デカール

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デカールは、模型の組み立てや塗装後に貼る「水転写シール」の俗称である。塗装での再現が難しい企業のロゴや規格が存在する書体で書かれた戦車や航空機などの注意書き等に使用される。一般にシールと称されているものとは使用手順及び素材が異なる。

[編集] 使用方法

水に浸すか浮かして、糊の付いている台紙と塗装面を分離し、埃や油分を取り除いた添付面に添付し、水分除去を行う事で定着できる。一般的に貼付けた直後にティッシュペーパーや綿棒を用い水分除去を行い、自然乾燥させる事で定着させる。最近はデカールを軟化させて曲面へのなじみを良くしたり、接着力を高めたりするための補助剤が市販されている。

ミリタリーモデル等で貼り付ける面がツヤ消し塗装されている場合、デカールの下に微細な気泡が残ってしまい、銀色に光ってしまう「シルバリング」と呼ばれる現象が生じる事がある。これを防ぐために、前述のデカール定着補助剤を用いて密着性を高めたり、あらかじめツヤ有りで塗装後デカールを貼った上からツヤ消しのクリアー塗料をオーバーコートする等の手段が執られる。

近年のデカールは品質が向上してフイルム層もかなり薄くなっているが、それでもエッジ部分の段差が気になる事がある。特に均一な表面を求められる自動車モデルなどの場合、上からクリアー塗料を厚めに乗せた後、サンドペーパーや研磨剤で塗面を研ぎ出して段差を無くしてしまう「研ぎ出し」と呼ばれる技法が用いられる。この際、デカール部分は相対的にかなり塗膜が薄くなるので細心の注意が必要である。

[編集] 模型メーカーによる製作及び商品化

模型メーカーがプラモデルに付属させる製品の場合、その多くは使用対象となるキットと平行製作される場合が多く、資料となる写真や図面からトレースした物をキットの形状に合わせたデフォルメを行い、印刷会社に印刷の発注が行われる。日本国内で印刷された物では、規格により含有量が規制される物質（二酸化チタン等）が存在するため、色の明るいものは濃い色の機体に貼付けた場合に下地の色が透ける事が多い。日本国外の企業で印刷された物では透ける事は少ないが、水につけたと同時に粉砕する物も一部には存在した。

キット自体に付属するデカールでは限りがあるため、サードパーティーからオプションとして多くの別売りデカールが発売されている。また航空機やレーシングカーなどではいわゆる「デカール替え」によって製作可能な機体・車体を更新したキットが新たに発売される事がある。

専業メーカーとしては、フィルムの品質とシルクスクリーン印刷の精度において他の追従を許さないと称されるイタリアのカルトグラフ社が有名であり、最近はタミヤなどの一流模型メーカーでさえカルトグラフ製を採用する事が多い。

[編集] 個人レベルでの製作

個人レベルでの製作の場合に、資料となる写真や図面からのトレースした物をキットの形状に合わせたデフォルメを行うまでのプロセスは、企業レベルと変わらない。しかし、制作者の熱意に壁として立ちはだかる問題として、

通常のインクジェットプリンターでの製作は、白色の印刷が出来ないため、多くの場合にインクジェットプリンター対応で、下地の色が透けない白のデカール用紙を使う必要が有り、複雑なデザインの物を必要とされる形に切り抜いた上での再現が難しい。
唯一の選択肢（白インクでの印刷が可能）と言えるマイクロドライプリンタの場合、プリンターその物や消耗品の入手ルートの問題、斜め方向の解像度が低いため、中間色によるベタを印刷する場合にドットの解像度が実質200dpi以下になるため、モアレが目立つと言った欠点が存在する。印刷業者が製造したデカールの様な編み目の目立たない中間色の再現を行う裏技的な方法が存在し、ワープロ用でインクリボン本体が共通の物をある種の加工を行い利用可能だが、色によっては業務用熱転写方式印刷機用のインクリボンを加工しなければ入手できない物も存在するため、万人が利用できる方法ではない。
プリントゴッコの場合に、重ねて印刷した場合の印刷精度及び調色の問題で狙い通りの色を制作する事が難しく、どのような色でも解像度が150dpi前後とインクジェットプリンターや熱転写方式プリンターに劣るため、小さくて複雑なデザインの再現が難しい。
デカール用紙へのシルクスクリーン印刷に対応した業者に発注した場合、印刷精度や色の問題はある程度のレベルまでは解決できるが、デカール一枚当たりの印刷単価が一色数千円からになるため、イベントで当日版権を取得して数十枚単位で販売と言った目的や個人での使用を前提とした場合、価格が非現実的な物となるほか、地域によっては発注側の要求に耐えられるシルクスクリーン印刷が出来る印刷業者が存在しないと言う個人の力ではどうにも出来ない問題も存在する。