デジタルコンパクトカセット
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DCC(ディーシーシー Digital Compact Cassette デジタルコンパクトカセット)は、フィリップスと松下電器産業が共同で開発したオーディオ規格である。
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[編集] 概要
アナログコンパクトカセット(Cカセット)と同サイズのテープに、PASC(Precision Adaptive Subband Coding)形式で圧縮されたデジタルデータを固定ヘッド方式で記録する。PASCにより、CDなどの音源を約1/4の容量に圧縮できる。サンプリング周波数は48kHz、44.1kHz、32kHzに対応していて、デジタル・コピーはSCMS方式を採用している。
DAT(R-DAT・回転ヘッド)規格制定時に、固定ヘッドのS-DAT(商品化されず)も規格が決定していたが、DCCはS-DATそのものではなく、ヘッドを簡略化し圧縮音声とした別の規格である。音質では同時期に登場したミニディスク(MD)より理論的に良いと言われた時期も存在したが、その後MDは各社の技術開発により飛躍的な音質向上を遂げた。DCCは早々にメーカー各社が開発・生産から撤退した不運も重なり、その後の音質向上は残念ながら無かった。圧縮音声技術が発展途上段階で規格されたこともあり、最近のデジタル機器と比較すれば音質的に満足することが難しいハードウェアである。
[編集] テープ
Cカセットとの互換性を重視して開発されており、DCC機器ではCカセットがそのまま再生可能である。DCC専用のメディアには設計段階からアナログコンパクトカセット用ハイポジション(TYPE-II)用テープでおなじみの酸化コバルトを用いた磁性体を使用する。ちなみにDAT用のメディアは磁性体のほとんどがオキサイド系非酸化鉄(アナログコンパクトカセット用のメタルポジション(TYPE-IV)用に相当)であった。
[編集] 終焉
DCCはライバルのMDとほぼ同時期に投入されたが、10年も経たないうちに終焉を迎えてしまった。
MDがディスク形式ならではの使い勝手をアピールしたのに対し、DCCは
- 高速なランダムアクセスが出来ないなどテープ形式の制約を引きずっていたこと(場合によっては、終端の曲まで一分程度のアクセス時間が掛かった)
- DCCデッキではDCC専用テープの録音・再生は可能であるが、コンパクトカセットは再生専用であり、録音できない仕組みになっていたこと
- DCC専用テープが一本千円前後で価格が下がらなかったこと
- 発売当初に据え置き機しか用意できなかったこと
などから、一般市場においてDATほど多く普及せず当然の如くMDに駆逐され、2000年までに全ての参入メーカーがハードウェア機器の生産を終えた。