ロケット団特務工作部に所属する工作員で、ライコウ捕獲作戦の実行犯。激情家だが戦況を見極める分析力も備えている。バショウとは対照的に大柄でがっしりした体つきをしており、機械操作技術も高い。二足歩行メカ“チキンウォーカー”を駆る。モチーフはタヌキ。名前の由来は与謝蕪村から。手持ちポケモンはエアームド、ベトベトン。
- シラヌイ博士（声優:中村秀利）
- ロケット団に身を置く狂気の天才科学者。ライコウ捕獲のために電気エネルギーを完全に吸収し無効化する装置“クリスタルシステム”を開発した。この装置の出来栄えから察するに、科学者・技術者として相当優秀な人物であることは想像に難くない。後に本編にも再登場し、ポケモンを強制進化させる“進化促進電波”を開発。その後は姿を見せていない。奇抜な髪型をはじめとするミステリアスな雰囲気が印象的。
[編集] 登場メカ・用語など
- クリスタルフィールド・ジェネレーションシステム
- シラヌイ博士を中心とするロケット団研究班が開発した紫色の巨大なクリスタル。通称クリスタルシステム。クリスタル内部に組み込んだエナジーダイオードの働きにより、電撃を受けると自動的にフィールドを展開、電気エネルギーをすべて吸収し完全に無効化する。伝説のポケモンであるライコウの電撃でさえも歯が立たないほどの性能を見せつけた。自律プログラムが内蔵されており、コントロールシステムとの交信が途絶えると黒く変色し、自動で任務を遂行する「ブラックホールクリスタル」というモードへと変化する。弱点は電気以外のエネルギーを吸収することも反射することもできず、炎などの電気エネルギー以外の攻撃を受け続けるとフィールドを形成するエネルギー波が乱れ爆発を起こしてしまうこと。
- チキンウォーカー
- ブソンが操る二足歩行メカ。ダチョウの胴体を模したような形状。機体前部から飛び出す捕獲用アームを装備し、尻尾の先には撤退時などに使用する煙幕放射器を備え、手元のパネルはクリスタルシステムのコントロール装置を兼ねている。ライコウの前足の攻撃力を220、かみくだくを240と計算していたことなどから、ポケモン世界にも攻撃力の概念がある程度存在していたことがわかる。
- VTOLオスプレイ
- 読み方はブイトール・オスプレイ。冒頭でバショウとブソンが乗っていたティルトローター式の垂直離着陸機で、現実世界にも存在する。赤く光る信号装置を用いてロケット団の秘密施設と交信していた。
- ライコウ輸送機
- 捕獲したライコウを輸送するためのカーゴルーム式輸送機。貨物室の中では電撃を放射してもすべて吸収してしまうように設計されている。チキンウォーカーの収容・修理も可能。具体的な名称は明かされていない。
- ロケット団特務工作部
- 伝説のポケモンの捕獲などを遂行する部隊。通常のロケット団員とは異なりグレーの制服を着用しており、帽子は被っていない。ライコウとの遭遇率を87％と細かく計算したり、クリスタルシステムなどの装置を用意したことなどから、行き当たりばったりの集団ではないことが容易に推察できる。
- ライコウ伝説
- 昔は人間と共存していたライコウが人間と袂を分かつこととなった経緯として伝わる物語。作中でミナキ・クドウが解説している。
[編集] 製作経緯に関する仮説
放映当時、アニメ版ポケットモンスターの人気には陰りが見えていた。長期シリーズの宿命ともいえるマンネリ化からかファンは減少し、1997年～2000年に15％以上を記録した平均視聴率も目に見えて落ち込んでいた。そんなスタッフの苦悩のさなかに生まれたのがこの作品である。主人公をサトシに変えてケンタとしたのには、実際に主役を交代した場合に人気が取れるかといったテストのためとも考えられる。しかし視聴率は伸び悩み、主役交代が行われることもなく、説の真偽は未だに不明である。バショウやブソンは冷酷非情な精鋭として描かれているため、毎回主人公相手に任務を失敗するハメになるレギュラーとするのはもとから無理があり、最初から交代までは考えていなかったのではないかとの言も見られた（ただし、主人公が交代したからといって特務工作部の2人を毎回出す必要はないとは言えるが）。また、そもそも金銀編開始と同時に主役交代が行われなかったのは、海外市場での販売戦略のためではないかという意見と、サトシの人気が確立されたためだとする意見とがある。
[編集] その後
ジュンイチやシラヌイ博士などごく一部のキャラは本編で再登場したが、ケンタやマリナ、バショウやブソンの出番はなかった（ただし、ケンタやマリナに関しては、本編でも会話の中で出てきているので、これから先登場する可能性はある）。 しかし、2006年夏公開の「ポケモンレンジャーと蒼海の王子マナフィ」のオープニングシーンではマリナがアリゲイツとムウマを連れて走っている場面と、バショウとブソンとシラヌイ博士がレックウザを捕獲している場面がそれぞれ数秒ずつ映し出されている。 この作品の続編が作られないことに関しては雰囲気がポケモンらしくないとの指摘があったのではないかとする説や、単に製作する機会が得られないからではないかとの説に分かれる。数年の時を経てDVD化され、また一部のシーンでは絵柄の間違いを修正され（ケンタのポケギアのマークなど）箱の絵柄も一新されたことなどから、少なくとも製作側に「黒歴史」として扱われているわけではないようではある。 現在アメリカとイギリスでもポケモンの番外編としてＤＶＤが発売されており、イギリスでは一部の雑誌で取り上げられ好評価を得ていた。
[編集] 評価
放映当時は視聴率が振るわず、テレビ東京系列以外の放送局では放送されなかったところが多かった。また、アニメ本編がアドバンスジェネレーションに移行されてからは宣伝がなされることもなく、知名度が低いため評価の機会さえ少ないのが現状である。
しかし、後にレンタルして鑑賞したポケモンファンからは否定的評価があまり見られず、比較的高い評価が多くなされているのは特筆すべき点である。
本編とは一味違ったハードな世界観や大人びた主人公たち、シリアスな悪役、バトル描写に喝采を送ったファンもおり、続編を望む声も散見される。特にバショウとブソンは自分の行為を善と判断すべき根拠に基づき行動し、トレーナーとしての腕も態度も主人公たちの上を行き、衝突のたびに緊張感ある駆け引きを繰り広げるというポケモン界には異質ともいえる悪役で、ムサシやコジロウといった「失敗ばかりで憎めない悪役」とは毛色を変えた描写に、その容姿もあいまって興奮させられたというファンも多い。
もっとも肯定派も一枚岩ではなく、番外編だからこそ楽しめた（=あくまで外伝という位置づけで続編製作を希望）という意見と、ケンタたちをメインストーリーでも活躍させてほしい（=主役交代希望）という意見とが混在している点に留意が必要である。
ポケモン萌芽期からのファンがややポケモンと距離を置いていくさなかに発表されたとあって見逃した人も多く、前述の事象などから不幸な作品であるとの解釈もできるが、コアなファンの間で「隠れた名作」として賛辞を送られているという意味では幸せな作品であるとの評価もできる。
[編集] 主題歌
- OP『新たなる誓い（アコースティックVer）』 歌：田村直美
- ED『新たなる誓い』 歌：田村直美
