フェンダーミラー
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フェンダーミラーは、自動車部品の1つで、車内から死角となる車両の側面および側面後方を目で見て確認するためのバックミラーの一種。ボンネットの前方端に左右1対で装着されている。
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[編集] 歴史
[編集] 日本
法規制(道路運送車両法第44条(後写鏡等))により、ボンネット付きの車両にはフェンダーミラーと決められていた。例外的に、ボンネットのないキャブオーバー車だけはドアミラーも認められていた。日本における多くの市販車はフェンダーミラーで、特に乗用車はフェンダーミラーのみとなっていた。輸入車はもちろん、日本車としても海外のデザイナーがドアミラー前提でデザインした車はその販売以前に、フェンダーミラーに付け替え(換装)が必要となった。
1983年にいわゆる規制緩和で法規制が解かれ、乗用車のドアミラーが(当時の)運輸省から認められると、日本の自動車メーカーは自動車の輸出と日本国内との仕様別管理が不要となり、市場ではデザインの観点からも主流となる。現在ではドアミラーが主流となり、一般の乗用車においてフェンダーミラーは特別仕様のオプションで注文できる選択肢もほとんどなくなってしまった。
[編集] 役割
[編集] ドアミラーとの比較
トラックやバンなどのボンネットをもたないキャブオーバー型では、ドアミラーではなくとも距離的にはボンネット付きの車ほどの差は生じない。
しかし、ボンネットのある車では、安全性の確保の観点からフェンダーミラーはドアミラーよりも有効だという議論がある。法規制もその観点を重視してドアミラーを規制していた。
運転者の側方に位置するドアミラーに比べてフェンダーミラーはより前方に位置しており、運転中は前方を見ているドライバーにとって、目の移動や頭のひねり角度が少ない。その一方で、ミラーが離れるに従い視界に占める鏡像の大きさは相対的に小さくなるので、一般的にフェンダーミラーの方が鏡像は小さく見える。しかし、そこにものがあるかないかを判断するだけの役割としては鏡像の大きさよりも、見るための動作量の少なさに着目すると、ドアミラーと比較してフェンダーミラーが評価される。さらに、フェンダーミラーはより車両前方に位置するためフェンダー側面からドア側面にかけての視界も確保される。また、ドアミラーは至近距離のためミラー自身が生み出す死角はドアミラーのほうが大きい。加えて、自動車のボディ上の突起物という視点で比較した議論もなされることがある。
ほどんどの乗用車がドアミラーとなり、フェンダーミラーを実体験しているドライバーが、業務用ドライバーを除いてはほとんどいない現在では、フェンダーミラーのメリットも少数意見となり、さらにはフェンダーミラーとドアミラーとのメリット比較がなされること自体少なくなってしまっている。
[編集] 使用分野
現在、日本においては、タクシーや教習車、パトロールカー、公用車、社用車などによく使われている。上記理由以外に、運転手が助手席側を確認する行為が、タクシー用車両では、助手席乗員が運転手から見られているように感じること、トヨタ・センチュリーなど公用車社用車などでは、後方乗員から、運転手が助手席と会話している様に見られること、などの理由により、ドアミラーが選択肢として可能である現在でもフェンダーミラーが利用の主流となっている。
[編集] 類似装備
SUVやミニバンなど、車高が高めの車のドライバー席反対側のフェンダー部(右ハンドル車では左フェンダー)についている小さなミラーはサイドアンダーミラーという。以前、フェンダーミラーが運転者前方側面のフェンダー下視覚を確保していたのと同等の役割をさらに特化したもの。車高の高さから生じる死角が大きくなったために用いられている。
[編集] 各国の表現
米国英語ではドアミラー。英国英語ではウィングミラー(Wing mirror)。その機能からサイド・ビュー・ミラー(side-view mirror)ともいわれる。