バニリン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バニリン | |
---|---|
IUPAC名 | 4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド |
別名 | |
分子式 | C8H8O3 |
分子量 | 152.15 g/mol |
CAS登録番号 | [121-33-5] |
形状 | 白色あるいは淡黄色の固体 |
密度と相 | 1.056 g/cm3, |
相対蒸気密度 | {{{相対蒸気密度}}}(空気 = 1) |
融点 | 80~81 ℃ |
沸点 | 285 ℃ |
昇華点 | {{{昇華点}}} ℃ |
SMILES | O=CC1=CC(OC)=C(O)C=C1 |
出典 |
バニリン(Vanillin)は分子式C8H8O3で表される化合物で、バニラの香りの主要な成分となっている物質である。
目次 |
[編集] 存在
天然物中にはバニラ、安息香、ペルーバルサム、チョウジ(クローブ)の精油などに含有されている。 収穫されたばかりのバニラ豆中には、配糖体であるグルコバニリンの形で存在しており、キュアリングと呼ばれる工程を経ることで加水分解されてバニリンが遊離し、バニラ特有の香気が発現する。 バニリンの量が多いときにはバニラ豆の表面に白い結晶として析出する。 1858年にこの結晶物質の構造決定がなされ、バニリンの名が与えられた。
[編集] 合成
最初の合成は、1874年にヴィルヘルム・ハーマン、フェルディナント・ティーマン、カール・ライマーらによりコニフェリンを原料に行なわれた。 これによりバニリンの工業的な生産が可能となり、彼らによってそのための香料会社ハーマンアンドライマー社(現シムライズ社)がドイツのホルツミンデンに設立された。
現在ではより効率的な4つの合成法が開発されている。サフロールバニリン、オイゲノールバニリン、グアヤコールバニリンの3つの合成法の基礎的な部分の開発を行なったのもティーマンらである。
- サフロールバニリン
- サッサフラスの精油から得られるサフロールをナトリウムメトキシドで処理して二重結合を移動させると同時にアセタールを開環させ、オゾン酸化で二重結合を酸化開裂すると同時にアセタールを除去してプロトカテクアルデヒドとし、ジメチル硫酸でメチル化してバニリンとする。
- オイゲノールバニリン(クローブバニリン)
- チョウジの精油から得られるオイゲノールをアルカリで二重結合を移動させてイソオイゲノールとし、これをオゾンなどで二重結合を酸化開裂させてバニリンとする。
- リグニンバニリン(リグノバニリン):
- グアヤコールバニリン:
- 現在主流の合成法である。グアヤコールをホルミル化して合成する。ホルミル化の方法はライマー・ティーマン反応を用いる方法やグリオキシル酸を付加させた後、これを酸化分解する方法などが知られている。
[編集] 用途
香料として使用される。 食品に対してはアイスクリームをはじめとする乳製品やチョコレート、ココアなどに使用される。 タバコにも使用され、ピースのバニラフレーバーは特に著名である。 香水にも使用される。 バニリンを香水に使用したのは、1889年にゲランより発売されたJickyが最初とされている。 以降、現在までオリエンタル調の香水には欠かせない素材の1つとされている。
また有機化学の実験室ではTLCの発色試薬として、酸性エタノール溶液が使用されていることがある。
[編集] 類縁体
類縁体のエチルバニリン(3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド)もバニリンより強いバニラ様の香りを持つ化合物として知られており、香料として用いられている。
カテゴリ: 化学関連のスタブ項目 | アルデヒド | フェノール