ナショナル・ボード・オブ・レビュー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナショナル・ボード・オブ・レビュー(The National Board of Review、NBR)は、アメリカ合衆国の非営利団体。米国映画批評会議。また、この団体が授与する賞の名称。NBR賞(NBR Award)、米国映画批評会議賞。映画の普及促進に関する活動を行う各種団体としては、現存する世界最古の団体である。
目次 |
[編集] 概要
ナショナル・ボード・オブ・レビューは、映画教育プログラムの制作や、映画製作奨学金の給付など、映画の普及促進に関する活動を目的とする、民間人による非営利団体。また、例年、その年に公開されたアメリカ国内外の映画について、優秀な作品や優秀な俳優を顕彰する賞の授与も行う。
[編集] 歴史
[編集] 映画規制と自主的検閲
活動の拠点はニューヨークにある。映画が誕生した13年後の1909年に創立された。
団体結成のきっかけは、前年の1908年に、当時のニューヨーク市長が映画の上映を禁じたことによる。南北戦争時には将軍であった市長は、映画という新しいメディアが、市民のモラルを低下させると考えたのである。
この市長の動きに対して、表現の自由の制約に反対した劇場主や配給会社は、表現の自由を推し進める市民団体と共に、アメリカの「国民のための文化」としての映画の質を維持するため、国立映画調査委員会(National Board Committee)を結成した。
やがてこの委員会は、映画に対し政府から政治的な検閲を受けないようにするため、自主的な民間検閲団体として、新作映画の検閲に関して自律的に機能し始めた。1916年から1950年代までの間に公開された数千本の映画には、メインタイトルの下に「ナショナル・ボード・オブ・レビューを通過した」という一文が入っている。これは、NBRによる自主的な検閲を受けたことを示している。このNBRの検閲機能は、その後別の機関MPAA(米国内のレイティングを決定する団体)に移され、現在に至っている。
[編集] 映画賞の授与
検閲活動とは別に、NBRは1929年から、1年間に品質の高い英語圏ベスト10の映画とベスト1の外国語映画を選出し始めた。そのうち、ベスト1の米国映画のみの選出と授賞式が現在でも行われている。これが現在のNBR賞(NBR Award)あるいは単にナショナル・ボード・オブ・レビューと呼ばれる映画賞である。この賞が映画史上に残った理由は、名作として名高い『市民ケーン』(1941年公開)に対して、その年唯一と言っていい、年間最優秀作品賞を授与したためである(あとはニューヨーク映画批評家協会賞のみである)。
[編集] 機関誌の発行
1917年以降、名称を様々変えながらも、継続的に機関誌を発行している。現在は”Films in Review”誌となっており、映画製作や映画史と観客を取り持ち、あらゆる面で映画を育成させる役割を果たしている。投稿者の中には、アルフレッド・ヒッチコック、ハロルド・ロビンス、テネシー・ウィリアムズ、ウィリアム・サローヤン、パール・バックなどの著名人も含まれる。
[編集] 現在の活動
非営利団体であるため、アメリカ国内外、芸術・娯楽を問わず、良質な映画をまったく独立して支援しているNGO組織である。
また、年間300本以上の映画、ケーブル用映画、ドキュメンタリー、外国語映画を審査し、この中から候補作を挙げて、最終的に会員の投票により、毎年12月始めに優秀作品を決定する。会員は、ほとんどがニューヨーク近辺の映画関係者、大学教授、教育者、学生、映画史家など、どちらかというとシネ・フィル的な人たちが多い。
現在、会議のメンバーは12名、会員は全体で150名程度である。
この賞の注目度が高いのは、長い歴史を誇る賞としての権威と共に、実質的にアカデミー賞の前哨戦となっているからである。
[編集] 歴代受賞作・受賞者
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- The National Board of Review (オフィシャル・サイト、英語。簡単な歴史的紹介の動画あり)
アメリカ合衆国の文化賞 | |||
---|---|---|---|
著名な賞 | 映画 : アカデミー賞 | 音楽 : グラミー賞 | テレビ番組 : エミー賞 | 演劇 : トニー賞 | 報道 : ピューリッツァー賞 | ||
映画賞 | ゴールデングローブ賞 | ニューヨーク映画批評家協会賞 | MTVムービー・アワード インディペンデント・スピリット賞 | ナショナル・ボード・オブ・レビュー(アメリカ映画批評会議賞) アニー賞 | AFI賞 | ゴールデンラズベリー賞 |
||
音楽賞 | アメリカン・ミュージック・アワード | MTV ビデオ・ミュージック・アワード | ロックの殿堂入り授賞式 ビルボード・ミュージック・アワード | ラジオ・ミュージック・アワード | ソウルトレイン・ミュージック・アワード |
||
文学賞 | 全米図書賞 | ペン/フォークナー賞 | フィリップ・K・ディック記念賞 | MWA賞 | ||
その他の賞 | 演劇 : オビー賞 | ヘレン・ヘイズ賞 TV/PCゲーム : ゲーム・オブ・ザ・イヤー | ゲーム批評家賞 ファッション : コティ賞 |